少年の夢
大男の拳が少年の顔面にヒットした。店内は静まり返っていた。酔っ払い達の誰もが少年の顔が陥没するか首の骨が折れ、少年が死ぬと思っていたからだ。しかし少年は倒れなかった。倒れないどころか、驚くことに意識があり、しゃべったのだ。
「次は俺の番だな」
その異様な光景に酔っ払い達は酔が覚め、大男の顔が真っ青になる。店内の誰もが少年の挙動から目が離せなかった。少年も大男を真似て全身のバネを使い踏み込む。そして全体重を乗せた一撃が大男の腹に迫る。
「それまでだ」
上級冒険者、パラディンのエッジが少年の腕を掴んだ。そしてエッジは戦慄した。
(こんな重たい攻撃をっ!? 流石…ジェフの息子といったところか…)
エッジが喧嘩の終了を告げると、また酔っぱらい達は自分の席に戻り、宴を開始した。
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国の法律で居酒屋の営業時間は深夜0時までと決まっていた。誰も居なくなった店内で、一人清掃をするベスパ。椅子をテーブルの上にあげ、床をモップで水拭きしたいた。
「やぁ、少年っ!」
精霊樹の太い幹から、木の精霊である、どらいアドちゃんが生え出てきた。今のどらいアドちゃんが作れるのは、上半身部分だけである。
「相変わらず、木のくせに、綺麗なおっぱいしてるな。小さいけど」
「いやいや、普通はさ。もっと恥じらいを持って、”お、おっぱい見えてますぅ〜”とか言うべきじゃないの? それに、小さいとは、何じゃっ!!」
「だって、毎日モロ出しじゃないか。それに小さい物は小さいのだ」
「くっ。誰のおかげで、今日の喧嘩勝てたと思っているのじゃ? 毎日、毎日、泣きながら、掃除していたガキのくせに、エロガキのくせにっ!!」
「うっ…。わ、わかったよ。ありがとう。でも、エロガキにしたのは、アドちゃんのせいだぞ?」
「悪気があって全裸じゃないからな。服が作れないのじゃ。まぁ、良い。ほら、今日の種だ、食っとけ」
ベスパは種を受け取ると、とても香ばしい匂いを堪能すると、パクッと口に入れ、ボリボリ噛んだ。
「アドちゃんさ。いつになったら樹木から出てこれるの?」
「う〜ん、当分先じゃ。じゃが安心しろ。良い方法があるのじゃ。それはLvを上げないと手に入らないスキルなのじゃが、Lvを上げるためには、沢山種を作らなければならないのじゃ。それにお前にも種をあげたいから、一石二鳥じゃ」
「う〜ん。どのぐらい先? 早く冒険に行きたいよ」
「行きたいと言っても、この国で冒険者になれるのは、15歳からじゃ。お前はまだ14歳じゃろ? もうしばらく辛抱するのじゃ」
ベスパは死んだ両親のように立派な冒険者になることが夢であったが、自身の才能の無さに不安を抱いていたのだ。そこに現れた木の精霊アドちゃん。彼女が手放しかけていた夢を応援してくれていたのだ。




