17話 魔物災害2
「土城壁!」
オレはスキル『土魔法LV8』で城壁のように巨大で分厚い壁を作り出す。
「キリリ、レムはここで待機。その子を守ってくれ。もし危なくなったら合図をくれ、直ぐに駆けつけるから」
「やー」
「分かりました。その時はお願いします」
レム、キリリは素直に返事をするが、壁の内側に残される保護した少女は、『あっというまにお城のような壁ができるなんて……。これが魔法なんだ……』と1人驚愕し、呆然としていた。
一般的な魔術師にこんな巨大な土城壁を作り出すことは不可能だ。
あくまでスキルでブーストされた『土魔法LV8』のオレだから出来る芸当である。
そんな理由を彼女に説明する義理もない。
保護対象の少女を2人に預け、オレとアリスが城壁をステータスのごり押しで駆け上がる。
外側に降り立つと、大量の土煙が目視できる距離まで近付いていた。
予想通り、のんびりしている暇はなさそうだ。
スキル『気配察知LV8』などから、魔物の群は1000は越えている。
アリスも気付いているらしく、渋い表情を作った。
「……ダンジョン初日に、オーガを賢者シュート様の力で休憩を挟みつつ1000体は倒したけど。今回は休憩無しで、さらに数が増えるからきつそう」
「だな。けど魔物災害を見逃す訳にはいかない。最初から全力でいこう!」
「……頑張る!」
アリスは気合を入れ直すと、『ゴーレム・ソード(大)』を取り出し構える。
オレも宣言通り、全力で挑むため『ゴーレム・ソード』ではなく、最初から準亜神剣『クリムゾン・ブルート(深紅の血)』を手にした。
準亜神剣『クリムゾン・ブルート』の権能によってステータスが1.5倍ブーストされる。
ステータスは以下のようになる。
名前:シュート
年齢:14歳
種族:ヒューマン
状態:正常
LV:61
体力 :30000/30000
魔力 :15000/15000
筋力:6000
耐久:6300
敏捷:2250
知力:1275
器用:1650
スキル:『スキル創造』『剣聖』『時間操作LV7』『デコイ』『誘き寄せ』『転移LV4』『騎士LV8』『光魔法LV8』『気配遮断LV8』『隠密LV8』『気配察知LV8』『健脚LV8』『逃走LV8』『韋駄天LV8』『直感LV8』『剣術LV8』『格闘LV8』『火魔法LV8』『水魔法LV8』『風魔法LV8』『土魔法LV8』『闇魔法LV8』『身体強化LV8』『HP強化LV8』『MP強化LV8』『頑強LV8』『魔力耐性LV8』『物理耐性LV8』『精神耐性LV8』『鑑定LV9』『ステータス擬装』『スキル経験値増大』『LV経験値増大』『裁縫LV8』『皮加工LV8』『鍛冶LV8』『生産技能LV8』『抽出LV8』『索敵LV8』『槍術LV8』『斧術LV8』『回復LV8』『超回復LV8』『MP回復速度LV8』『攻撃魔法強化LV8』『アイテムボックスLV8』『魔力ボックスLV8』etc――。
称号:廃嫡貴族のスキルマスター(準亜神)
相変わらず準亜神剣『クリムゾン・ブルート』の1.5倍ブーストは強力である。
ステータスのデータだけなら剣聖アビス5、6人ぐらいはあるんじゃないか?
(でもあの剣聖5、6人って考えると途端に弱く感じるのはオレだけか?)
