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変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第二章 変人公爵の娘
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第十五話

長いです。

 まったく、なんであたしが連れ戻されたの?

 おかしいでしょ?

 だって、注意だけなら連れ戻さなくても出来たよね?

 もうホント訳わかんない!!

「ニコちゃん膨れてる~」

「レティ……。大丈夫よニコちゃん。ちゃんとお話ししてくれたらすぐに出してもらえるわ」

 いやいや。

 何話すのさ!

 何もないでしょ!

 大体ウィルロットさんもセイドさんも、黙ってルファネスさんに無言の圧力かけてるんだよ?

 てか、あたし何も聞かれてすらいないんだけど? 

 もう『帰る』って言ったのに!!

「あ、そういえば。叔父上がニコちゃんに何を調べているのか聞いてほしいって言われてたんだった」

「え? お父様が?」

 そういえば最近、あんまり顔合わせてないような……。

 実は、お兄様がいなくなってからこっち、食事は完全に別。

 だって、落ち込んでる二人にどう声かけたらいいのか、分かんないんだもん。

「そうなんだ~。だからね、ニコちゃん。何を調べて、何を企んでるの?」

 え。

 ちょっと待って。

 なんでへらへらしてたくせに、『何を企んでるの?』から真顔になったの?

 意味ある?

 ないよね?

