許さんのじゃ!
流石に洞窟に入るとストーキング行為がバレてしまうと、地団駄を踏むどらいアドちゃん。しかしどらいアドちゃんも街の外に出るのは初めてであり、洞窟の近くにある草花や少し遠くにある森に、自分の仲間がいると思うと楽しくて仕方ない。
「おぉ、お主は、花の精霊なのじゃな?」「ほほぉ〜。森にはこんな樹木の精霊がおるのか!」「今度、家の精霊樹に遊びに来るのじゃ」等々、精霊が見えない人にとって女騎士のウドちゃんは、頭の中がお花畑の人に見えるだろう。
そこに本日、伝統ある魔法使いオシリス家の子息であるホルスが、初級冒険者講座の卒業試験のため、試しの洞窟に来ているという情報を掴んだ、名も無き盗賊団がホルスを誘拐しようと集まっていた。
「おい、あの女騎士って、酒場で有名なイカレタ奴だろ?」
「あぁ…。冒険者ギルドに毎日通っているが、一度もクエストを受けずに、ただ座っているだけのイカレタ奴だ」
「だが…実力は中級冒険者以上と言う噂だが?」
「しかし…えらいべっぴんだよな…」
「ガキのついでだ。あの女も掻っ攫っちまおうぜっ!」
ウドちゃんが座って花の精霊に話しかけていると、盗賊たちが…その花を踏み潰した。
「へへへへっ…。おい、女。痛い目に…」
ウドちゃんは花を踏み潰した男を立ち上がるや否や強烈な右ストレートでぶっ飛ばした。
「お前っ! 花を踏み潰すなのじゃっ!」
唖然とする盗賊団。
「あぁぁぁぁっ!! また踏み潰した! 許さんのじゃ!!」と言って、自分がぶっ飛ばした男が踏み潰した花を助けるため、地面に倒れている男を片手で持ち上げたのだ。
それなりの装備の男を片手で軽々と持ち上がる女騎士に恐怖する盗賊たち。そんな怯える盗賊団を無視して、ウドちゃんは持ち上げた男を草花のない地面に何度も叩きつけていた。男の手足は明後日の方を向き、首も背中を向いたままになっていた。
「おい、お前ら! どういうつもりじゃ? 花に怨みでもあるのか?」
「こ、こいつ…完全にイカレテやがる…。おい、もう殺っちまえっ!!」
盗賊団の男たちは剣を抜き、ウドちゃんを囲むと、一斉に斬りかかった。だがウドちゃんの黒い鎧は当然のこと、鎧が無い肌が露出した部分にも、剣が食い込むことはなかった。実際のところ、鎧も肌も精霊樹の樹皮であり、どらいアドちゃんが人間の肌と鎧に見せるため、質感と色を再現していただけなのである。
「お前ら、悪者なのじゃな!?」
ウドちゃんは黒いロングソードを抜くと、次々と盗賊たちの首を刎ねていった。
「ひっ! ば、化物っ!! た、助けてくれぇっ!!」
慌てふためき転びながらも、ウドちゃんから逃げようと必死になる盗賊の最後の生き残り。ウドちゃんはわざと逃していたのだ。そう盗賊たちを一網打尽にするために…。盗賊の足首には細い蔓が巻きついていたのだ。
大切な仲間の花の精霊をペチャンコにされた、どらいアドちゃんは、とっても怒っていた。ベスパを暖かく見守れなくなってしまうが、こんな残忍な奴等を放置することも、どらいアドちゃんにはできないのであった。
草花を守る黒き死神という通り名が付くまで、そんなに時間はかからなかったのだ。