そんな馬鹿なことを考えている第一陣の魔物災害がジャングルから溢れ出る。
『グギャァァァァァア!』
『ゴガァア!』
『ギャアギャガガャア!』
複数混じった雄叫び。
アースホース、コカトリス、レッサーサイクロプス、ヴァイパーエイプ、レッサーブラックドラゴン、ビックスパイダー、ウォーウルフ、etc――多種多様な魔物達が目の色を文字通り変えて襲いかかってくる。
まるで魔物の津波だ。
「アリス! まずオレが魔物災害の出鼻を挫くから突撃はまだ待ってくれ」
「……了解!」
アリスの返事を聞くと、オレは『クリムゾン・ブルート』を横に構える。
『クリムゾン・ブルート』には『注いだ魔力を発動ワードと共に解き放つ力を持つ』という切り札的能力がある。
普通に使うと真っ直ぐレーザーのようなエネルギーが放出し、線上にある敵を飲み込む。
しかし、今回は敵が複数で、視界の端から端まで広がっている。
単純に真っ直ぐ放出しては一部だけしか倒せず、足を止めることは不可能だ。
(一直線に放出するんじゃ駄目だ。全体に広がるように……薄い刃をイメージして飛ばすんだ)
ぶっつけ本番になるがオレの器用は『1650』もあるのだ。
これぐらい出来て当然である。
目を閉じてイメージを固めた後、瞼を開き叫ぶ。
「全てを深紅に染めろ! クリムゾン・ブルート!」
以前の真っ直ぐレーザーではない。
イメージ通り、赤い薄い刃のような光が視界全体へと広がる。
『グギャァアァアァッッ!!』
ジャングルから溢れ出た魔物達は、赤い刃によって上下に両断されていく。
ジャングルの木々も一緒に切断され、轟音をたてて地面に転がるが……ダンジョン内部の出来事だし、避けられない被害のため諦めるしかない。
むしろ今は『邪魔な木々が切断されて視界が広がった』と考えるべきだろう。
「……賢者シュート様、まだ生きている魔物に止めを刺してまわる!」
「任せた! オレはもう一度、『クリムゾン・ブルート』に魔力を充填しておくよ!」
アリスは断りを入れた後、赤い刃の一撃を受けても生きている魔物達に止めを刺しに向かう。
オレの攻撃に耐えたのではなく、巨大な体躯のお陰で足が切断されただけだったり、逆に四足獣で体格が低すぎて背中を浅く切った程度などの魔物が多い。
そんな生き残った魔物から反撃を受ける前に、アリスが止めを刺しに向かったのだ。
「グオオォォォオオォォォォオオォッ!」
「……オマエはもう自分の敵じゃない」
既に1対1で勝利しているビックベアーの首を危なげなく飛ばす。
ビックベアーも足を切断されてまともに動けないため、アリスも楽に倒せた。
次に巨大なニワトリで尻尾が蛇のコカトリスの首を刎ね、一つ目巨人のレッサーサイクロプスも危なげなく首を切り落とす。
白い髪、鎧姿のアリスが、大剣を振るうたび彼女より圧倒的に大きい怪物が次々に死んでいく。
その姿はまるで怪物に死を与える美しい天使のようだった。
アリスの姿に目を奪われていると、第二陣の魔物災害が姿を現す。
再びオレは『クリムゾン・ブルート』を構えた。
「アリス! 上空へ!」
「……了解!」
首を刎ねた巨体の魔物のを足場に彼女が指示通り上空へと飛ぶ。
アリスが安全圏に到達したのを確認して、オレも2発目を放つ!
「全てを深紅に染めろ! クリムゾン・ブルート!」
再度、赤い一線が空間を切断する勢いで広がり、第二陣の魔物災害を上下に両断する。
視界の色を赤く染めるようにあちらこちらから血の噴水が溢れ出た。
鼻も馬鹿になりそうなほど血生臭くなる。
「これで完全に魔物災害の出鼻はくじけたな。一応、駄目押しもしておくか」
スキル『土魔法LV8』で投げ槍型のゴーレムを作製。
スキル『デコイ』、『誘き寄せ』を覚えさせて、力任せに四方八方へと投擲する。
「……賢者シュート様、今のは?」
「暴走した魔物達の密度を少しでも下げるためゴーレムに『デコイ』、『誘き寄せ』を覚えさせたんだ。これで少しはこちらに突撃してくる魔物の数を減らせればいいんだが……」
あくまで一時的な気休め程度だ。
『魔物誘引剤』で暴走している魔物にどこまで効果があるかは怪しいところである。
「とりあえず今のうちに水を飲んだり、軽食、傷や魔力を回復してくれ。まだまだ魔物災害は続くようだからな」
「……賢者シュート様もちゃんと休憩してね?」
「もちろん! 念のため減った魔力を『準神話級魔力回復ポーション』で回復させておくよ」
心配そうに眉根を寄せるアリスを安心させるため、オレも休憩&回復の時間を取る。
『魔力ボックスLV8』で回復するのもいいが、『ちゃんと休憩してますよ』とアリスに分かり易くアピールするためポーションを選ぶ。
『準神話級魔力回復ポーション』をひと舐めするだけで、『9000』に減っていた魔力が『魔力:15000/15000』と完全に回復する。
本当に『準神話級魔力回復ポーション』は便利だ。
完全に魔力を回復させ、改めて『クリムゾン・ブルート』を手にする。
「それじゃ次の群が来る前に、生き残った魔物を間引いておくか」
「……賢者シュート様と一緒ならすぐに終わる」
アリスはやる気を示すように鼻息荒く、『ゴーレム・ソード(大)』を構え直す。
こうしてオレとアリスは魔物災害が落ち着くまで対処し続けたのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
久しぶりの準亜神剣『クリムゾン・ブルート』ブースト!
現在のシュートを強化すると、本当に強くなりますね。
さて、次は壁の内側レム&キリリ側の視点の魔物災害を書かせて頂ければと思います!
是非是非お楽しみに!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタンがあります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




