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覚悟

冒険者ギルドも居酒屋も開店前、ウドちゃんは入れないので、公園で草花と遊んでくると言って別れた。


ベスパは一人浮かない顔をしていた。DTが卒業できなかったからじゃない。今後の…冒険者として、生活するためには、居酒屋を退職しなければならないのだ。小さい頃からずっと親切にしてくれた居酒屋の店主アルバに、何と言って切り出したら良いのだろうと悩んでいたのだ。


考えがまとまらないまま、店のドアを開くと、アルバが出迎えてくれた。


「おうっ! ベスパ? 元気ないな?? 治療、上手くいかなかったのか??」


「ううん。大丈夫だった」


「うん? それじゃ、どうしたんだ?」小さな頃からベスパをずっと見てきたアルバは、ベスパが何を悩んでいたのか、ピンときてしまった。でも、俺からは言わない。しっかりとベスパの口から言わせよう。俺はベスパが口を開くのをただ黙って待つ。


「あの…。俺、冒険者になるんだ。だから…仕事を辞めさせてください」


ベスパは住み込みと仕事の解約を申し出る。するとアルバは、冒険者を初めて間もなくは、それ程稼げるわけでもなく、住み込みは続けても良いと申し出た。初心者の制限としては、クリアしたクエストの難易度、数に関わらず、一年間は中級冒険者にランクを上げられないという条件がある。それは初心者にありがちなランクを上げるため無理をして事故に遭うことを防ぐ目的だ。


ベスパは甘えることに躊躇してしまう。それは冒険を邪魔されたくないということや、そんな甘い気持ちで冒険者になったわけじゃないとか、いろんな葛藤がある。


「まぁ、正直、お前の代わりも簡単に見つからないだろう。だからクエストで疲れていなければ、店の締めを手伝って欲しい」


ベスパはアルバの押しに負けて、アルバの提案をすべて受け入れた。


「それとなぁ、ギルマスのデットだが、領主からの使者に連れられて、領主都市に行っちまったぞ? 一ヶ月やそこら帰ってこないんじゃないか?」


アルバと話していると、冒険者ギルドの受付嬢アレーラさんが出社してきた。ベスパはデットさんの帰りを尋ねたら、やはり…しばらく帰ってこないそうだ。どうやら昨日発生した地震の調査のため、各冒険者ギルド支部から調査要員召集と報告を目的として、領主都市へ呼ばれたらしい。


「あの…その場合、卒業結果というか、冒険者の活動は、どうなるのでしょうか?」


「それは…申し訳ないですが、ギルドマスターからの許可がないと…」


やはりっ! 心配していたことが的中してしまった。


「わ、わかりました…」


そんなやり取りを、どらいアドちゃんは精霊樹からチラ見していた。


(ふむふむ。これは…ステータスを上げるチャンスなのじゃ。むふふふっ。例のあの値をガッチリと上げてしまうとするのじゃっ!!)


ウドちゃんを動かしていると、<神樹の種>が作れない。だが冒険に出ないのならば、種を作りたい放題であり、しかも! ずっと種を作っていたため、スキルのレベルも上がり、なんと3つまで種を作ることが出来るようになっていたのだ。


がっくりと肩を落としたベスパは、アルバの元に戻る。


「そうだなぁ、冒険に出られないのなら、ちょっと買い出し行ってきてくれねぇか?」


地震で壊れてしまったランプや食器の補充を頼まれたベスパは、なんとも出鼻を挫かれた気分だったが、他にすることもないため商業地区へ出かけていくのであった。


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