2話 ゴーレムにスキルを
皆様にご好評だったので、今回は2つ(1、2話)を12時、18時連続でアップします!(本日2話目)
「新しい武器を開発する良い考えとは――剣にスキルを覚えさせるんだよ!」
オレは準亜神剣『クリムゾン・ブルート』に代わる新しい武器の開発方法をアリス、キリリに元気よく告げる。
「例えば剣にスキル『頑強』を取得させればより硬く。『回復』や『超回復』を取得させれば例え刃が欠けても自動的に回復するかもしれない。他にも『火魔法』や『風魔法』などを覚えさせたら剣自体が攻撃魔法を使うことが出来るようになる。さらに『身体強化』を取らせて使用者が剣を握れば、2重で体を強化することが出来る可能性もある。これは凄いことだぞ!」
例えば自身がスキルオーブで『身体強化』を2回自身に使用した場合、2重で『身体強化』がかかる訳ではない。
実験した際、2つ目のスキルオーブ『身体強化』は取り込まれず、弾かれる感触を覚えた。
どうやら同じスキルを二重で取得することは出来ないようだ。
しかし『剣にスキルを覚えさせる』ことが出来て、この問題を解決したら――武器、防具、アクセサリーなどに『身体強化』を覚えさせ何重にも体を強化することが出来るかもしれないのだ。
あくまで可能性の話だが……。
「……さすが賢者シュート様、凄い発想!」
「姫様の仰る通り凄い発想ですが……むしろよくそんな抜け道というか、ルールの穴を突くのが上手いというか、誰も思い付かないような発想を思い付きましたね。どんな思考回路をしているんですか」
アリスが感心してパチパチと手を鳴らす。
キリリは呆れたような溜息を漏らしつつ、驚きの視線を向けてくる。
キリリの指摘通り、こちらの異世界住人達にはなかなか思い付かない発想なのだろう。こんなアイデアを思いついたのも前世日本時代にゲーム、アニメ、マンガなど多数の作品を見て、読んできたからだ。
そんな彼女がさらに指摘してきた。
「発想は非凡ですが、問題はどうやって剣にスキルを覚えさせるかですね。私が知っている限りスキル研究の一環として、一時期小動物や虫にスキルを覚えさせようという研究があったはずです。ですが、結局予算の問題と小動物や虫にスキルオーブを使用させる方法が思い付かず失敗したと聞いた記憶がありますが……。シュート様のことですから、既にお考えがあるんですよね?」
「随分と察しがいいな」
「まだ数ヶ月ですが、シュート様の規格外な出来事には散々驚かされていますから……」
キリリが胃の辺りに手を当てて、遠い目をする。
別に意図して彼女の胃を痛めるようなマネをした訳ではない。
だから無実である。
気を取り直してオレは話を進める。
「ごほん……剣、無機物にスキルオーブを使用させる方法としてゴーレム・クリエートを応用できないかと考えているんだ」
「……ゴーレム・クリエート。確か『土魔法LV5』で覚える魔法?」
アリスの疑問にオレは黙って頷く。
彼女の言葉通り『ゴーレム・クリエート』とは、『土魔法LV5』で覚える魔法のことだ。
文字通りゴーレムを作り出すことが出来る。
作り出されたゴーレムは術者の魔力によって動く。
オートだと簡単な動作しか出来ないが、術者が直接動かす場合はそれなりに複雑な動きが出来る。
この『ゴーレム・クリエート』を応用して無機物のゴーレムにスキルを覚えさせようというのだ。
もし成功すれば、ゴーレムを人型ではなく剣の形にすればいい。
「それじゃ早速実験を開始しようか。ゴーレム・クリエート!」
オレは『土魔法LV8』のため問題なくゴーレムを作り出すことが出来る。
裏庭の土を利用して、魔力で硬くなった一般的な背丈約3m、人型のゴーレムが生み出された。
オレはアイテムボックスから『身体強化LV1』のスキルオーブを取り出し、ゴーレムの手のひらへと乗せる。
目を閉じ、ゴーレムにスキルオーブを使うよう指示すると、
