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5話 待つ人達

「…………」


 ダンジョン都市『ノーゼル』にある領主館。

 その客室を私室代わりに寝泊まりしているアリス達が客室リビングに集まりお茶を飲んでいた。

 普段ならこの時間はLV上げのためダンジョンに潜ったりしているが、現在はシュートが居ないため中止していた。


 シュートが居なくても、アリス達だけでダンジョンに潜り魔物相手に無双は当然可能だ。

 しかし、実力ではなく心情として今はダンジョンに潜ってLV上げする気にならないのである。


「……ぱぱ、おそい」


 アリスの隣に座るレムがぽつりと呟きを漏らす。


 現在シュートは南下して来ている『オリーム王国軍+α』の偵察に単独で向かっている。

『ドラゴンの牙』がダンジョン内部で意味不明な怪物を復活させた時も、彼は情報収集のため単独で向かった。

 お陰で凶化暴走水精霊(ウンディーネ)の情報を正確に手に入れて、対策も万全に取ることが出来た。


 今回も万全に対策を立てるため、単独で偵察に向かったのだ。

 相手は凶化暴走水精霊(ウンディーネ)のような理不尽の塊ではなく、人の軍隊で、一部魔物化している程度だ。

 シュートなら問題なく切り抜けるとは思っているが……。


 アリスは小さく微笑み、隣に座るレムを優しく撫でる。


「……予定より遅いけど賢者シュート様なら大丈夫。もしかしたらレムにお土産を買うためどこか別の街に寄っているだけかも」

「あははは、ありえそうですね。シュート様はレム様を可愛がっておりますからね」


 テーブルを挟んで反対側に座るキリリが、アリスの言葉に賛同して声をあげる。

 現在は私的なお茶会のため従者であるキリリも同席を許されていた。


 2人はレムの手前、笑顔を絶やさずにいたが、内心では不安を募らせていた。


 当然、『スキル創造』持ちで、自分達より圧倒的にLVも高く、強い彼がそうそう遅れを取るとは考え辛いが、『一生を共にしたい』と願う相手が危険な場所に赴いているのだ。

 心配してしまうのが人情である。


「……部屋の空気を変えるためちょっと窓でも開けましょうか?」

「……お願いキリリ。今日は暖かいからきっと気持ちいいはず」


 キリリが雰囲気&部屋の空気を変えるため、提案する。

 アリスはすぐさまその案に同意した。

 キリリがソファーから立ち上がり、窓へと向かおうとすると、『コンコン』と扉がノックされる。


「姫様」

「……キリリ、お願い」


 窓を開けるより、来客を優先するようキリリに命じる。

 もしかしたらシュートが帰還するという先触れかもしれないからだ。

 キリリもその辺りを期待して、イソイソと扉へと向かう。


 彼女が応対していると、扉が開かれ中へと来客がうながされた。


「悪いな賢者殿ではなくて、邪魔するよ」

「……ミーリス姉様」


 部屋に顔を出したのはアリスの姉であるミーリスだった。

 彼女は片手に手紙を持ちひらひらさせながら、妹アリスの正面ソファーに腰を下ろす。

 キリリはすぐさまカップを手にお茶の準備をする。


 彼女がお茶の準備をしている横目で、ミーリスが手にした手紙を妹へと差し出す。


皇帝陛下(父上)から手紙だ。要約すると『アイスバーグ帝国は何があろうと賢者殿側につくことを表明する』と確約してくれたよ」

「……さすが皇帝陛下(パパ)。賢者様への大恩を忘れない良い判断」

「姫様ではありませんが、さすが皇帝陛下ですね。ここで帝国が少しでも引くような態度を見せたらシュート様との間に溝ができ、将来的に他国に嘴を入れさせる余地が出来てしまいますから」


 お茶を淹れ終えたキリリも安堵しながら、感想を漏らした。

 ミーリスは隣に座るよううながし、キリリは一礼してから同席する。


 ミーリスはお茶を口にしてから、頷いた。


「キリリの指摘通り、普段は『賢者様の恩に報い云々』と口にしておいて、少しでも形勢が悪くなったら弱腰になる。そんな奴は個人でも、国家でも信用されないのは必然だ。もし皇帝陛下(父上)が少しでもひよった態度を取ったら、あたいが刺し違えても殺して、腹黒姉に皇帝の座を引き継いでもらうところだったぞ」

