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フェアリー・クインテット  作者: 芝森 蛍
提燈が夢見る夜想曲(ノクターン)
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第三章

 修学旅行が中止となった。

 言葉にすれば簡単で、その意味合いは言葉以上に辺りに影響を齎す。

 ここフィーレスト学院では秋のこの時期に国内、及び国外への旅行を行ってそれで学を修める。

 前年度までは幾度か旅行先が変更になったりはしたらしいが、修学旅行自体が中止になる事は無かった。

 それがどうして中止と言う英断を学院が取ったのか。

 今回の一番大きな理由は妖精変調(フィーリエーション)だろう。

 妖精変調は世界規模の変革だ。その影響は主に野良妖精だが、いつ妖精従き(フィニアン)と契約妖精に影響が出るかも分からない。ブランデンブルク城内でも恐らく妖精変調に関わる問題が起きている状況だ。

 そんな不安定に歪んだ世界で足を伸ばそうというのは、些か配慮に欠ける。きっと生徒の親からの言葉もあったのだろう。未だ代替案については検討中のようで追って連絡があるとの事。

 今回のこの騒動で被害を被ったのはヴォルフとテオだった。

 フィーレスト学院では修学旅行はハーフェン級の秋に行われる。一応の措置として在学最後の年までに修学旅行にいけていない生徒……つまりトーア級以下の階級で卒業を迎える生徒についてはその年のハーフェンの修学旅行に同行する形で運営はされている。

 ニーナは昨年度に行っているために任意だったそうだ。小耳に挟んだ話では、進級試験以降ニーナとエルゼが幾度か言葉をぶつけ合っていたそうだ。これまで歪んでいた関係が元に戻ろうとして起きた小さな衝突。クラウスから見れば他愛ない親と子の意思疎通だ。そんな中に修学旅行の話があって、どうやらそこについてはエルゼの頼みで不参加の方で話は進んでいたようだった。

 エルゼとしては恋人と思い出を作りたいという我が儘だったのだろう。

 が、学校行事である以上無償でというわけにはいかない。喧々諤々とやり合ったそうだが、許可は下りなかったようだ。

 もしかすると学院長はこうなる事が分かっていて彼女を外したのだろうかと少し疑問に思ったが、どうでもいい事。もしそうであるならばただの家族としてのすれ違いであり、ある意味での愛情だ。別段気取って話すようなことでもあるまい。

 話は今回参加予定だった二人の方だ。テオはこの秋からとは言え立派なハーフェン級生徒。座学の授業も特に問題なく順調そうだというのは、彼との雑談の中に紛れていた話だ。

 だから彼も、そして彼も一生徒として学を修める旅行に参加する方面で話は進めていたはずで。そこに今回のような問題が起きればやはり少し慌てる事になる。もちろん慌てているのは学院側もだろうが……。

 クラウスの見立てでは別に修学旅行に行ったところで大事にはならないだろう。そうでなくとも実力のあるハーフェンの生徒が大多数に、学院の中でも実力者のファクト女史も引率役として着いて行く。野良の妖精が数匹押しかけてきた程度では生徒の方に被害は出ないはずだ。

 けれどそれは確証ではない。万が一と言う可能性もあるし、今回も例年通りトーアから数人修学旅行に同行する生徒もいる。

 それに妖精変調によって本来の姿を現した妖精は巨人のようなものだけではない。

 確認されているものではケット・シーやブラウニーといった殆ど無害な妖精から、ゴブリンのような加虐性を持つもの。そしてデュラハンと言ったとても危険度の高い妖精を見たという報告もあるほどだ。最後の方の真偽は未だ調査中だが、真実だとしたら討伐隊などが編成されてもおかしくは無い。

 そんな危惧が重なって、覆しようの無い理由を前に異議が出ることも無く修学旅行は中止となったのだ。

 きっと何の変哲も無い日常ならば、悪態や愚痴を吐きつつそれでも学院生活を過ごして時間は流れていくのだろう。

 けれどそこに意図された意思が絡めば話は変わって来るのが世の常。

 事の始まりは修学旅行の中止が言い渡されたその放課後だった。

 クラウス達は学院での影響はないと判断はしたものの、カイから追って連絡があるまでは国からの任務はこなさなければならない。そのためこの頃少なくなってきていた委員会の活動がまた忙しさを取り戻したように息を吹き返していた。

 とは言っても、クラウス達に出来るのは生徒会と連携して学院の様子を観察し、問題が起きれば対処をするだけ。それ以外の時は形だけ生徒会室に集まって、それぞれの仕事をまったりとこなしていた。

 そんな放課後の生徒会室に扉を叩く音が響く。訪客とは珍しい。委員会への意見は書類で通す決まりになっているので直接と言う事は生徒会の方なのだろう。

 丁度休憩を取っていたクラウス達は顔を見合わせて視線を交わすとテオに促す。


「どうぞ」

「失礼します」


 会長席に座るテオも段々と様になってきたとどうでもいい事を考えていると女性徒が一人入って来る。その声に、視界に捉えた姿と顔に少しだけ驚く。

 緋色の短い一つ括りに飴色の瞳。クラウスの級友にして噂好きの女性徒。


「どうしたの、カペラさん?」


 イーリス・カペラ。国軍特殊工作部隊に所属するダミアン・カペラを父親に持つ少女だ。

 クラウス個人としては幾つかある情報源のひとつと言う認識だが、そんな彼女が一体何用だろうか?

 思って尋ねれば彼女は視線を一度こちらへ向けた後テオへと顔を向ける。

 この頃何故か燻っている風当たりの強さの影響で色々な人から見られているクラウスだが、今の視線はそれとは少し違う。値踏みするというか確かめるというか、そう言った類の疑問の瞳だ。

