精霊道
ここはベスパの世界と平行に存在する精霊たちのパラレルワールドである。そこにウドちゃんとアルデルはいた。ウドちゃんは、ベスパを背負い無言で歩く。
「ここから二日ほど西に行けば、精霊女王様の住まう宮殿への転移門がある」
両腕を失った傭兵アルデルが、ウドちゃんの前を歩く。この世界の景色は、人間の世界とほぼ同じ。ただし人間が自然に手を加えた箇所は異なっているのだ。こちらの世界は自然の姿のまま存在する。
ほぼ丸一日歩き続けた二人のゴーレムは、各パーツから悲鳴にも似た異音が発生していた。二人のゴーレムは完全な状態ではないのだ。
「ウドちゃん、今日はここまであだ。ゴーレムにも休憩が必要だぞ」
「だが、ベスパが…死んでしまうのじゃ…」
「しかし、オレたちが動けなくなったら、ダーリンは完全に終わりだぞ!?」
ボロボロ泣き崩れるウドちゃんのゴーレムが岩陰に座る。ウドちゃんは、まだ暖かいベスパの体を抱きしめていた。
「しかし…死後かなりの時間が経っているのに、なぜベスパの体は暖かいのじゃ? まるで生きているようじゃ…」
「竜の闘気がダーリンの肉体に混じっているからな。だから回復魔法も効果がないし、レベルアップ時のステータスも通常の値の方ではなく、隠しチート側に振っていただろ? ステータスすら更新できない状態だったんだぞ? でもマジでダーリンは天才だよ。あのギリギリの戦いの中で、そんな裏技思いつくんだから…。しかし今は、その竜の闘気のおかげで、ダーリンは死ぬ一秒前で踏ん張ってんだ…」
「うぅっ…。ただ元気でいて欲しかったのじゃ…。竜などと戦うことなど必要なかったのじゃ…」
二日目は、日が昇る前から歩き始めた。昼が過ぎて、太陽が傾きかけた頃…。歩く二人の耳に何かが落ちた音が聞こえたのだ。
「うん?」
「ダ、ダーリン!!」
ベスパを背負っているウドちゃんにはわからなかったが、ベスパの右足の膝から下が、腐ったようにボロっと落ちてしまったのだ。
「不味いぞ、竜の闘気が…ダーリンの肉体を破壊し始めちまった。おい、ウドちゃん、精霊樹の葉っぱで、ダーリンを包むんだ。体液が一滴も漏れないように包むんだ」
解けた体の成分が服に沁み込まないように、全裸にしてから、世界樹の葉っぱに包んだ。
「べ、ベスパは…ドロドロの液体になるのか? そんなの嫌じゃ…」
葉っぱに包まれたベスパを運ぶのに手間取ってしまい、転移門までたどり着かなかった。
「ジャボジャボっと、音がするのじゃ…。ベスパは…ジャボジャボに…わぁぁぁぁぁぁぁぁん…」
二日目の野営の時、ウドちゃんは、ベスパ包みを振って中身を確かめていた。そして中身が液体になってしまっていることを確認すると、大声で泣き出す。
「だから…いちいち確かめるなよ。明日になれば、精霊女王様が…ダーリンをきっと…助けてくれる…よな」
そして三日目…。転移門に辿り着いた二人は絶望した。転移門の門番にベスパを通すことを許可されなかったのだ。
「ま、待って。精霊女王様から伝言があるらしいのだ。しばらく、ここで待て」




