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フェアリー・クインテット  作者: 芝森 蛍
月草を誘う小夜曲(セレネイド)
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50/138

前奏曲

 いつからかそれは避けられぬ運命に変わっていた。

 二人の間に蟠る暗黙の了解になっていた。

 いつかは訪れる別れの時。出会った時から避け得ぬと覚悟した深い思い。

 重ねた記憶は鮮烈な色と──音と──匂いに彩られて、景色を記憶と共に刻み込む。

 どれほどの思いがそこに込められているだろうか。

 どれほどの願いがそこに秘められているだろうか。

 きっと当人達でさえ全てを理解するには遠いほど、沢山の時間が紡がれたのだろう。

 今となっては全てよき思い出だ。


「ねぇ────」

「なぁに…………?」


 音は震えて空気を揺らし、彼女の笑顔を辛くさせる。


「楽しかった?」

「もちろん」


 問い掛けは自分の胸にも響く。


「嬉しかった?」

「もちろん」


 彼女の言葉が、ただ意味だけを持って音になる。


「あたしで、よかった……?」

「……えぇ、もちろんっ」


 笑顔に笑い返せば、頬を温かい涙が伝った。

 彼女が満足してくれるなら、それがあたしにとっての最上だ。それがあたしにとっての楽しさだ。嬉しさだ。

 小さな体で、大きく抱えきれないそれを、抱きしめる。


「ありがとうね……」

「うん、ありがとうっ」


 彼女に向けて──自分に向けて。

 何より彼女に出会えた運命に向けて──心より感謝する。


「満足でいっぱいの、人生だったわ」


 そうして浮かべた笑顔に、あたしは小さく「うん」と頷いた。

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