 彼女のことだからクラウスの周りに関する変化も耳に入っているのだろうが、彼女が干渉してくるような話ではないはずだ。

 だからこそ、その視線の意味を裏返して確証を得る。

 やはりこの件の裏には誰かの存在がある。

 そんな事を考えているとイーリスが告げる。


「あたしがこうして言うべきではないのかもしれませんが、少し気になった事があったので皆さんに聞いてもらいたくて」


 彼女は言葉を選ぶように紡ぐと一度伏せた顔を上げる。


「修学旅行の中止の話が出てから、学院の雰囲気が変化したような気がします」

「……変化しない方がおかしいんじゃないか?」

「そうなんですけど、そうでないというか…………」


 言って彼女は再びこちらを伺って来る。視線に少しだけ考えれば彼女の言いたいことが理解できた。

 確かに彼女の立場で言うべき言葉では無いだろうし、言葉を選ぶ理由も分かる。ならばここはクラウスが後を引き継ごう。


「……カペラさんが予想してたよりおかしな雰囲気になってる気がするって事かな?」

「はい。うまく言えないですけど何だか緊張してるというか……」


 クラウスの言葉にどこか安心したように答えたイーリス。飴色の瞳が訴える言葉の裏を受け取って話を広げる。


「ヴォルフ先輩はどう思いますか?」


 こういう時は当事者に聞くのが一番だ。彼ならこの問いに客観的な答えが返せる。ヴォルフはクラウスに次いで視界が広く平等な心の持ち主だ。

 一つ考えるように間を開けて彼は平坦な声で答える。 


「……確かにそのきらいは存在するだろう。期待があった分不満も大きいはずだ」

「互いに作用して今後事が大きくなる可能性はありますか?」

「…………今のままなら問題は無い、はずだ。不満と言っても個人の感慨と愚痴程度。どうにかなる問題ならば既に何かが起きている」


 質問を重ねれば彼は慎重に言葉を続けた。

 ヴォルフの答えに懸念を増やしながらテオに言葉を向ける。


「と言うことみたいですよ、会長。何か対策でも打つ?」

「……その問題ってのはつまり学院に対しての談判って事だろ?」

「そうだね。もし本当にそうなったとしたら僕たちはどちらにつくべきかと言う事になるけど」


 テオの疑問に答えつつ可能性の未来を提示する。

 仮にテオの言うように生徒が集まって何らかの交渉を持ちかけたとすれば、そこには必ず生徒会が巻き込まれる。

 生徒会役員は生徒によって選出された生徒たちの代表だ。だから掲げられる意見には生徒会の後押しが必要になる。

 その動きが見られれば教員も生徒会に何かしらの話を付けに来るだろう。さてここで問題になるのだ。

 生徒会役員は生徒の代表であり、生徒の味方だ。けれどそれは行事において生徒を先導する役目であったり、ある程度の問題を生徒の間のみで解決したりと言った、一般の生徒より少しだけ力のある集まりだ。

 けれど役員もこの学院の生徒。そういう括りで見れば役員も一般生徒も大差は無い。

 それどころか生徒たちの矢面に立たされる役員たちには教員から事態を治めろと言われる可能性も出て来る。

 生徒は役員に交渉の片棒を担ぐように持ちかけ、教員はその行いを静めろと言い渡す…………。

 生徒の味方でいるか、素直に教員の言葉に従うか。二者択一を迫られる事になるのだ。

 そうならないためには幾つかの方法がある。

 その方法をテオが取るのか取らないのか。取るとすればどの方法がいいのか。

 クラウスの頭の中には何も起きないという可能性も含めて既に九通りの道筋が見えていた。


「起きなければそれに越した事はないんだが…………クラウス、事前策って打てるのか?」

「効果があるかは分からないけど見越して動き始める事は出来るよ。事前策に限れば今のところ四通りの想像はできてる」

 

 言ってクラウスは続ける。


「一つ目は予め生徒の味方として動く方針。二つ目は同様に教員の指示に従う方針。三つ目は生徒たちの顔を立てつつ鎮める方針。最後は教員たちの立場を尊重して治める方針」

「問題を大きくしないって言う方針は?」

「それこそ一切干渉しないか、別の興味で上書きするかかな。それも含めると六通り。その他後手に回ってからとか全部含めれば、今考えてるだけで十三通り」


 確率論を抜きにどこまでも冷静に選択肢だけを言葉にすれば、イーリスは呆気にとられた様にクラウスを見つめて、マルクスやエミはただただ感心したように口を挟めずにいた。

 そんな視線に気付いてこの場を仕切ってしまったと失敗を悟りつつどうにかテオに話を戻す。


「一応それくらいは準備できてるよ。後はテオに……生徒会長殿に判断を任せる」


 丸投げと信頼は紙一重だ。

 クラウス視点では丸投げだがテオ視点にはどう映るだろうか。そんな事を考えているとテオが少し慌てたように告げる。


「……とりあえず話してくれてありがとう。どうするかについてはこの後詳しく話し合ってみるから」

「えっと、はい。あの、出すぎた真似をしてすみませんでした……」

「いや、君のお陰でこうして本当の後手に回らず済んでるから。話してくれてありがとな」


 浮かべたのは男の癖に綺麗な笑顔。その節操の無い無意識を振り撒いたからニーナの時に苦労したのだと内心呆れる。

 テオの言葉に小さく頷いたイーリスはそれから静かに生徒会室を後にした。

 話の熱が冷めないうちにと先程の話題に戻ろうと視界を回したところで、景色の中に差した影を見つける。

 見ればニーナの視線がテオに突き刺さっていた。

 今やニーナはテオの彼女だ。妖精変調の話題には隠れていたが、その事に関しても学院では少しだけ耳にすることもあるほど彼らの関係は良好そうだ。だからこそ、追い求めた側のニーナからすればテオの今みたいな天然は目に付くのだろう。

 少しだけこのあとの二人の事が気になりつつ、そんな一幕に胸の緊張を解くと、やがて幼馴染は咳払いを一つ挟んで告げる。

 どうでもいいがニーナの視線には気付いていないようだった。恋人を持ってもその辺りの事は変化無しか。まぁ、テオらしいと言えばそれまでだ。


「で、今の話だが……最初は様子を見たいと思う。その上で、何かあればそのとき考える。…………じゃあ駄目?」

「相談はいいけど決定権はテオにあるんだよ。それに悩んで決めた事でしょ。僕が意見したところでそう簡単に引かれてはこっちが困るんだけど」

「……悪い。まだ自覚が無くてな。変われるように精進するよ」

「期待してるよ。僕からの異論は無いかな」

「わたしも大丈夫です」

「問題ないぞ」

「妥当だろうな」


 クラウスに続いてエミ、マルクス、ヴォルフも頷く。

 とりあえずの方針は決まったか。後は一応の事も考えて委員会とも連携をしておくことだろうか。


「ニーナ先輩。委員会は生徒会に続く形でいいですか?」

「もしも何かあったらね。ないに越した事はないでしょう」

「そうですね」


 楽観的なニーナの言葉に、その裏を返す。

 彼女は一度失敗している。その失敗を活かすために慎重になるはずだ。

 いつもはクラウスの前を走る彼女だが、他人の視線で生かされてきた彼女はこういう事に臆病だ。だからいざと言うときに動けないという事もある。その可能性の芽を早いうちに摘んでおく。


「最悪の場合僕が悪役背負いますのである程度の事はお任せしますよ」

「それなら気兼ねなく行動できるわね」


 ユーリアの意地悪な同調に小さく笑ってニーナに視線を向ければ、彼女は少し驚いた風に目を見開いていた。

 一体クラウスをどんな目で見てたのだろうか。悪戯小僧程度の認識ならば問題ないのだけれども。

 やがて小さく笑ったニーナは諦めたように告げる。


「……分かったわよ。その代わり、任せる事に出来ないとか嫌とか言わないでよ?」

「その辺りは得意分野なので大丈夫です。僕は僕の味方ですから。必要なら同情も忌避感もなく無感情に腕を振り下ろしますよ」

「頼もしい限りね。いい道化だわ」


 褒め言葉だと受け取って、それからようやくいつもの調子を取り戻す。

 それから生徒会室を彩った空気は、クラウスには居心地の悪い仲睦まじいものだった。




 そんな会議を行った翌日。答えを急ぐように学院で騒動が起きた。

 どうやらクラウスの知らないところで何かがあったらしい。

 朝、学院に行ってみれば、テオの元に同級生から話が来たそうだ。

 話の内容は懸念していた通り修学旅行に対する物言い。その後ろ盾……言葉への力を持たせるために生徒会に協力を頼みに来たと言う話らしい。

 その話がクラウスの耳に入ったのは朝一の授業が終わった休み時間。

 いきなりの報告に、起きてももっと先の話かと思っていたクラウスは少しだけ面食らって、けれど次の瞬間には幾つかの可能性を考えていた。

 幾らなんでも早すぎるのだ。昨日までではクラウスでも気付けないほどとても限定された場所での話だったはずで、ヴォルフも今のままなら問題は無いといっていた。それがいきなり行動を起こしたという事は、そうするに値する何かがあったと考えるのが妥当だろう。