 ホント、この王様は無駄が多い気がする……。

 もういっそそのへらへら笑いを無くして、常に真剣な顔してればいいのに。

 まぁ。

 お父様の甥だから無理だよね。

 わかってる、わかってるよ。

「………………ニコちゃん。何かを見守るようで、あきらめたみたいな目をやめて……地味に傷つくから…………」

「あたし、企んでるって訳じゃないよ。ただ、旅に出ようかなって」

 あたしは隣に居るウィルロットさんに言う。

 もちろんルファネスさんは無視。

「そう。でもまたなんで旅に?」

「調べたいことがあるの。あとは実際に行ってみて、いろいろと……ね?」

「でもそのためには、父上と母上、父さんに、ギルデさんたちも納得させないと」

「そうよ。でももし、おば様と父さん、使用人sを説得できたとしても、おじ様が、ね」

 レティさんがそういって、困ったように笑った。

「え? ちょっと待って、俺の傷つく発言無視?」

 ルファネスさんがなんか言ってる。

 もちろん皆無視。

 でも、スティアナ様はやさしいから。

「お兄様、皆聞こえておりますわ。ただ、今はニコちゃんの問題を解決を急ぎませんと」

「そうか。う~ん、叔父上を納得させる方法かぁ……」

 そうなんだよ…………。

 この場に居る人皆考えてるように、問題はお父様なんだ。

 だがらどうやって納得させるか、なんだよ。

 お母様と執事さん、ギルデさんたちを納得させるのはできても、お父様はまず無理だろうなぁ……。

 なんかないかな……。

「そうだよニコちゃん! 俺にいい考えがある!」

 いつの間にかペンを置いていたルファネスさんが、声を張り上げて笑みを浮かべた。

 とりあえず手を止めるなって意味の、無言の圧力を二人からかけられたのは言うまでもないと思う……。


   ☆☆☆


 興奮した客たちが上げる声が響く闘技場。

 エドレイ王国中から猛者が集まる武術大会がここで行われている。

 ちなみに、私はその猛者の中から這い上がってきた、ただ一人の猛者と戦う。

 なんとも楽な仕事だなぁ。

 早く終わらせて愛しいリルとニコに会いたい。

 あぁ。

 いつもなら、決勝のギリギリまで家でリルとニコと一緒に居るのに……。

 あぁ。

 帰りたい……。

 でもなぁ。

 今日はノエルが尋常じゃないほど楽しそうだったんだ……。

 もう、嫌な予感しかしない。

 だから早めに出てきたんだが。

 闘技場に変化はない。

 ただ、見た感じ、参加選手たちがずば抜けて強いとは思えない。

 まったく、高見の見物は実に暇だ。

 去年だって待たせるだけ待たせて、決勝を勝ち進んできた奴は期待外れだったしな。

 あ、そうだった。

 申し遅れたが、私はエルウィス・セメロだ。

 本当は名と姓の間にもっと長いのがあったんだが、そんな仰々しい名など一貴族に必要無かったからな。

 王族をやめるときに捨ててきた。

 で、私は兄貴が作ったセメロ公爵に収まったわけだ。

 まぁ。

 私の事はこのくらいにしておこう。

 リルの話ならいくらでもできるが、どうやら今はそれどころではないようだ。

 異変と言う程ではないが、突然闘技場が静まり返ったからな。

 一応確認しておこう。

 私はそう思い、闘技場に目を向けた。

「……子供…………?」

 そう、闘技場の真ん中に小さな少年。

 少年の近くに大柄な男が倒れている。

 あの男……去年私に挑戦してきた男ではないか?

 もちろんすぐに片付いた。

 はっきり言って、雑魚だ。

 変人だ変態だって言われている私だが、伊達に【エドレイの鬼神】と名をとどろかせた男を執事として雇ってなどいないさ。

 まぁ、あの鬼。

 昔は私に凶器を投げてこなかったんだがな……。

 最近は子供達がいないときは必ずと言っていいほど、凶器を投げてくるんだ……。

 今日なんか、サロンでくつろいでいたらナイフとフォークが飛んできたんだからな。

 しかも言い訳が笑顔で『手が滑りました』だ。

 思いっきり狙っておいて何を言うか。

 って、言ってやりたかったが、言うだけ無駄だ。

 私はあきらめた。

 でもな。

 あいつときたら、そのあとすぐにそういった凶器を片手に持って磨き始めた。

 だから私は狙い撃ちされる前に家を出てきたんだ。

 あぁ。

 今朝のことを思い出してしまった……。

 ……なんであいつはあんなに楽しそうだったのだろう…………。

 まぁ、それは置いておいてだ。

 問題はあの少年。

 腰に剣を下げているが、剣を握っていない。

 ついでに男が血を流していないことから、剣を抜かずに素手でやったか、それとも鞘を着けたまま殴打したか……。

 ………………しかし、それをあの小さな少年が出来るだろうか……?

「閣下。お時間でございます」

「わかった」

 私はそんな疑問を抱えたまま、闘技場に上がった。

 そしてそこに待っていたのは先ほど見た少年。

 武装はしておらず、帽子に普段着。

 至って普通だ。

 これは剣を抜かない方がいいだろう。

 はぁ…………。

 出来れば、少しぐらい武装してきてほしかったな。

 まったく……。

 そんなことを考えていたら試合開始の合図がかかった。

 とりあえず相手の出方を見よう――と、思ったのもつかの間。

 目の前に少年が居た。

 繰り出してきたのは頭部を狙った回し蹴り。

 私はそれを屈んで回避。

 少年が頭部を狙ったのはおそらく、『本気でやれ』という警告だろう。

 まぁ、腹部を狙われてても躱したけどね。

 そんな感じでのらりくらり躱してたんだが、どうやら本気で行かないとやばそうだ……。

 なんでかって?

 試合開始とスピードが全然違うんだ。

 うん、私も年かな?

 にしても、この少年は無口だ。

 息も上がっていない。

 私かい?

 私は…………回避するので手一杯……。

 息も上がっている。

 このまま反撃するのはどうやら無理のようだ。

 しかし、少年は私に剣を抜かせない気らしい。

 だが、私とて伊達にこの武術大会で猛者を蹴散らしているわけではないからな。

 剣を抜かせてもらう。

 まぁ、鞘付きだがな。

 しかし、私が鞘付きとはいえ、剣を抜かなくてはならなくなるとは……。

 この少年を甘く見過ぎていたようだ……。

 だが、いつまでもこの少年の相手をしているわけにはいかないのでな。

 反撃に出させてもらおう。

 そう思い、少年を見た。

 どうやら少年もその気らしい。

 だが、私もなめられたものだ。

 鞘つきのまま剣を構えるなど、私以外に居ないと思ったのだがな。

 まぁ、いい。

 すぐに終わる。

 そう思い、私は剣を握る手に力を込めた。

 


 しかしその数分後。

 剣を弾き飛ばされたのは私だった。

 少年は不正などしていない。

 ただ、私ではなく少年が剣を握った時。

 勝負が決まったと言ってもいい。

 だが、この少年の使った剣術は王侯貴族が習う剣術。

 つまりこの少年は、貴族か?

