1話 新しい武器製造計画
皆様にご好評だったので、今回は2つ(1、2話)を12時、18時連続でアップします!(本日1話目)
オレことシュートは、世界最多(少し前までは)スキル10個を持つ、勇者教の聖人である剣聖アビス・シローネに決闘を挑まれた。
決闘自体は特に問題なく楽勝で勝利することが出来た。
それから数日後――。
オレ達はいつものように離れの裏へと集まっていた。
「……LVを上げる?」
アイスバーグ帝国三女のアリスが、オレの提案に可愛らしく首を傾げる。
「剣聖との決闘も終わって、アリスとキリリをスキルオーブで強化したけど、今後また剣聖の時と似たような、もしくはそれ以上の問題が発生するかもしれない。そのために少しでも強くなっておこうと思うんだ」
「剣聖以上の問題って……魔王復活とかですか? も、もしかして『スキル創造』所有者の力が働いて、何かが近々復活するなどの神託とかを受けたんですか?」
「受けてない、受けてないから安心してくれ。あくまで念のためだよ。それにLVを上げて実力を付けておくぶんには悪いことじゃないだろ」
アリスと違って、物事をややマイナス方向に考えるキリリが、青い顔で心配してくる。
オレは微苦笑を漏らしつつ、片手を左右に振った。
……実際の所、キリリの発言は『当たらずとも遠からず』だが。
アイスバーグ帝国情報部曰く――剣聖との決闘に出席できなかった元自国のエルエフ王国が、最近内部で活発的な動きを見せているらしい。
(可能性はほぼ無いが……オレを取り戻すためエルエフ王国が戦端を開き、戦争になるかもしれない。もしそうなった場合、少しでも犠牲者を減らすため実力を付けておきたいからな)
世界の3割を支配するアイスバーグ帝国と伝説中の伝説である『スキル創造』所有者相手に戦争を仕掛ける可能性は殆ど無いが……警戒しておいて損はないだろう。
この提案にアリスが同意の声をあげた。
「……賢者シュート様の仰る通り。強くなっておいて損はない。自分はLV上げに賛成」
「姫様はそうでしょうね。まぁ私もそろそろLV50には上げたかったので、ありがたい話ですが」
「それじゃ2人とも賛成ってことで。LV上げの場所は後ほど皆で考えるとして……今日はそのための武器を新しく作ろうと思う」
「……? 賢者シュート様は立派な剣を持っている。準亜神剣『クリムゾン・ブルート』では駄目なの?」
アリスが意味不明と言いたげに疑問をぶつけてくる。
「確かに『クリムゾン・ブルート』は強いけど、あんまり人目に触れさせたくないんだよ」
「……?」
アリスが『意味が分からない』と首を傾げる。
オレは微苦笑しながら説明した。
「『クリムゾン・ブルート』は強力な剣だが、製造にオレの血が使われている。スキル『ステータス擬装』でただの『魔剣』と誤魔化してはいるが、特殊な方法で見破られ、製造方法が世間にばれる可能性はゼロじゃない。もし世間に知られたら面倒なことになる。だから、あまり人目に出したくないんだよ」
対剣聖との決闘用に武器を作ろうと考えた。
しかし稀少な材料を入手する暇が無いため頭を悩ませていると思い付く。『この世で一番稀少な存在は自分ではないか』と。
結果、自分の血を混ぜて剣を創ったら――魔剣の一つ上、準亜神剣が出来上がってしまった。
改めて自分のステータスを確認すると、『準亜神』という隠し称号を発見してしまう。
自分が珍しい存在だと自覚はしていたが、いつのまにか『準亜神』などと人を辞めているとまでは想像していなかった……。
「……材料が賢者シュート様の血だと世間に知られることの何が問題?」
次の疑問はオレではなく、キリリが答える。
「姫様、問題ありまくりですよ。いいですか……シュート様に『スキルオーブ』を強引に創らせることは非常に難しいです。シュート様ご本人に意思決定権があるのですから。しかし、『クリムゾン・ブルート』の場合、シュート様の『血』と高レベルの鍛冶スキル所有者がいれば、多少劣化していても似たようなものを創り出すことが可能なんです。『望んだスキルを得られないぐらいなら~』と暴走して、シュート様の『血』を得るため殺害し、死体を運び出そうとする輩が出るかもしれない。だから、そうなる可能性は少しでも下げるため、新しい武器を創り出そうと仰っているんですよ」
金の卵を産むガチョウが存在するが、自分は金の卵を得られない。
だが代わりにガチョウの血肉で銀の卵を大量に作り出すことが出来る。
『金の卵が得られないのなら、銀の卵を得ればいい』と考え、襲いかかってくる輩はキリリの指摘通り絶対に出てくる。
しかも大量にだ。
そんな輩の相手などいちいちしていられない。
この説明にアリスはさらに首を傾げる。
「……つまり賢者シュート様の命を狙う輩が増えるのを防ぐために、必要な措置ということ? でも、賢者シュート様を狙う輩が出たら、全員倒せばいい」
アリスの脳筋的発言にキリリが頭を抱えた後、主君の柔らかそうな頬を両手で掴みぐにぐに動かす。
「無駄な争いを回避して少しでも犠牲者を減らしたいというシュート様のお優しいお心を、姫様が無視する発言をした上、護衛対象者の安全性を軽視してどうするんですか!」
「……ヒィリリ、ふぃたい」
「痛くしているんだから当然です! 姫様はもう少し考えて発言する癖を付けてください!」
オレは主従コンビのやりとりを眺めつつ、キリリに対して感心する。
(主が間違った発言をしたら、しっかり諫言する従者は貴重だな。そういう意味でアリスは得難い人材を得ているよな)
アリス本人が気付いているかどうかは怪しいが……2人とも良いコンビだと改めて実感した。
一通りアリスの頬をぐにぐにしたキリリが、オレへと向き直る。
「姫様へのお説教はとりあえず置いておいて。新しい武器を作るのは賛成です。ですが『クリムゾン・ブルート』に代わる武器などそうそう簡単に作れますかね?」
「大丈夫、それについてオレに良い考えがあるんだ」
「し、シュート様の良い考え……」
オレの自信に満ちた発言に、キリリが時折アリスへ向けるような不審の瞳を向けてきた。
もしかしてキリリの中でオレへの信頼度はアリスと同程度なのか?
オレは微妙な不安を抱えつつも、彼女達に新武器開発のアイデアを聞かせた。
そのアイデアとは……。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
新しい章、3章に入りました!
引き続きスキルマスターを読んでいた頂けると幸いです。