 ここフィーレスト学院は唯一の国立の学び舎と言うこともあって、集まる生徒は各々がしっかりと個を持った者たちばかりだ。だから周りに(そそのか)されたからと言ってそう、簡単に意見を変えて行動を起こすというのは中々ない。

 それに異議を申し立てたい生徒がいるように、そうでない生徒もいたはずだ。と言うよりそちらの方が大多数のはずだ。だからヴォルフは大丈夫だと言ったのだろう。その多数の制止を振り切ってと言うならば、そちら側の生徒が何かしらの行動を起こしているはず。

 けれど次の休み時間にクラウスが確認した限りでは委員会や生徒会、教員の方に対抗するような話が来ている訳ではなかった。

 つまり単純に意見を言いたい少数の生徒たちだけが行動を起こしているという事だ。

 ならばどうしてその者たちが昨日の今日でこうして行動に移したのか。

 考えられるのは誰かがそれを先導、はたまた誘導しているという可能性だ。

 今こうして意見を言いに来ている生徒たちが動き出す事の起こりには、何かしらの要因が無くてはこの早さはありえない。昨日までは愚痴程度の雰囲気だった話が、いきなり一日や二日で確固たる意志を持っての複数人での行動に昇華するはずは無いのだ。

 起こっても長時間の末、それも大人数での行動のはずだ。そうでなければ生徒会を動かす最初の衝動にもならない。

 ならばクラウス達が意識していれば気付けたはず。例えそれが今日でも、無意識に雰囲気を作り出してのことならば、ヴォルフたちが気付いていたはずだ。

 けれど話を聞いてみても彼らも気付いていなかった。となれば、やはりそこには意図的に気付かせないまま誘導した何かがあるはずなのだ。

 生徒会に話が入ったのが朝。それから休み時間ごとに相談を重ねては三度目の休み時間に、テオから昼休みに話の場を設けようと提案を行った。その言葉に生徒たちは揃って頷いたそうだ。

 そこでもまた一つ疑問。

 意見を届けた先はテオだったが、彼の前には誰かが代表でと言った話ではなかったそうだ。複数人で徒党を組むようにしての行動。だからこそ、クラウス達もやり辛かったのだ。

 生徒会はテオが生徒会長で、代表だ。だから全ての最終権限は彼にあるし、役員の意見を発する場合には彼を通す必要がある。

 けれど今回の相手である生徒たちには代表がいない。だからクラウスは彼らの中から一人を代表として選ぶようにテオに伝えてもらったのだ。その方が話を纏めやすいからだ。

 この話、団結して直ぐだからとか、誰かが仕切る話ではなく総意であるからと言った解釈ならば、代表がいないのも頷けない話ではない。

 けれどそうであるならば、そこには無意識に集まった塊があるはずで、その場合はその集まりに反対する無意識の集団が止めるはずなのだ。だからこれはやはりどこかで仕組まれた問題。

 けれど代表はその中には居ない。つまり話を持ってきた生徒の中にその背中を押した人物はいないということだ。

 となれば裏で糸を引く者がいるのはほぼ確実だ。

 ならばクラウス達のやる事は簡単だ。意識的に誘導された一時の昂りならば跳ね返すだけ。その間に裏で蔓延った雰囲気を利用する輩を見つけるだけだ。きっとそれだけで騒動は消えてなくなってしまう。

 問題はそれが誰かを探すのが面倒だという事。

 闇雲に探したところでその人物を見つけるのは難しいだろう。となれば幾つか網を張るか、その人物の目的を暴く必要がある。

 簡単なのは前者だ。そのためにクラウスはテオの隣でその話し合いに同席していた。


「……話は分かった。確かに修学旅行は俺も行きたい。けれど今年行かなくたって大半の生徒は来年いけるはずだ。それに全員がそう言ったのか? そうならば掛け合えるが一部の生徒が言ってるだけじゃあ生徒会が言ったところで跳ね除けられるだけだと思うぞ」


 目の前の男子生徒は何かを焦るように結論を急いでいた。

 話は簡単。生徒の味方である生徒会なのだから自分たちの言葉を教員に代弁して欲しいというものだ。

 けれどそれはやはり修学旅行に不満を持つ生徒の総意ではない。


「だったら会長殿はその次が無い生徒に煮え湯を飲めと言うのか?」

「……それを先輩たちが言うのはおかしくはありませんか?」


 クラウスが違和感を覚えていると、目の前の生徒は尚も食って掛かる。

 そうして放たれた言葉にクラウスが疑問を返すと彼は眉を顰めた。

 彼としては反論のつもりなのだろう。生徒の代表としてのテオに対しては確かに意味を成す。けれどその言葉は必ずしも彼に利する話ではないはずだ。


「先輩たちは来年があります。だからこうして先輩たちが話を持ってきて、その上来年がない生徒について話を向けるのは筋違いですよね。もしそれが目的で生徒会に力を貸して欲しいなら、来年が無い生徒が不満を抱いて、その人たちが生徒会に来るのが本来の形では無いでしょうか?」

「同じときに同じ場所に行く仲間を見捨てろというのかっ?」


 返った言葉に彼の論が破綻する音を聞く。

 なるほど。彼の目的は自分たちが修学旅行に行けない事への交渉では無いということか。そうでなければここで必要の無い生徒の話を前面に押し出す理由が無い。

 つまり目的は別にある。ではその目的とは一体? 生徒の不満を利用する裏で画策する人物の意図とは一体?


