第三十八話 お父様は空気。
「ご無事ですか? 旦那様、お嬢様」
あ。
執事さん登場だ。
そして、お父様をどかしてくれたよ!
……にしても。
相変わらず息切らしてないな……。
あたしなんて、ぜぇぜぇ言ってんのに……。
え?
体力ないって?
しょうがないでしょ。
まだ十一で、体のつくりが成ってないんだから!
でも、ずいぶん昔より体は痛くないよ?
うん。
平気ってほどでもないけど、平気だよ?
言葉が変って?
嫌だな。
そんな感じなんだって。
「…………お嬢様……?」
あれ?
おかしいな。
なんで執事さんと同じ視線の高さなんだ?
……うん。
わかってる。
持ち上げられるね……。
……またこのパターンか!
いや、別に。
別に。
気になんかしないもん……。
だって執事さんは、倒れてるあたしを立たせてくれるためだもんね。
つまり、必然!
はい。
無理やりとか言わないの!
……おっといけない。
返事返事っと!
「ありがと、執事さん! あたしは平気だよ? ちょっと転んだだけだから」
「然様でございますが」
ふわりとほほ笑む執事さん。
相変わらず、ほっとするような笑顔だね。
それと。
出来たら降ろしてきた抱けると尚よろしいのですが……。
「執事さん。降りるよ?」
「ぁ。はい、お嬢様」
……『ぁ』って。
小っちゃい声だったけど、『あ』ってばっちり聞こえたよ?
ねぇ。
執事さん。
その『あ』って、何?
何かに気づいたときの『あ』?
それとも、忘れてた。
の、『あ』?
……そんなことないよね?
ただ、なんて意味のない『ぁ』。
なんだよね?
ねぇ?
「いかがなさいました? お嬢様」
そう言って輝かんばかりの笑顔!
う、眩しい。
そう思ったのもつかの間。
執事さんはお父様と話をしに行った。
くそ!
はぐらかされた!!
あ、砂!
そう思って軽く首をひねって、少しだけ見えた背中。
……砂まみれだった…………。
とりあえず、手の届くとこだけ払うことにする。
…………見えないところは、しらない……。