「……!? スキルオーブが消えた!」
「わ、わわわ……ほ、本当にゴーレムが『身体強化LV1』を覚えていますよ!」
キリリは『鑑定LV6』持ちのため、ゴーレムがスキルを覚えたか、どうか確認することが出来る。
オレは目を開き感想を告げた。
「意外と簡単に覚えたな……もう少し苦労すると思ったんだが……」
「楽な分はいいじゃないですか。それより『身体強化』が二重でかかっている感じはしますか?」
「ちょっと待ってくれ……」
オレは約3mはあるゴーレムを鈍器と考えつつ、手を触れる。
『鑑定LV9』で確認するがステータスの数値に変化が無い。
「うーん……どうやら2重で強化されるってことはないようだな」
「……残念。もし複数で強化されたら非常に有効だったのに」
「姫様の残念がる気持ちも分かりますが、しょうがないですよ。それに2重でかからなかったとしても、ゴーレムにスキルを覚えさせることが出来る事実を含めて、スキル研究に置いて非常に重要な実験結果には変わり有りません。スキル研究史に名前が残るレベルの重大発見ですから。スキル研究機関にこの結果を論文にして持ち込めば狂喜乱舞されて、特別名誉教授待遇で迎え入れられますけど、シュート様纏めます? もし纏めるならお手伝いしますよ」
キリリが珍しく瞳を輝かせ、興奮気味に台詞を告げる。
オレはそんな彼女に肩をすくめた。
「いや、止めておくよ。ただでさえスキル研究機関には毎日『スキル創造者に会わせろ』と連絡が来ているんだから。こんな発表したら、さらに会わせろ要求が過熱しちゃうだろ」
「あははは、間違いなく過熱しますね」
ちなみにスキル研究機関は、各自国家が資金を提供し運営される特殊な研究機関である。
文字通りスキルを人工的に開発するため日夜研究がおこなわれている。この異世界でトップの研究者達が集まるエリート集団だ。
話を戻す。
「うーん、やっぱり2重強化なんて美味しい話は無かったか……。仕方ない切り替えて他のスキルを覚えさせて実際に機能するかの確認でもするか」
「……賢者シュート様、手伝う」
「私もお手伝いしますね」
「ありがとう、2人とも。それじゃスキルオーブを渡すから、記録を付けていってくれ」
アリスに各種スキルオーブを手渡し、指示に従いゴーレムに渡してもらう。
キリリには記録帳を手渡し、ゴーレムがどんなスキルを覚えたのか、ちゃんとスキルは機能しているのか、おかしな動きをしていないかのメモを取ってもらう。
オレはアリスから渡されるスキルオーブをゴーレムに覚えさせ、実際に使用してみる。
『光魔法』、『火魔法』、『水魔法』、『風魔法』、『土魔法』、『闇魔法』、『回復』、『超回復』、『騎士』、『剣術』、『槍術』、『斧術』、『格闘』、『アイテムボックス』など次々覚えさせていく。
記録を付けているキリリが総金額にドン引きする。
「最初はただのゴーレムだったのに総額白金貨何枚になるんでしょうね……」
「キリリ、気にしたら負けだぞ」
オレはフォローしつつ実験をおこなう。
お陰で分かったことがいくつかあった。
一つ、オレ自身の魔力を消費して火魔法などが使用できる。
一つ、マニュアルから、オートに切り替えても魔法は使えたが、ゴーレム内部の魔力が著しく消費された。2発目を発動したら、ゴーレムが停止する。
一つ、ゴーレムがスキル『剣術』などをしっかりと使いこなすことができる。
一つ、アイテムボックスを問題なく使用することが出来た。
「剣術、格闘なんかの技術系スキル、アイテムボックスが使用できたのは予想通りだが、魔法系は要改善有りだな……」
意外な問題にオレは難しい顔でゴーレムを眺める。
その問題とは――。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
明日もまた2話アップする予定なので是非チェックして頂ければと思います。