「それは生徒会ではなく教員の方々が考える事です」

「その教員が早く結論を出さないからこうして話にし来ているのだろう?」

「論点がずれてますよ。貴方たちの希望は貴方たちが修学旅行に行く事ではないのですか?」


 完璧に外れた言葉を指摘すれば彼は言葉に詰まった。

 当たり前だ。幾ら自分たちの考えを正当化するために他の情報を振り回しても、それは建前であって彼らの本当の目的ではない。

 だからクラウスの言葉を否定する事は出来ない。

 否定すれば、その瞬間クラウスの口から飛び出すのは「その話は次の機会がない生徒とすることです」一択だ。

 逆に頷けば、話は次の機会がある生徒たちに絞られる。次の機会がある生徒たちはまだ余裕があるから、今回必ずいく必要は無い。


「それとも貴方たちの希望はその次の機会が無い生徒の力になる事ですか? だとしたら今からここにその生徒たちを連れてきて、そちらの方面で話を進めますけど」


 返らない答えに駄目押しに告げれば彼は自分の意見の穴に気付く。

 もちろんそんな可能性は考慮していないはずだ。ようやく集めただろう数人での焦るような行動。次のない生徒を巻き込む時間はなかったはず。

 話を持ってきたのは先輩であるハーフェン級の生徒で、次の機会が無いのはトーア級に三年目の在籍をする生徒だ。

 そしてそういう生徒は、大概何かしらの問題を抱えているからトーア級で留まっているのだ。

 家の事情だったり極個人的な障害だったり。そんな触れるのも危うい部分に無遠慮に踏み入っていくのは、余程の向こう見ずでない限りできないはずだ。

 そもそもそういう生徒は学院に来ること自体を受け入れていなかったりしている。いくら修学旅行という特別でも……だからこそ巻き込まれて目立つのは余計に避ける筈だ。

 だから話を合わせいるわけでもないトーア級の生徒を連れてきたところで、彼らと目の前の先輩たちの意見は必ずしも一致しないはずだ。


「どちらですか? 貴方たち次の機会がある生徒に対しての希望ですか? それとも次の機会が無い生徒に対しての希望ですか?」


 ただ平坦に極論を問う。けれどそこに残された結論は一つのはずだ。

 そんなクラウスの冷徹な姿勢にマルクスが危ないものを見るようにこちらを窺ってきた。

 彼がクラウスに対してどんな感情を抱くのかは定かでは無いが、これこそがクラウスだ。

 全てを自分の為に関連付けて、全ての理由はクラウスの為にある。クラウスが起こす行動の先には必ずクラウスに利する理由があるのだ。

 ただ自分のためだけに他人を視界から外す。歪んだ身の上の自分が彼ら真っ当な人間と立ち向かうために己に課せた枷であり武器だ。

 視線を返せば彼は直ぐに男子生徒の方へと目を向けた。その視線に男子生徒は肩を震わせる。

 やがて沈黙を挟んで、こちらを睨むようにして見つめる彼は静かに零す。


「……前者だ」


 その答えはわかっていた。そうなるように話を運んだのだから当然だ。

 テオの方を窺えば彼は小さく頷く。


「そうですか。よかったです。でも代表も定まっていないような状態で意見を纏められず生徒会に協力を要請されても、こちらも動く事が難しいのは分かりますよね? もし意見が纏まったらまた今度お話を聞かせてもらえませんか? それが修学旅行の中止に不満を持つ生徒の総意なら、生徒会は出来る限りの事をしたいと思います」


 遣り切れなさか、それから踵を返した彼はクラウスの言葉に返事をしないまま生徒会を出て行く。

 とりあえずまだ話の分かる生徒でよかったと、火種を一度消せた事に安堵しながらその背中を見送る。

 そうして訪客が生徒会室を後にするその刹那、クラウスは耳に届いた言葉に少しだけ表情を硬くした。


「──雑種の癖にっ」


 クラウスが何かを言う前に、扉は音を立てて閉じられる。

 捨て台詞。単純に言えばそういうことなのだろう。

 けれどそれは生徒会に対してではなくクラウス個人に対する侮蔑だ。

 

「クラウスさん……」


 心配そうにこちらを見つめるフィーナの瞳が揺れていて、そこに込められた気持ちにクラウスの感情が揺らぐ。

 別に他人にどうこう言われようと知ったことではない。流石にあんなに直接的なのは珍しいが、それでもある程度は慣れたものだ。

 少し競り上がった感情を深呼吸で落ち着ける。呼吸はいい。簡単に思考を切り替えて感情を調節できる行為だ。クラウスはそこから派生して少しばかり溜息の数が多いのが最近の悩みだが……。

 そんな事を考えながら落ち着いた思考でフィーナに笑いかける。


「大丈夫。……ただちょっと折が悪かっただけだよ」


 少し前からクラウスに対する風辺りが強い。けれどそれは今しがた終わった彼との話のように誰かが意図してのもので、誰かに実害が出ている話ではない。

 ただ少し、似ているだけだ。

 誰かの意図によって操られた雰囲気が明確な音や形を持とうとしている。

 だからこそ、クラウスは懸念するのだ。生徒会に属するクラウス。クォーターであるクラウス。それはクラウスと言う中に存在する面の一つで、全てがクラウスに関係する事だ。

 それがもし、何かの拍子で噛み合ってしまえば……噛み合わないにしても互いに作用してしまえば。例えばそれはニーナのときの降級騒ぎのように、話が肥大化して手がつけられない問題になってしまうかもしれないと。

 その可能性が、クラウスの未来予想図の中には既に存在している。

 とても確率が低い話だ。けれどありえない話ではない……。

 この修学旅行の中止に関する問題と、クラウスに関する風潮の変化の裏にいる人物が──もしも同一人物なのだとしたら、と。




 そんなクラウスの嫌な予感は的中した。

 修学旅行の話し合いがあった翌日から、クラウスに対する風当たりが目に見える形で激しくなり始めたのだ。

 噂が広がり、眠っていたはずのクラウスに対する忌避感が燃え上がる。

 級友に対する愚痴が悪態に変わって。委員会に届く生徒からの要望がクラウス個人への悪口へ変化して。行動に移したものの中には廊下ですれ違う際にわざとらしく大声で話したり、肩をぶつけてきたりと、ありふれたいじめの様相を呈し始めていた。

 けれどこの程度のクラウス個人に対する問題ならば気に掛けるほどの事ではない。

 故郷にいた頃も大人たちからの理不尽な視線には晒されていたし、この学院に入学した時だって大事にはならなかったが似た様な事があった。

 その度に思い出す親の言葉。クラウスは生まれてからずっと父親に言われて育ってきたのだ。


 ──人間と妖精……その混血であるハーフィーと呼ばれる生き物は確かに数多く存在する


 ──彼らは半分ずつであるから、均衡を保ち妖精にも人間にも、好かれ、厭われる


 ──けれどその子孫たるクォーターはその均衡を保てない


 ──均衡ではないが故に、(ゆが)み、(ねじ)れ、そして(いと)われる


 ──世界は均衡でないものを嫌う


 不思議とその言葉に怒りは湧かなかった。その頃から感情を否定していたと言えれば格好がつくのだろうが、子供心に刷り込まれた観念はそれが常識だと思い込まされた。

 だからクラウスは理不尽だと嘆くより前に、そういうものだと諦観した。

 諦めていたから、下手に反応を返す事もなくて、その内クラウス個人に対する非難は鳴りを潜めたのだ。

 そう、それがクラウス個人に対する問題であるならば、今回もまたいつものように視界の外に追いやるだけだった。

 しかしその矛先はクラウスの隣、もうはんぶんにまで刃を向けた。

 フィーナとアルだ。

 妖精の世界でもクォーターに対する接し方の違いはあるらしい。けれどそれは体の中に流れる血を貶すような話ではなく、それが理由で妖精術をうまく使えない事に起因するからかい程度の事だ。そういうものだと過去にフィーナが少し寂しそうに話してくれた。

