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前奏曲
かの日に立ち寄り、かの日に旅立った魂が一つ。刻まれる運命は全てあの方の紡いだ通りに時を重ね、事実へと結実した。
それはまるで長い年月をかけて醸造される蜂蜜酒のように。
深い味わいと時折弾ける歴史の転換期を、この身は幾年も経た記憶で知っている。
これから起こる景色も、長い歴史から見ればその一つ。けれど意味合いだけは異なって、あの人が願い彼が手を伸ばすその先が目の前に迫る。
あぁ愛し児よ。その身に降りかかりし災難は魂を汚し歪めてしまった。
忌み児の魂はかの地にて抱かれ、再びこの世へ舞い戻るまでに。世界はまた僅かに色を変えて進むだろう。
けれどもしかし、約束に庇護された命は再び芽吹く。小さき者の手を借りて、この世に再び意味を得る。
それまでの僅かな間。道標を無くしたその物語に、新たな力が花開く事を信じて。
この地へとかの者を誘うために、僅かながらこの手を差し伸べよう。
誓約と、母親と、夢路を以て。斯くあるべしとその道行きの力になろう。
全てはあの人の────世界のために。