 それとも、師が貴族……?

 まず、貴族がこの大会に出ることはない。

 なぜなら、公衆の面前で負けるなど恥だと思っているからだ。

 そして、気位の高い貴族が平民の弟子をとることもありえない。

 ではなぜこの少年はこの剣術を……?

 私がその事で悩んでいると、少年が小さく笑った。

「まだ気づかないの? お父様」

 そういって、かぶっていた帽子をとった。

「?! ニコ、ラ……?」

 なんでニコが? 

 確か、庭で楽しそうに洗濯をしていたはず……。

「うん。お父様全然気づいてくれないんだもん」

 ニコは困った顔で笑って言った。

 あぁ。

 いくら顔を見せなかったからとはいえ、愛しい娘をわからなかったなんて……。

 なんということだ…………。

「あ、あぁ。ごめんよ……。ニコ」

「ふふふ。じゃぁお願い聞いてくれたら許すよ?」

 背中で手を組んで、無邪気に笑って見上げてくる愛しい娘。

 私はこの愛しい愛しい娘をわからなかったのか……。

 相手がニコだってわかっていたなら、手加減していたのに…………。

 だが、愛しい娘がここまでしたんだ。

 お願いくらい聞いてあげなくては……。

「なんだい? なんでも聞いてあげるよ」

「ホント? ホントに本当?」

「あぁ。もちろん」

 さぁ。

 いってごらん。

 お父様は愛しい娘の願いぐらいいくらでも聞いてあげるよ。

「じゃぁ、あたし旅に出るよ!」

 なんだ、旅か。

 そうかそうか。

「気を着けて行くんだよ――――って、え?!」

 旅?!

 とんでもない!!

 まだニコは十一歳だぞ?!

「だって、『なんでも』聞いてくれるんでしょ? 」

「え…………。えっと――――」

「だから、旅に出るの! お母様も、執事さんも、ギルデさんたちも、みーんな『いいよ』って言ってくれたからね。後はお父様だけだったんだ」

 ニコはそういって嬉しそうに笑っていなくなった。

 ……そんな…………。

 私はあまりの事に立ち尽くしてしまった。

 そして、なぜか閉会式は現王のルファネスの『はい。武術大会終了!!』の一声で終了。

 私は呆然として、空を仰いだ。

 その時見えた客席に、髪を覆った女性と思しき者と、白髪の初老の男性、灰色の髪をした若い男がこちらを見下ろしていた。

 今の私はとても無様なのだろうな。

 そう頭でわかっていても、体がついてこなかった。



   ☆☆☆ 


 

 うん。

 上手くいった!

 お父様に『うん』って言わせたもんね~。

 たまにはルファネスさんも使えるんだね!

 だって、武術大会でお父様を負かすなんて、考えなかったもん。

 でも、お父様以外の説得も結構大変だった……。

 お母様は『旅に出たいんだ』って言ったら、『いってらっしゃい。気をつけるのよ』で。

 執事さんにはルファネスさんの提案を話したら、『ぜひ旦那様に実力を見せて差し上げて下さい』って、満面の笑みだった。

 ギルデさんたちは……すっごく心配して、お母様と執事さんみたいにうまくいかなかったよ……。

 だから納得させるのに一週間かかっちゃったもん。

 でも、お父様を納得させることができたのはよかった。

 ついでに、他の人みんなも今のやり取り聞いてただろうし!

 やっほーい!!

 って感じ!

半分以上がお父様視点ですみません。


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