 そんな彼女達にとって、生まれを侮辱される事は始めてだったらしい。

 アルは昔クラウスといたからか、そういう事にある程度耐性のようなものを持っていて、時折煩わしさを感じては、感情を抑えていた。

 けれどフィーナは自分に向けられた矛に、クラウスに向けられた矛に怒りを覚えたのだろう。

 きっとクラウスがその都度止めていなければ、彼女は感情に任せて反転術式を他人の契約妖精に向けて放っていたかもしれない。

 それほどに乱れた彼女の気持ちが、回路を通じてクラウスの中には蟠っていた。

 だからクラウスは始めて反撃の盾をとった。

 この世界の伴侶である妖精に刃を向ける事は、クラウスの目指す妖精の国(アルフヘイム)に……そしてきっと妖精王と女王が願った関係に楯突く事と同義だ。ならばその障害は排除して然るべきクラウスの目標だ。

 攻撃をして貶すのであればクラウスを貶めようとするその者たちと同じ。ならばニーナが演じて見せたように、ただ自分を守って相手の非を認めさせる方法を振り翳す。

 幸い、盾とする武器は直ぐにクラウスの手元に転がり込んできた。


「クラウス、ちょっと時間いいかしら?」


 随分と居心地の悪い空気を意にも介さない振りをしながらクラウスが待っていると、ようやくその声を耳が捉える。

 

「おかえり、ようやく動けそうな感じかな?」

「皮肉にも話が無駄に大きくなったからかしらね。情報無しの頃よりは随分と楽だったわよ。……それにクラウスも利用する心構えは出来てるんでしょ?」

「もちろん。この景色は僕にとってはただの好機だからね」


 クラウスの肩に座ったのは黒く艶やかな髪を短く切り揃えたアル。彼女には頼んでいた通り、ずっとこの件に関して裏にいる人物を調べてもらっていた。

 最初は殆ど手探りだった捜査だが、ここ数日で目に見えるほど悪化した景色に、彼女の方は忙しかったらしい。クラウスの前に姿を見せるのも寮だけ。学院では殆ど別行動を取っていたほどだ。

