2話 相談2
『ノーゼル』トップ、ミーリスから ダンジョン都市特有の問題について相談を受けた。
治安悪化に対しては、前世の知識にあった『交番』を提示する。
オレは次の問題『金を稼げない浮浪者、ダンジョン攻略中ケガを負い欠損働けなくなった者、孤児達が蔓延し不衛生化』についてアイデアを出す。
「ダンジョン初心者にノウハウを伝授する学校――だと大げさですが、教える場の講師として怪我を負った元冒険者や引退した方を雇用し、失敗した体験談などを元に再発防止を心がけるのはどうでしょうか?」
ダンジョンに潜る前に知っておいた方が良い知識やテクニック、小技などは経験者にしか分からない。
また失敗談を交えて授業をすれば、再発防止に非常に役立つと思う。
「孤児院、ストリートチルドレンの子供達に関しては文字、計算、技術を勉強させる場を作り、将来に備えさせれば良いかと。人数が多いため、どこかの建物を借りるのは難しいので青空教室になるでしょうが」
「悪くはない考えではあるな……」
最初の『交番』アイデアに比べて食いつきが悪い。
ミーリスは腕を組み考えを零す。
「悪くはないが……さすがに全部を救うのは無理か……いや、一部でも救えるのなら良いことなんだが」
「いくら自分でも全部を救うのは無理ですよ。ただなるべく多くを救うために次の『食料品、消耗品などの値上がり』の解決案として、いっそのこと街の外で畑を作れませんか?」
「うん? 街の外で畑を作る? いや、街の外は魔物が居るから危ないだろう」
オレの解決アイデアにミーリスは反射的に返答する。
彼女の考えがこの世界の一般的な人々の意見だ。
基本、街の外には凶暴な魔物がいるため危険で、高い壁がある街の中が安全だと考えられている。
だが輸入される食料品が足りず、値段が高いのなら現地で作るしか方法はない。
「確かに街の外には魔物が居て危険ですが、ここはダンジョン都市、冒険者、元冒険者が他街と違って多数在籍しているじゃないですか。元冒険者なら街の外で畑を作って、ある程度の魔物なら倒せなくても追い払うことはできませんか? そして周辺の魔物退治は現役の冒険者に見回りをさせて倒していけば問題ないんじゃないかと」
「ちょ、ちょっと待ってくれ賢者殿!」
ミーリスはこのアイデアを熟考するべく、時間を要求する。
オレ自身、焦らせるつもりはないため大人しく引き下がった。
テーブルに置かれたお茶を口にして、彼女の考えが纏まるのを待つ。
「賢者殿の指摘通り、怪我を負ってダンジョンに潜れなくなった冒険者は多い。だが、ダンジョンに潜れなくなっただけで魔物を追い払ったり、畑仕事をするには支障がないのが多いのも確かだ。現役冒険者に周辺の見回り仕事も作れる。外で畑を作り、ある程度食料を賄えるようになれば輸入頻度も下がり、結果的に価格を抑えることが出来る、か……」
さらに付け加えるなら、食料を輸送する量が減った分、消耗品を多く積み込めることが出来るようになる。
多く積み込むことが出来れば、その分、消耗品の価格を下げることが可能だ。
「街の外は危険だが、スラムも同等か、場合によってはそれ以上に危険な所もある。それにスラムで食い詰めている者達に新しい仕事を作ってやれるのが大きい。あたい的には可能性を感じる案だと思うよ。むしろ、どうしてあたい達はこんな単純な案を思い付かなかったのか」
「意外と人はこうした単純な案が出にくいものですから」
先入観から無意識に排除していたことをミーリスが恥じる。
彼女は先程とは違って、『交番』アイデアの時のように瞳に輝きを宿していた。
それだけこのアイデアに可能性を感じているようだ。
この案が上手くいけば、スラムで食い詰めている者達を多数救うことが出来る。
孤児院にも入れないストリートチルドレン達にも、空いたスラム建物を改築して新しい住居の提供。
ダンジョンの荷物持ち、窃盗以外にも収入源が得られる仕事を作ってやることが出来る。
外の畑の雑草や小石拾い、身体に傷を負った者達の補助、収穫の手伝いなど。
大きくは稼げないが日銭ぐらいは得られる仕事を作ってやることが出来る。
ただ問題もあるため釘を刺しておく。
「とはいえ街の外が危険なのは変わりありません。人的被害が出ないように現役冒険者達の周辺見回り、警備を厚くした方がいいかと。それに今度は街中ではなく、外壁周辺にスラム街などを作られないように注意してくださいね」
「内の次は外にスラム街を作られましたなんて笑い話にもならないか……。確かにそこは注意が必要だね」
問題解決アイデアが湯水のように溢れ出てきたせいで、少々浮かれていたミーリスが、釘を刺されて冷静さを取り戻す。
彼女は指摘を忘れないうちに脳内メモに言葉を刻んでいた。
「最後の『犯罪組織の温床』に関してはスラムを解体して、元冒険者やストリートチルドレン達に仕事を与えて、『警備兵士見回り所』を作って正常化すれば必然的に減少していくと思いますよ」
元々治安が悪いせいで『犯罪組織の温床』になっていたのだ。
治安が回復すれば必然、この問題は解決されるはずである。
他にも『犯罪組織の温床』改善方法として、前世記憶にある『某アジア方式』――『マフィアに懸賞金を懸ける』も思い出したが、さすがに提案できなかった。
この方式のお陰で某アジアのマフィアは激減したらしいが、この世界にそんな考えを持ち込んだら、どんな問題が起きるか分からない。
なのでさすがに提案は出来なかった。
「とはいえあくまで自分が提案したのは机上の空論。実際におこなった場合、多数の問題が出る可能性があります。なのでこの考えを盲信せず対処していただければと」
「大丈夫、分かっている。あたい達もそこまで馬鹿じゃないさ。でも連日額を付き合わせて会議をしてもまったく話が進まなかったのに賢者殿は全てに解決案、道筋を提示してくれた。そのことは本当にありがたいよ!」
『もっと賢者殿に早く相談していればよかったよ』とミーリスが上機嫌に声を漏らす。
また今回の『ダンジョン都市の問題』について、『スキル創造』の力で協力することも考えたが――。
『スキル創造』の力を使えばある程度問題は解決するだろう。しかし、特殊事例となり『ノーゼル』以外に応用することが出来なくなる。
故に他ダンジョン都市でも適用できるよう手を出さず見守る方が、より多くの人を救う。
ミーリスもそれをよく理解しているため最後まで『スキル創造で協力して欲しい』とは一言も口にしなかった。
とはいえ、オレが前世の知識を含めたアイデアのお陰で『ダンジョン都市の問題』に一定の解決の目処が立つ。
最初、相談を持ちかけられた時は酷い二日酔いのような顔をしていたミーリスが、話し合いを終えた後、非常に晴れ晴れしい表情を浮かべていたのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
一つ前の『交番』のような『前世知識で解決』させるため最初のアイデアでは『ストリートチルドレン達にお店を持たせる』案を考えました。
『お帰りさないお兄ちゃん(お姉ちゃん)』といいながら、可愛さアピールのようなお店を。
しかしそれでは一部しか救えないと考えて、今回の形になりました。
軍オタでも出そうとして流れたアイデアだったんですが……。
出すタイミングが本当に難しいですわ。
さて既にお伝えしましたが――短編で『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ』します!』という作品を書かせて頂きました。
お陰様でなんとか連載版の準備が整いそうです。
予定では今月の4月17日金曜日、お昼(12時)には連載版をアップ出来るかと思います!
その際は是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




