3話 指輪
『グガァァアァアァァァァァアァァアァァァァァァッ』
赤い鱗に4本足獣、背中には巨大な羽根を生やしたレッドドラゴンが威嚇するように雄叫びを上げる。
現在オレ、アリス、レム、キリリはダンジョン50階層の『レッドドラゴン』と対峙していた。
レッドドラゴンは大きく、15から20m近くあるだろうか。
大きなドーム型の50階層に入ると、ばっさばっさと羽ばたき空から地面へと降り立ってきた。
その姿はまるで前世のモンスターを狩るゲームに登場するドラゴンのようだった。
空から降り立つ姿を見られただけで、ダンジョン50階層まで来た甲斐があるというものだ。
『グガァァアァアァァァァァアァァアァァァァァァッ』
レッドドラゴンが再び雄叫びを上げると、四肢を踏みしめ長い喉を揺らし、何かを溜め込み吐き出す動作を取る。
オレはすぐさま意図を理解し、指示を飛ばす。
「皆、散らばれ! ブレスが来るぞ――って、アリス!?」
「ひ、姫様!?」
指示を出し、ウサギ耳モードのレムを抱きしめ、オレは横方向に駆け出した。
キリリも指示に従い、オレとは反対方向へとブレスを避けるため駆け出したが――アリスは1人だけ大剣を手にレッドドラゴンへと突撃する。
恐らくだがブレスを吐き出されるより先に間合いを潰し、妨害しようとしているのだろう。
レッドドラゴンも意図に気付き、溜めが十分でなくても速度重視でブレスを吐き出すため口を開く――が、
「……遅い!」
『グゴォオァォオォッ!?』
アリスは間に合わないと判断を下すと、すぐさま手にした大剣を投擲。
レッドドラゴンもまさか大剣を投げてくるとは予想外&ブレス動作に入っていたため、無防備で右目に攻撃を受けてしまう。
結果、右目が潰れ、ブレスも不発。
レッドドラゴンが痛みに声をあげている間に、アリスはさらに加速し拳を固めて大地を蹴り、飛び上がる。
『グガァアアァッ!?』
「……ドラゴンは予想以上に硬い」
怯んでいるレッドドラゴンの顎をアリスが下から殴りつける。
右目の痛みと顎を殴られ、レッドドラゴンが地面へと倒れてしまった。
レッドドラゴンを殴り倒す少女……あれでもアイスバーグ帝国三女で皇女なんだぜ……。
「もうアリスだけでいいんじゃないか?」
「おねえちゃん、すごい」
「姫様……本当、そういうところですよ……。どこの世界にドラゴンを殴り倒す姫がいるんですか!?」
オレは思わず遠くを見つめ、腕の中に収まっているレムはパチパチと小さな手で拍手する。
キリリは顔を両手で覆い嘆いていた。
当の本人であるアリスは大剣、『ゴーレム・ソード(大)』を拾い上げるとオレ達に真剣な表情で告げてくる。
「……みんな、まだ戦いは終わっていない。油断しないで」
言っていることは非常に正しいのだが、微妙に納得できない……。
☆ ☆ ☆
レッドドラゴン戦はアリスの活躍もあり、特に危ない場面もなく終わった。
オレ、アリス、キリリはLVが高すぎて今回の戦でも上がらなかった。
キリリはまだLV50台だが、60台になるとLVが上がり辛い実感がある。
唯一レムのLVが一つ上がったぐらいだろう。
ちなみにステータスはこんな感じだ。
名前:レム
年齢:0歳
種族:新種族?
状態:正常
LV:51
体力 :2700/2700
魔力 :1900/1900
筋力:1600
耐久:1100
敏捷:330
知力:230
器用:240
スキル:『空気中に漂う魔力吸収』『光魔法LV6』『火魔法LV6』『水魔法LV6』『風魔法LV6』『土魔法LV7』『闇魔法LV6』『身体強化LV6』『MP強化LV6』『頑強LV6』『魔力耐性LV6』『物理耐性LV6』『回復LV6』『超回復LV6』『MP回復速度LV6』『攻撃魔法強化LV6』『アイテムボックスLV5』『魔力ボックスLV4』etc――。
称号 :イレギュラー存在
以上だ。
レムがLV50を越えたことで『犬耳モード』の際に動かせるゴーレムが5体から倍の10体に増えたことが実験で判明した。
このまま成長し続けると、もっと増えていくのだろうか?