 そんなアルがようやく尻尾を掴んだらしい。その情報を囁くように零す。


「……ねぇ、クラウス。この景色クラウスの近いところの方が影響が大きくないかしら?」

「…………あぁ、うん。考えてみればそうだね。上級生や下級生よりは同級生からの風当たりは強い気はするけど」

「そうなるのは当たり前なのよ。こうなるように仕向けたのはクラウスと同じトーアの生徒だもの」

「……もっと言うと僕に近しい人物じゃないかな?」


 アルの言葉が別角度の情報から立体感を持つ。


「アルばかりに頼るのも迷惑だから他からも情報を集めてたんだ」

「カペラさんですよね」


 ずっと隣にいたフィーナはそのときの事を覚えていたのか確認するように告げる。頷くとアルはどこか寂しそうに「そう……」と短く零した。


「別にアルの情報を頼りにしてなかった訳じゃないよ。僕一人の力でどうにかなりそうならそうするつもりだっただけ」

「で、それが誰だか見当はついてるの?」

「もちろん。その確認をこれからしにいくつもり」

「あれ、今日何かあったっけ?」

「カイ少佐から連絡が届いてるらしい。多分前にお願いした調査の結果だと思う」


 言って、前のときにユーリアから渡されたヒルデベルト国王直々の書簡を思い出す。

 あれに書いてあった約束の日まであと少し。それまでにこの問題を片付けられるといいのだけれど。

 頭の中の予定表と照らし合わせて歩みを早くする。

 そうして生徒会室に辿り着けば委員会の面々に加えて生徒会役員の顔も揃っていた。どうやら話の中には学院に影響があるものも含まれるらしい。

 クラウスがいつもの場所に腰を下ろすと会議が始まる。

 まずは生徒会も関係することからだった。

 城での出来事を省いて、妖精変調に関する対策をしていた生徒会だったが、今回の調査で別方面の可能性も出てきたらしい。

 この前クラウス達が提案した視点。病気や霊的存在と言う話だ。

 特に霊的存在は病気と違って知覚出来ない。そのためいつ影響が出るかも分からない。それらに対していつでも動けるように準備をしておけと言う命とのことだ。


「……以上が連絡事項だ。何か質問はあるか?」

「…………話題は違うけど一ついい?」


 生徒会長の声にマルクスが手を上げる。テオが頷くと彼はクラウスに視線を向けて告げる。


「色々大変だとは思うけどそろそろ学院内の雰囲気も目に余って来るんじゃない?」


 随分と真っ直ぐな問いかけ。話題にならなければこちらから話す予定ではあった話、クラウスの周辺に関する問題だ。どうやら彼も気付いてたらしい。

 呼吸を整えて答える。


「……迷惑掛けてるとは思うよ。けど昨年度のニーナ先輩の時と似てる雰囲気があるからね、そう簡単に事を起こせない状態」

「生徒会として動いた方がいいか?」

「いや、どうにかする算段は立ってるから。因みにお願いしたら力を貸してくれる?」

「幼馴染の(よしみ)だ」

「わたしも、先輩にはお世話になってますし」

「ぼくは無理かなぁ……」


 続いた快い返事に水を差すマルクスの言葉。

 冷静な声音に納得を生み出して言葉にする。


「何が起こるかわからないからね。別に僕は責めないよ」

「クラウスの問題だからな。こっちにまで飛び火するのは遠慮したいってことで。安全な方法があるならそれを取ってただろうけど」


 マルクスの家、アルテルフ家はコルヌ家とまでは行かないまでも大きな家だ。そこで育った彼は冷静に損得勘定ができる人物だ。

 もしクラウスがマルクスの立場だったら彼と同じ行動を取るはずだ。絶対に表立って動いて注目を集める事は避ける。

 彼らしいと納得して今後の方針を固めると当初の目的を達する。

 そんな風にクラウスが一人満足しているとニーナが促す。


「生徒会の話はまた後でいいかしら? 委員会だけでしたい話があるの」

「あ、はいっ」

「分かりました。それではぼく達はこれで」


 そう言って退室するマルクスとエミ。

 背中を見送りつつ頭は委員会のそれに切り替わる。

 生徒会に話が来たという事は前提として城の方で動きがあったからだ。今回の召集はその報告なのだろう。

 深呼吸一つ。それからユーリアに視線を向けると、彼女は一つ頷いて話し始める。

 話の内容は端的にカイからの連絡と今後に対する具体的な方針だった。

 クラウス達が提案した視点での解決は半分ほど効果があったらしい。

 まず病と言う視点。病気であるという可能性と、それに準ずる薬草などの知覚できる自然現象での干渉は否定されたらしい。

 つまり現状この世界で認識されている幻覚作用を齎す効果の可能性は無いということだろう。

 それが分かった半分。

 そして分からない半分が、クラウスが着目した霊的存在での可能性だ。

 目に見えない、知覚出来ないのだから調べること事態が難しい。

 ならばどうするかと国が立てた方針は、魂に干渉できる妖精の力を借りることだった。

 妖精の干渉範囲。これはその妖精の生まれに深く関係する技能であり、妖精従きにとっては契約妖精が持つもう一つの感覚器官だ。

 ヘルフリートが炎の流れに、ディルクが音や波に、ダフネが草木に干渉範囲を持つように。魂の流れに繋がりを持つ妖精も存在する。

 ヘルフリートもウィルオウィスプとして僅かにだが関係はあるだろう。他にも魂と言う存在に密接なのはバンシーやデュラハンと言った死を予見する存在だ。

 そう言った存在の力を借りてその可能性の有無を調べようと言うことらしい。


「カイ少佐はヘルフリートと、それからリーザに力を貸してほしいそうです」

「ヘルフリートの主な干渉範囲は炎の流れだからな? そこまで期待しないでくれよ?」

「彼女の干渉範囲は魂に関係するところ?」


 テオの言葉に続けてクラウスが問う。

 妖精の本質を詳らかにする事は余り褒められたことではない。けれど今回ばかりは話題にしなければならない。ならば汚れ役はクラウスが買って出るべきだ。少なくとも、今ここにいる面子を集めたのはクラウスの希望なのだから。

 ユーリアが静かに頷くとリーザ自らが語り出す。


「わたしの妖性はスプライトです」

「妖性って確か妖精独自の言い回しだよな」

「解釈は妖精の本質で間違ってないと思うよ」

「スプライトって、シルフよね?」


 テオにクラウスが答える傍ら、ニーナが眉根を顰めて問う。彼女の言葉にクラウスも思考を減速させる。

 スプライト。幽霊としての根源も持つ魂や精神に干渉範囲を持つ妖精だ。そしてエルフの歴史ではシルフに近しい存在としても語られ、時にはシルフと同一視される。

 シルフは風の精霊。もちろんスプライトも風の属性を持つ妖精だ。

 妖精、精霊、幽霊。つまりリーザも複数の本質を持つ、ヘルフリートと同じ三位一体の存在だと言えるだろう。


「ニーナ、とりあえずその話は後だ」

「……そうね…………」


 ヴォルフの言葉に顔を伏せるニーナ。そう言えば幾度か疑問に思ったことではあるのだが、同級に属するヴォルフとニーナだが、年はヴォルフの方が下のはずだ。そんな彼がニーナの事を呼び捨てなのは彼女としてはいいのだろうか? 納得しているのならそれに越した事はないのだが。

 また新た情報が増えたとクラウスはわかりやすく咀嚼して記憶しながら話題を戻す。


「それで、僕達はいつ動けばいいの?」

「多分ハロウィンと重なるんじゃないかしら」

「うっ…………」


 ユーリアの言葉にフィーナが唸る。

 彼女としては楽しみにしていたお祭りだ。それが仕事で潰されてしまうとなるとやはり気落ちするところがあるのだろう。

 けれどクラウス達に断わる道は存在しない。残念ながら今回は参加できないと割り切って仕事に専念しなければ。


「……早く終わればサウィンの方には参加できるからさ」

「わたしも仮装したかったです…………」


 拗ねたように口を尖らせた彼女は、それから諦めたように溜息を吐いて顔を上げた。また今度彼女の機嫌を取るとしよう。




 そんな事を考えながら会議を進めて、週末の大仕事の内容を煮詰めるとお開きとなった。

 とりあえず寮に帰ってからの仕事が増えたと情報を纏めて足を出す。目的地は購買。

 この時間ならばまだ開いているだろうし、フィーナやアルに聞きたい話もある。彼女達の意見を買って帰るとしよう。

 思って、購買へ向かえばそこにはマルクスの姿があった。どうやら何か足りないものを買いにきたらしい。

 直ぐに頭の中の情報が並べ替えられて行動に移す。


「どうしたの? 何か買い物?」

「ん? あぁ、ちょいと文房具とか買い足しとこうと思って。クラウスは?」

「交渉材料を買いに来たんだ」


 笑顔で、笑わない瞳でそう告げるとマルクスは驚いたように肩を揺らした。

 流石に気付くよ。いや、気付くように振舞ってた、が正解かな?

