第二十三話 精一杯の笑顔
「う~ん。ギルデさんたちいないなぁ……。どこだろ?」
あたしはきょろきょろ、うろうろ。
閉まってるドアを開けたり閉めたり。
そんなことをしながら静まり返った廊下を進む。
探し始めて結構立つけど、どこにもいない。
なんでかな?
う~ん。
もしかしたらすれ違ってるのかも?
とか思ってたら、リビングの前に居た。
実はリビング。
調べてない……。
ううん。
違うの、調べないの。
だって、きっとお母様だけが居るだけだと思うから。
うん。
順番がおかしいのは分かってる。
ただ、お母様の無理につくった微笑みと、ふとした拍子に見せる悲しそうな顔。
痛みをこらえる顔。
何かを考えているようで、何も映していない瞳。
それを見たくないだけ。
それだけなの……。
本当はずっと傍に居たい。
でも。
今は、お母様に…………拒絶されてるみたいで、怖い……。
悲しくて、怖くて、苦しい。
話たいこといっぱいあるのに、いざってなったら、何も言えなくなっちゃう……。
だからあんまり、かかわってない。
本当は「綺麗なお花が咲いてるから、お庭に行こ?」「お散歩行こ?」って言いたい。
でも、きっと困らせる。
きっと、断られる。
だってお母様はきっと、そんな気分じゃないだろうから……。
お母様の気分を害しちゃダメ。
お母様には休息が必要んなんだ。
だから、そっとしておいてあげなくちゃ……。
わがままに付き合わせて、疲れさせちゃダメ。
わかってる。
わかってるんだ……。
そっとしておいてあげなくちゃ。
……あたしには、何もできないから…………。
でも、せっかくだし、『行かない』って伝えとこっと。
きっと『旅に出たい』って行った時みたいに、『そう』って言われるだけだと思うけど……。
――ガチャ。
あたしはそう思ってリビングのドアを開けた。
そしたら、いつも座ってるソファーから立ってるお母様。
しかも口元を両手で押さえて、目には涙。
かと思ったら急に嬉しそうな顔で走って、変わった服の若い人に抱き着いた。
で、抱き着かれは方は軽く目を見張った後。
ちょっぴり嬉しそうで、恥ずかしそうに微笑んで、恐る恐ると言った感じで、抱きしめ返した。
そして、その人は、波打つ金の長い髪に、赤い瞳で……。
「……って、お兄様?! なんで、さっきいなくなったじゃん!!」
あたしは驚いて、バンと握ってたドアを勢いよく開けてリビングに入った。
……うん。
何度見ても、あたしが帰って来る前に見たお兄様だ。
「ん? あぁ、ニコ。おかえり」
「え、あ。ただいま……?」
『お兄様』と顔が若干違うけど、浮かべた微笑みは変わらない。
どこもかしこも違うのに。
『この人はあたしのお兄様だ』って。
不思議だけど、本当にそう思った。
でも、あたしがそう納得する前に、お母様はそれに気づいたんだ。
だから泣きそうになってたんだ。
今、あたしにできること。
それはお兄様に、笑顔で「おかえり」って伝えること。
あたしはそう思う。
だから、今あたしが出来る心から、精一杯の笑顔で。
「おかえりなさい。お兄様……!」