「ミーリス様……お茶を飲みながら怖いこと言わないでくださいよ」


 腹黒姉とは――ミーリス、アリスの一番上の姉、長女だ。


 3人の中で最も政治能力に長け、将来的に婿を取りアイスバーグ帝国のトップに立つ逸材である。

 ミーリスも口では『腹黒姉』と言っているが、その政治手腕、才能は認めていた。

 彼女達が好き勝手できるのも、長女の存在があるからだ。


「これであたい達側に付け入れさせる隙は無い。ほぼ盤石と言っていいだろう。はぁ……まったく、勇者教の奴らが『聖戦発令』をちらつかさなければもっと楽に黙らせることが出来たのになぁ」

「……ミーリス姉様の発言に同意。もし『聖戦発令』がなければ帝国が睨むだけで各国を黙らせることが出来たのに。もっと賢者シュート様の負担を減らせたはず……本当に残念」


 あの知力(INT)ゼロのアリスですら、『聖戦発令』に対して警戒をしていた。


 それだけ勇者教がちらつかせる『聖戦発令』が脅威なのだ。


 レムが不思議そうにコテンと小首を傾げる。


「せいせんはつれい、まおう、きけん?」

「ああ、危険だ。レムちゃんはまだ子供だから分かり辛いだろうけど、魔物はともかく魔王認定――『魔王』だけはヤバイ。『魔王』は存在そのものがあたい達人類の敵だからな」


 ミーリスがお茶で喉を潤す。

 彼女は一息つくと、レムにも分かり易いように説明を再開する。


「魔物は確かにあたい達の敵で、害獣だ。けど魔物を糧にしている部分もある。例えばあたい達が今居る『ノーゼル』だってダンジョンがあって、その魔物を倒して素材にしているから繁栄できているんだ。魔物は脅威でもあるが、同時にあたい達の糧でもあるんだよ。良い方にとる言い方をするなら……共存共栄と言ったところだな」

「?」


『レムちゃんにはまだ難しいか。賢者殿ならもっと上手く例えて説明するんだけどな』とミーリスが微苦笑を漏らす。


 彼女は3度お茶を口にして飲み干し、告げる。


「しかし魔王は駄目だ。文献を精査する限り、『魔王』は人類を滅ぼすだけの存在でしかない。互いに共存することなんて出来ない。滅ぼすか、滅ぼされるしかない存在なんだ。なのに勇者教の奴ら、安易に『聖戦を発令するかも』とか口にしやがって……ッ」


 ミーリスが心底気分が悪そうに吐き捨てる。


 前世地球で例えるなら政府が公式に『もうすぐ地球に隕石が衝突します』と告知すると脅してくるようなモノだ。

 質が悪いにも程がある。


 レムの前でなければ教育によろしくない罵詈雑言を叫ぶ所だった。


 ミーリスの勘気を抑えるようにキリリがポットを手に取る。


「ミーリス様、お茶をもう一杯いかがですか」

「……頼む。アリス、そっちの茶菓子もとってくれ」

「……分かった。だから姉様は少し気持ちを落ち着かせるべき」

「分かっている。子供の前で冷静さを失うほど、馬鹿じゃないさ」


 お茶のお代わりをいれていると、再びノック音が部屋に響く。

 キリリがお茶を淹れ終わってから、席を立って扉へと向かう。


 相手は領主館の老執事で言付けを口にしただけで部屋にまでは足を踏み入れなかった。

 キリリは先程までのどこか影のような表情ではなく、明るい顔と声音で引き返してくる。


「先触れでもう少しでシュート様がお戻りになるとのことです!」


 この一言に部屋に居たアリス、レム、ミーリスも一転して明るい表情を作ったのだった。


スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

帝国もシュート側の味方に付くことが決定。

次話でシュートも帰還し、対応策を話し合います。

その対応策とは――。

明日も引き続きアップするので是非是非お楽しみに!


また『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!


本日も2話連続でアップする予定です。

詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。

これからも頑張って書きましすので、是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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>もし皇帝陛下が少しでもひよった態度を取ったら、あたいが刺し違えても殺して、腹黒姉に皇帝の座を引き継いでもらうところだったぞ ミーリスさん…やっぱりアリスのお姉さんだ…
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