 彼の立場から物事を見れば視界は明瞭に分かりやすい。


「で、何を悩んでたの?」

「…………いや、ちょっとした手違いで手持ちのお金が不足してて。昼休みに飲み物買わなきゃよかったと後悔してたとこ」

「よかったら代わりに出そうか?」

「本当? 助かる」


 わざとらしく笑って告げるマルクス。話の根幹が別にある事を二人とも分かっていてそこを話題にしないまま言葉を紡ぐ。

 そうしてクラウスが代金を払えば並んで歩き出す。


「……さっきはあんな言い方してごめんな? 流石に言葉にしとかないと危ないかと思って」

「汚れ役は僕の仕事だよ。だからマルクスが無理する必要ないんじゃないかな?」

「知ってる。だから最終的にクラウスがそうなるように振舞っただけ」


 言葉の調子が少しだけ深くなる。彼の象牙色の瞳が前を見据えたままその視界にクラウスだけを灯す。

 ここらで幕引きだ。ユーリア同様、彼に役目は無いし、それは別の人物でも出来たこと。今回彼女がいなかったからその役を買って出てくれただけだ。

 その事に感謝をしながら告げる。


「色々ありがとね。でももう噂は流さなくていいよ」

「ほんとはこんな大事にするつもりじゃなかったんだけど……やっぱりあの人みたいにはいかないね。もう少しでアルケス先輩の時の二の舞を引き起こすとこだった」

「大事になる前に突き止められてよかったよ、黒幕さん。それと、彼女は狙ってやらないから事が大きくならないんだとおもうよ」

「女の理不尽さには叶わないな……」


 疲れたように零すマルクス。その程度で匙を投げるなら、やはりその程度が限界と言うことだ。ならば彼女がクラウスの近くにいてくれる幸運には感謝をしなければ。


「とりあえずこれ以上はいいよ。弁解の噂も必要ない」

「力になれなくてごめん」

「その心意気を、さっき買ったんだよ」


 クラウスが言葉にすればマルクスは適わないという風に笑った。

 今回のクラウス周辺の騒動は彼が黒幕だ。

 修学旅行の中止を皮切りに嗾けて、その裏でクラウスに対する信頼を落として。後からその二つを生徒会と言う部分で結びつけてこの現状を作り出した。

 クラウスが得た情報、イーリスからの話の中に具体的な彼の名前が挙がったのだ。その可能性は確かに考えていたし、アルの言葉でも確証は取れた。

 まず修学旅行に対する生徒会への談判。あれは生徒会が対策を練った後に起きた問題だ。

 もし不満が直ぐに形になったなら、イーリスからの進言とそれから立てた対策より先に問題になっていたはずなのだ。

 それにそれまではクラウスにも殆ど知覚出来ないほどの変化だった。その二つの観点から、裏で糸を引く人物がいると考えていたのだ。

 そうして、その人物の可能性を吟味していた。

 あの折に話が舞い込んできたのは流石に出来すぎている。もしも裏で糸を引く人物がクラウス達とは関係のない者ならばもっと機会がずれていたはずだ。

 生徒会が対策と方針を固めた上での談判。

 その意味するところは、単純に生徒会役員の中にその人物がいるという可能性だ。

 これならば筋は通るし、となればその人物の目的は修学旅行とは別のところに目的があると踏んだのだ。

 だからこそ、クラウスは真っ先に自分が対象になっている可能性に思い至った。

 考えて、それから周囲で起きている変化と修学旅行に事を発するそれが繋がっている可能性を思い描いた。

 結果、イーリスとアルの言葉でその想像は確信へと変わったのだ。

 マルクスの視点から見れば最初からそのつもりだったに違いない。そうでなければイーリスにもアルにもばれないように動いていたはずだ。

 クラウスに分かるように行動していたのだとすれば説明はつく。その上で、クラウスの存在を最後の拠り所にして、全ての悪を被るつもりだったのだろう。

 何故そんな事をしたのかと行動の裏を返せば、彼の目的が直ぐにわかる。


「……けどどこで知ったの? 妖精の国のこと」

「テオを軽くからかってみた。そしたら思いの他簡単にその単語が出てきたから。前から何かしてるのは委員会に抜擢された頃から察してたんだけど、同じ生徒会になったから変に興味が湧いてね」


 なるほど。少し迂闊だった。けれど知られたのが彼でよかったと今更ながらに安堵しながら、その上での彼の思いを読み取る。


「だとしたら注意が足りなかったな。……なるほど、それで僕の立場を堅くするために自作自演をして、最後に燻ってた不満を消し去ろうとしてくれたわけだ」

「クラウスが気付いてないわけではないと思ったんだけどね。ほら、なんだか今騒がしい事になってるから。今後そっちの仕事が増えたときに変な不満が持ち上がったんじゃ大変だと思って」

「まぁいつかは面倒を見る話だとは思ってたけどね」


 彼も見かけによらず腹の内の黒い事だと笑いながら、もう一つ裏を返す。

 マルクスがクラウスに肩入れをして得する理由。つまりもしクラウスの理想が現実になった時に首を突っ込めるように足掛かりを作っておきたかったということだろう。名家のお坊ちゃまかと思えば、なかなかどうして強かな気概の持ち主だ。


「それで? ぼくからの弁解なしでどうやって正当化するの?」

「まだ矛先がニーナ先輩の時のようにクォーターであることに対して向ききっていないからね。その考えの先を折るだけだよ。多分それだけで振り翳す論を見失って騒動はじきに治まるよ」

「そんなにうまくいく?」

「無意識の集合体なら、先導者がいないから雰囲気を書き換えるだけで効果的なものだよ。仮想の首謀者を作り出してもいいね」


 最初はマルクスが起こした騒動だ。だから彼自身が解決しようと全ての決定権を自分に持たせたまま彼は潜伏をしていた。途中で二つの騒動を一つに纏めて、目的と矛先を修学旅行と生徒会でなくクラウス個人に絞ったのだ。

 だから生徒会に話が来た時も代表のような人物はいなかったし、直接行動に移す時も誰がやったかわからないように目立ったものはなかった。それ以降修学旅行の件で話が舞い込んでくることも無く、クラウスに対する不信ばかりが一人歩きして募ったのだ。

 けれどそれらはいつからかマルクスの手を離れた噂へと変わった。彼が当初予定した自作自演は周りの変化に対応しきれず破綻したのだ。そうして上に立つものを失ったまま雰囲気だけが先行した。

 ならばそれを逆に利用する。統率者のいない雰囲気が作り出した集団なら、その雰囲気を書き換えるだけだ。そのために、クラウスはマルクスにこうして接触した。黒幕を探していた。


「そのために一つ質問。マルクスが利用したのは誰?」

「利用って、その言い方は誤解を招くからやめて欲しいんだけど……。利害が一致しただけだよ。協力してくれたのはカペラさん。あの人なら噂をばら撒いても不思議には思われないからね」


 あぁ、なるほど。

 そう言えば彼女は噂に生きる少女だが、その噂も流しやすい空気と流しにくい空気が存在する。

 何かの本で読んだ言葉に、暗い顔をしていると悪事が出来ないという言葉があったが、そこに通じるところもあるのだろうか。

 何にせよ、噂を求める彼女はそこに流れる雰囲気に敏感だ。だから今までも幾度かクラウスを助けてくれたし、泥を被ってもくれた。

 彼女の行動は彼女のためであるが故の、周りへの優しさだ。

 彼女にも大変な役目を背負わせたと自分の不甲斐なさを改めて感じながらマルクスから役を奪う。


「そっか。……分かった。後は僕に任せてよ」

「最後まで力になれなくてごめん」

「もし必要なら声をかけるから。それまでは生徒会の会計として、それからテオの友人としてよろしく頼むよ」

「…………分かったよ」


 どこか寂しそうに笑って答えるマルクス。今の言葉にクラウスの友人であると加えなかったからだろうか?

 不必要なところで広がる関係の輪にそろそろクラウスも把握するのが大変になって来る。だから彼女に役割を与えて摘蕾(てきらい)したように、今一度クラウスの周辺を整理しなおさなければ。