とりあえず無事、50階層のレッドドラゴンを倒したことで、『ノーゼル』のダンジョン最前線組へと躍り出る。
51階層以降を軽く覗くと、大吹雪の雪原だった。
40階層が火山で51階層から大吹雪の雪原とか……。
寒暖の差が激しいというレベルではない。
「……ミーリスさんから依頼された凶化暴走水精霊の調査も終わって、個人的にも気になっていたレッドドラゴンの姿も見られたし、今日のダンジョン探査は終わりにしようか」
「……賢者シュート様がそういうなら賛成」
「ぱぱ、いうこときく」
「姫様、レム様ももう少し自分で考えて意見を出さなくちゃ駄目ですよ。私も賛成ですが。装備も調えずにこの猛吹雪の中を進む勇気はありませんから」
皆の賛成を取り付けたので、転移でさっさと1階層へと移動する。
ダンジョンを出て、いつも通り冒険者ギルドへ。
さすがに倉庫でもレッドドラゴン丸ごとは難しいため、後日解体の約束を取り付ける。
大物を冒険者が倒した場合、時には住民や他冒険者に功績を示すため、街の外で解体をするらしい。
別に今更、そういう名誉なんていらないのだが……。
ダンジョン都市としての政治的問題、『うちのダンジョンはこんな凄い魔物を倒す冒険者がいるんですよ』と宣伝、他冒険者を鼓舞する意味もあるため積極的に反対するつもりもないが。
そういった面倒を冒険者ギルドに押しつけつつ、オレ達は領主館へと戻る。
最近は初期に比べてダンジョンから戻ってくる時間が早い。
むしろ、最近はダンジョンに潜らず休みの日が多かった。
『ドラゴンの牙』や『凶化暴走水精霊』問題、その封印跡地に問題が無いかの調査を優先していた。
もしまだ封印地に『凶化暴走水精霊』の生き残り、より凶悪な魔物が居たらオレ達でないと対処できない。
他の理由として――オレが最近、オリハルコンやミスリル、他稀少素材を買い込み『ある物』を作り出すため作業に勤しんでいるからだ。
最初、オレがダンジョンでのLV上げより『ある物』を作るため、休みを多くしたいと申し出た時、アリスは首を捻り疑問を口にした。
『……? 別に構わないけど、休みを多くしたいって賢者シュート様、もしかしてどこか体の具合が悪い?』
『いや、大丈夫だよ。ただ最近色々忙しかっただろ? だから休みを多くして皆の疲労を抜こうと思ってさ』
『……なら自分は大丈夫。賢者シュート様は遠慮する必要はない』
アリスとしては好意から『自分達の疲労など気にせず、ダンジョンに潜ろう』と言ってくれているのだろうが……。
素直に何を作るか口にしようか迷っていると、キリリが察してフォローしてくれる。
『姫様、シュート様の仰る通り、最近は色々忙しかったのでお休みを多くとりましょうね』
『……? キリリも疲れているの? でも顔色的にそこまで疲労しているとは――』
『いいから、休む。いいですね?』
『………………はい』
最後はキリリの迫力に押されて、アリスが返事をした。
ある意味、バランスが取れた主従関係なのだろう。
キリリがアリスを強引に納得させた所で、オレは1人『ある物』を作る時間を確保することが出来た。
その『ある物』とは……指輪である。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
次で5章が終わり、戦争編に突入します。
なので是非是非お楽しみに!
さて既にお伝えしましたが――先日短編で『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ』します!』という作品を書かせて頂きました。
お陰様でなんとか連載版の準備が整いそうです。
予定では明後日、つまり今月の4月17日金曜日、お昼(12時)には連載版をアップ出来るかと思います!
その際は是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




