後奏曲
全てを見渡すこの瞳は、遥か彼方の未来までを鮮明に映し出す。
これは未来に起こる事にして、これより過去に顕現するその歴史の一端。
振るわれる黒刃の一閃が、空を裂いてかの魂を撫で斬る。
歪み捩れた波長。人の身では到達し得ない階段に手を掛けたその栄光。
かつて幾度となく夢見たその存在を、根源にして源泉にして祖なる頂点の権能を以てここに招聘し奉る。
行使するは最高位の術式。
時代と空間を越えて届く時空間移送の大規模干渉。
彼が紡ぐ歴史に至る為に、これは不可欠にして最大の禁忌。
12にして5の理を持つその大法を、全ては全ての為にと抱いて一つの結果を手繰り寄せる。
そうしていつの間にか抱いたその魂。
虹色に輝く形なき形に、傷ついた部分を見つけて僅かに力を注ぎ込んだ。
すると次の瞬間、みるみるうちに元の形と、元の色と、元の匂いを伴って目の前に再構成されていく。
出来上がったのはたった一人の命の形。
全てをありのままに紡いだ誰でもなきかの存在。
遠くにいつも見たその姿を今一度目の前に顕現せしめ、その存在に敬意すら抱いて告げる。
「ようこそ、理想郷へ」
駆け抜けた風は辺りの木々を揺らして音を響かせる。
赤に黄色に緑に青に。色とりどりな葉をつける樹木が話し合いようにさざめく景色の中で────
彼は彼としてそこに立つ。




