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4話 戦争

 この世界でも指輪を贈ることは婚約、結婚を意味している。

 最近は色々な問題も解決、落ち着いた所で『折角贈るなら~』とオレは材料を買い求め製作に取り掛かっていた。


「うーん、若干、角度が悪いか?」


 とはいえぶっつけ本番で買い求めた宝石類や貴金属を使って婚約、結婚指輪を作るほどチャレンジャーではない。

 もちろん『スキル創造』の力で出来なくはないだろうが……。

 本番前に手持ちの銀、宝石などで、練習がてら作ってみて納得してから製作するべきだろう。


 実際、イメージしたラフ画デザイン、練習として作ったモノを見比べると甘い部分が多々見つかる。

 その都度、修正し、自分の中にあるイメージと実際のできを比較しながらデザインを固めていた。


 こうした練習のお陰で本番素材を使って『やっぱりイメージと違うな』なんて間抜けなことをせずに済む。

 ダンジョン探査より、休日を多く取ることでオレはアリス、キリリに贈る指輪デザインを煮詰めていたのだった。




 ☆ ☆ ☆




 無事にデザインを煮詰め、個人的にも納得できる物になり『そろそろ本番素材で作るか』と考え始めた夜。

 夕食も終えた後、アリスの客室リビングで私的なお茶会を開く。


 今夜は研究も、街の運営も一段落したミーリスが参加している。

 彼女は膝の上にレムを乗せて、嬉しそうに愛でつつ、ふと漏らす。


「そういえば最近、アリスとキリリの機嫌が妙にいいな」

「……別にそんなことはない」

「姫様の仰る通り、私達は至って普通だと思いますよぉ」


 ミーリスの隣にアリスが座りレムの世話を焼く。

 今夜はあくまで私的なお茶会のため、テーブルを挟んだ反対側ソファーにキリリが座り、オレの世話を甲斐甲斐しくしていた。

 2人ともミーリスの言葉を否定したが、声音はオレでも分かるほど上機嫌だった。


 原因はオレが現在製作している指輪デザイン&テストが終わり、本番作りに入るのを2人とも空気で察しているからだ。


 指輪製作完了=婚約&結婚である。


 アリスとキリリが喜んでくれるのは嬉しいし、めでたいことの筈なのだが……。


(なんだろう、この追いつめられるというか、色々狭まってくるような気持ちは……)


 前世、今生含めて結婚は初めてのことだ。

 だから少々ナーバスになっているだけである。

 きっとそうに違いない。


「シュート様、お茶のお代わりを淹れますね」

「……賢者シュート様、この果物が美味しい。食べて」

「あ、ありがとう2人とも」


 キリリは満面の笑顔でお茶を淹れ直し、アリスはレムの世話をしつつオレに気を回す。

 2人とも義務感や嫌々とやっている雰囲気はなく、オレの世話をするのが非常に嬉しそうだった。

 好意は嬉しいはずなのに、だんだん退路を断たれているのは気のせいだろうか?


(こんな良い子達をこれ以上、待たせることは出来ないよな。オレのもやもやも結婚すればきっと落ち着くはず……!)


 自分に言い聞かせつつ、お茶と果実を口にする。

 どちらも非常に口にあった。


 ミーリスはレムを膝に乗せつつ、ニヤニヤとオレ達の姿を眺めていた。


「これは賢者殿のことを、あたいもそろそろ『義弟殿』と呼んだ方がいいかもしれないな」

「……ミーリスお姉様、気が早い。賢者シュート様に失礼」

「いえいえ、ミーリス様の仰る通り、そろそろ呼び方を切り替えても良い頃合いかと。とはいえ私自身、姫様とシュート様の呼び方が変わっても、お側についていますが。長年姫様にお仕えする従者として離れることなど出来ませんから」

「あははははは……」


 アリスは姉の発言を否定しつつ、自身の左薬指を撫でながらオレをちらちら盗み見てくる。

 キリリはミーリスの発言を肯定しつつ、こちらもなぜか左薬指を撫でつつ『一生側に居る』というニュアンスの言葉を口にする。

 オレは彼女達を前に乾いた笑い声を漏らしつつ、


(本気で覚悟を決めないとな……)


 3人の言動を前に、オレは逃げられないことを本気で悟り覚悟を決める。


「? ぱぱ、なにかおもしろい?」


 唯一レムだがオレ達の会話の意図を理解できず首を傾げる。


「レムちゃんは可愛いな~」


 そんな仕草をするレムをミーリスが抱きしめ、撫でていた。

 一見すると非常に平和な光景である。

 平和な光景であるはずが――どうしてもオレは肉食獣に追いつめられていく草食動物の気分を感じてしまう。


 コンコン。


 リビングに笑い声を響かせていると、扉がノックされる。

 返事をして、キリリが立ち上がり扉を開くと老執事が立っていた。

 普段と変わらない姿なのに、彼から妙に不吉な雰囲気を感じ取る。

 オレだけではない。


「…………」

「…………」


 アリス、キリリも似たような空気を感じ取ったのか、先程まで天に昇るほど上機嫌だったにもかかわらず表情を硬くする。

 老執事は断りを入れてから部屋に入り、主であるミーリスの耳元で用件を告げる。


「!? 分かった。賢者殿達にはあたいから話すから下がってくれ」

「畏まりました」


 ミーリスの返事に老執事は一礼して音もなく部屋を出る。

 再びオレ達だけが部屋に残ったが、先程までの楽しげな空気とは打って変わって最前線に立つ兵士達のようにピリピリとした緊張感が漂っていた。

 全員の視線がミーリスへと向けられる。


 彼女は言いにくそうに言葉を吐き出す。


「本国からの情報で――賢者殿に対して勇者教、エルエフ王国、オリーム王国の3つが宣戦布告をしてきた。この3つは賢者殿に対して戦争をしかけるとのことだ」

『!?』


 想像の斜めを行く報告にオレ達は何も言えずただただ驚愕してしまう。




 オレは前世、今生で結婚より先に初めての戦争へと参戦することがこの時、決定したのだった。


スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

次からは6章の戦争編に突入します!

剣聖&大魔術師や勇者教など、アレな存在達にシュートがどう対応するのか?

その辺りを是非是非お楽しみに!


さて既にお伝えしましたが――先日短編で『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ』します!』という作品を書かせて頂きました。


お陰様でなんとか連載版の準備が整いそうです。

予定では明日、つまり今月の4月17日金曜日、お昼(12時)には連載版をアップ出来るかと思います!

その際は是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] オレ、この戦争が終わったら結婚するんだw
[一言] 戦争だ! クリークだ! PKMで薙ぎ払ってやりましょう(爆) あと、『俺、この戦争が終わったら、結婚するんだ…』って言ってほしい(笑)
[一言] 「これが、のちに『3時間戦争』と呼ばれる賢者様による一方的な蹂躙劇の始まりであった」とか(笑) 戦争は国民が相手じゃなくて軍隊(と主導部)が相手だから、さほど時間はかからないでしょう。
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