 誰が必要で誰が不必要なのか。

 過去の約束である妖精の国に向けてそこに実る果実の数を選別するのだ。

 クラウスの物語は、必要な役割だけがいればいい。不必要な人物までを巻き込んで、その記憶に後悔を刻み込まないが為に。

 これはクラウスが抱く最初で最後の優しさだ。


「失敗したなぁ……」


 呟きに肩を揺らして二人で歩く。

 それから他愛の無い雑談を紡いで、二人でいつか遊びに行く約束をすると別れたのだった。




              *   *   *




 そうしてクラウスが身の回りの変化にようやく解決策を見出した頃、アンネは一人ブランデンブルク城を訪れていた。

 今日は普通に授業に出ていて、ヴァレッターの方の仕事も休みだった。それを知っていたのか、彼女から召喚の手紙が届いたのだ。

 仕える主からの言葉だ。一介の使用人としてはただ頷くほかは無い。ただ、胸の中にはどうして私だけと言う言葉が渦巻いていた。

 そんな事を考えていると目の前に大きな木製の扉を鎮座させて足が止まる。

 銀色の取っ手、扉を叩く回数は四回。前に来た時同様の景色を再確認して深呼吸すると、小脇に小さな袋を抱えて一歩を踏み出す。

 響いた音に、遅れて声が返ると扉が開かれた。

 潔癖な白い部屋。鼻先を過ぎる薬のにおい。強い拒絶の中に佇む儚げな女性。


「近くへいらっしゃい」


 招待の声に視線を伏せて寝具の傍に跪く。すると彼女は何かに気付いたように声を震わせた。


「ようこそ、顔を上げて……あら? ふふっ、貴女だったのね」


 差し出された手の甲に口付けを落として彼女の言葉に従うと、閉じた瞳が笑みの形に彩られる。


「この前はお花をありがとう。また少しだけ、長生き出来そうな気がしたものよ」

「そう言っていただけると光栄です、アスタロス王妃殿下」

「そんな堅苦しい呼び方はやめて頂戴な。お友達になりましょうアンネ・ルキダさん。私はアンネと呼ぶから、貴女はリンダと呼んで頂戴」

「……仰せのままに」


 アンネが固く頷くと視界の端でローザリンデが手を振る。その仕草に、入り口で控えていた使用人が静かに退出した。

 どうやら今日の呼び出しは極個人的なことらしい。アンネ個人が呼び出されても、彼女の得になることなど殆ど無いような気もするのだが、一体何を考えているのだろうか。

 思案一瞬。気付けばローザリンデの白く細い指がアンネの手を取っていた。


「ほんとは私のもうはんぶんもいたはずなんだけど、今外に行ってるみたいなの。またの機会でいいかしら?」

「もちろんです。お会いできる日を楽しみにしています」


 姿勢を崩さずに答えればローザリンデが少し困ったように笑って肩を揺らした。


「その社交辞令みたいな話し方もよして、アンネ。私は本当に貴女と友達になりたいのよ」

「……ですが…………」

「風も、太陽だってここには入って来れないわ。使用人にも少し意地悪をした。今ここには私と貴女しかいないのよ。だからお願い。ただ友達のように、この老いぼれの頼みを聞いてはくれないかしら?」

「………………分かりました。それでは失礼して、リンダ」

「えぇ、アンネっ」


 頼みと言われては断われない。心を決めて答えれば彼女は無邪気な子供のように笑う。

 彼女が望むならそうしよう。それがアンネに残された道で、彼女の思い描く理想ならば。


「それでアンネ。頼んだものは持ってきてくれたかしら?」

「もちろん。けど本当によかったの?」

「もちろん駄目に決まってるでしょう?」


 差し出しかけた手が止まる。思わず見返せば、彼女は小悪魔に笑っていた。


「こんな機会でもないと食べられないもの。お世話長には内緒よ? さあ早く出して。さっきからいい匂いにお腹が鳴いて仕方ないの」


 まるで童女のように声を弾ませて言うローザリンデ。彼女の悪事の片棒を自分が担ごうとは……。

 拒否権の無かった小さな悪意に少しだけむっとしながらアンネは諦めて準備を進める。

 ここへ来る前寄ってきた場所。それは目の前のローザリンデから頼まれた、『月夜の切株』の焼き菓子だった。

 一体どこからそんな情報を仕入れてきたのか。アンネに宛てた召喚の手紙には、目玉商品の薄い焼き菓子を買ってきて欲しいと書かれていたのだ。

 彼女は一応病人だ。なのにこんな砂糖の塊を所望するなんて、お転婆以上の茶目っ気だ。


「はい。ご所望の品ですよっと」

「ん~、いい匂いね。お願いして正解だったわ」

「今回の特別。次はもう無いから」

「えぇー?」


 可愛らしく不満を漏らすローザリンデ。言葉の端に本気の色が聞いて取れて、思わず小さく吹き出してしまう。

 つられて彼女も笑って部屋に音が溢れる。それは籠の鳥が寂しさを紛らわすが如く囀る様に。

 脳裏を過ぎったそんな景色に笑みをしまって二人で一皿を突き始める。


「それで、今日はどういったご用件ですか?」


 口に中に広がる果物の酸味。その刺激に思考を切り替えてアンネはいつも通りに戻る。

 少し寂しそうにしたローザリンデだったが、欠片を飲み込むと彼女もまた先程までの雰囲気を消す。


「……あの子は。アルフィルク君は元気かしら?」

「…………はい。今は少し忙しいみたいですけれど」


 答えつつ、彼女の言葉の先を追う。

 クラウスの名前が出たという事は、あの件だろう。アンネに出来る事は限られているために詳しい事は知らないが、どうやら二人で妖精変調に関する対策を練っているらしい。

 クラウスはその補助的な役割で、何故か王妃殿下に一目置かれているのだ。

 恐らく反転術式の所為なのだろうが、過去彼にあれは偶然の産物だと聞いた。

 何やら少し不思議な体験をしたとかで、詳しくは話してくれなかったが、どうやら彼個人としては余り納得していないらしい。

 けれど責任感が強いのはアンネから見た彼の印象の一つ。時間を見つけては妖精術に関する本や文献を読み漁って知識を暴食しているらしい。

 彼の為なのだからアンネに口出しをする権利は無いが、悪役を演じつつその本性はとても真面目だ。


「そう……。また今度、呼ぶことがあるだろうから、その時は彼の案内よろしくお願いできるかしら?」

「仰せのままに」


 仰々しく頭を垂れるとやはり彼女はどこか寂しそうに笑う。

 幾ら許されたと言えど、流石にこんな話を先程の調子でするわけにはいかない。少なくとも、彼女は今の言葉を伝えるためにアンネを呼び出したのだ。そこを履き違えるわけには行かない。


「さて、言いたいことも言ったし、また少しお話に付き合ってくれないかしら?」

「喜んで。どんな話がご所望ですか?」

「そうね────」


 答えることしか許されないアンネはただ彼女に頷いて笑顔で答える。

 彼女のことだ。きっとアンネのこの仮面にも気付いているのだろう。気付いていて、それでも黙って見過ごすのだから適わない。

 私は今彼女によって生かされているのだ。それが今、私を現実に繋ぎ留める楔。

 アンネ・ルキダを再認識して身を弁える。

 この身は誰にも望まれない異端役。彼だけが理由をくれる操り人形。

 だからその糸を切られないように、彼の興味を削がないように憐れに踊る。

 それが私に課せられたたった一つの使命だ。

 ────狂ってる

 自嘲して全ての責任を彼に押し付ければ、また一つ私は愚かになれた気がした。

 それからローザリンデと一時を過ごして、アンネは一人静かに部屋を後にする。

 廊下ですれ違った女中長と挨拶を交わして、焼き菓子の事を密告しながら彼の事を夢想と共に危うく歩く。

 どこに向かおうというのだろう。何をなそうというのだろう。

 妖精の国と妖精変調。

 近くて遠いところにある妖精という繋がりを意識すれば、隣に佇むダフネの姿を視界に収めた。

 妖精。何処より来たりて何処かへ向かう、人間とは異なる種族。異能を持ち自由を本質にその生を単純に全うする魂。

 彼らの意味とは何だろうか。何故彼女達はこの世界に存在しているのだろうか。

 淡く霞んだ真実を追い求めるように手を伸ばせば、その先にクラウスがいる気がした。

 彼なら、その答えを教えてくれるかもしれない。

 彼なら、私を肯定してくれるかもしれない。

 いつしか想いは罪悪の炎となってこの身を焦がす。

 ……やっぱり、諦めきれないよ。

 歩んできた茨の道を振り返り、傷だらけの足の裏を撫でる。ざらりとした感慨は彼女への嫉妬だろうか。

 枝から落とされた蕾が雨水を浴びて花を開く。

 それは確かに、鮮やかな色と匂いを振り撒いて、視界を恋色に染め上げたのだった。

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