第三十五話 夫婦水入らず
はい。
つきました、台所(まで約三十歩のこと)!
え?
かっ飛ばし過ぎ?
かっこが変?
良いの良いの。
だって、探しているのが見つかったから。
あ、違った!
今のなし。
お父様を見つけたよ!
うん。
予想通り料理中のお母様とイチャイチャしてる……。
てか。
台所からピンク色の靄と、花が飛びでまくってるとこに、あたしに入って行けと……?
…………無理。
絶対絶対無理!
ていうか。
ぜぇっっっったい、イヤ!!
巻き添えくらいたくないの!
じゃ、することは一つ。
もちろん。
逃げる!
あ……。
違うよ?
あたし、お父様とお母様の幸せを思って、ここから離れるんだよ?
ほら。
【夫婦水入らず】って言うでしょ?
うん。
なんか違うような気もするけど、そんなことないさ。
よし、さぁ。
来たときと同じように、足音立てないよう。
去るべし!
「おはようございます。お嬢様」
「ふぃ……?! あ、あぁ。し、執事さん。おはよう」
…………びっくりした。
背後に立たないでほしいです……。
ついでに、変な声が出た気がするけど、小さかったから、聞こえてないはずだ。
と、言うか。
みんな見逃してくれる。
でも、たまにその優しさが痛い時もあるけどね……。
「どうかなさいましたか……?」
不思議そうな顔をする執事さん。
いや。
どうもしないよ?
ただね。
台所から出まくってる幸せオーラに近寄りたくないだけ。
なんて。
言えるわけないし!
「あ。えっとね……」
うん。
口で説明するのめんど――大変だから、あたしは台所を指さすことにした。
執事さんはあたしの指差した方を向いて、苦笑。
「もうしばらくすれば、おさまりますよ」
微笑む執事さん。
その余裕がかっこいい……。
「はい……分かった」
あたしが返事をしたら、執事さんは軽く礼をして、台所に入っていった。
……余計なこと言ってないといいけど…………。




