第八話 王宮にて
『ごめんなさい。それは無理だわ』
なんかディティナ無慈悲な言葉が聞こえた気がする……。
その後。
あたしは王宮に。
ディティナはウィルロットさんの後から来た、人に任せた。
てか、取り上げられた……。
ちぇ…………。
ディティナさえいれば逃げ出したのに……。
人質に取られちゃった。
「それで、ニコラ。陛下はどこで?」
張り付けた笑顔のウィルロットさん。
口調はいつも通り。
「あ。う、うん。王都の裏道、だよ」
「ほぉ……。そうか、裏道。ねぇ…………」
「う、うん。そ、そう、だよ?」
「で。ニコラ、怪我は?」
「え? う、ううん。し、してないよ?」
「陛下はお怪我は、ございませんね」
「あぁ。でも、この状況に不満はあるかな」
『この状況』とは、利き手がペンを持った形で縛られて、そうじゃない方の手は胴体と一緒に縄で縛られて、椅子に。
そして、椅子に固定するためにその上からも縄。
足も椅子に固定されている。
だけじゃない。
何故なら椅子の後ろ脚に一本の縄が縛られているからだ。
気づいてると思うけど、縄はルファネスさんの首に巻きついてる。
もちろん、暴れたら締まるように結ばれて……。
でもね。
あたし、見てないよ?
ルファネスさんの首から外し忘れてた鞄の紐。
それ見て『ニコラは賢いね』ってウィルロットさんが笑ったことと。
鼻歌歌いながら縄を結んで輪っかを作って、そうじゃ無い方を引っ張ったら締まるように結んだこととか。
満面の笑みで『死にたくなかったら仕事して下さいね』って言って、ルファネスさんの首にかけたとことか……。
さっきのルファネスさんの、明るいふざけた口調のせいで、ウィルロットさんの表情が消えた事とかさ。
ウィルロットさんの目が射殺すように鋭くなったこととか。
………………帰って良い……?
てか、帰らせて。
あたし、このピリピリした部屋に居たくない!!
お願い。
誰か助けて!!!!
あたしが必死にそう願った。
だけど、部屋の雰囲気はピリピリしたまま。
あきらめかけたその時。
やっと救いの女神さま(?)が降臨した。
ドタバタと激しく足音を立てて、ドアを手で開ければいいのに、なぜか蹴破って。
「お兄ちゃんニコちゃんが来てるってホント?!」
「…………レティ……。ノックしなさい。鍵を開けるから」
え?
鍵かかってたの?
てか外れたドアがありえない音たててたんだけど?
明らかに木の板が倒れる音じゃなかったよね?
だって、金属っぽい音がしたし!
って、これメッチャ分厚いんだけど?!
塗装剥げてる!
メッチャ見えてる!!
鉄だよこれ!!
ま、まさか……。
あたしはドアを抑えていた金具のところを見た。
うん。
本来なら二つだけだよね?
でも、この分厚い鉄をつないでいた金具。
隙間無く、一列に整列してるんだ。
天井近くから床まで……。
……大変だっただろうな…………。
何人がかりで取り付けたんだろ。
「じゃ、行こっか!」
「え?」
女の人の声。
って、なんで足が床についてないんだろ。
変だな?
……床が動いてる?
って。違う!
誰かに抱えられてるんだ!!
だって、ワインレッドのドレス着た人の足が見えるし!
ん?
でもちょっと待って。
このちらっと見える足は、無骨な男の人のじゃない。
それに、靴は女の人用の、つま先がすらっとした赤い靴。
全身赤ですか。
目に痛いですね……。
……ピンク一色のあたしも人のこと言えないか…………。
なんて考えて現実から逃げてたら、どこかの部屋に連れてこられた。
「おまたせ。ニコちゃん拉致ってきたよ」
あたしを抱えてる人が言った。
で、その部屋の内装。
女の人用の、可愛い系のお部屋。
明らかに誰かいる気配がする。
どこだろ?
そう思って、あたしが床を見たまま考えてたら、床に足がついた。
やっと下ろしてくれたみたい。
まったく、誰?
あたしを荷物みたいに小脇に抱えて運んでくれちゃった人は!!
そう思ってワインレッドのドレスの人をみた。
これはこれは。
執事さんの愛娘様ではございませぬか?!
え?
ちょっと待って。
愛娘様は王宮でスティアナ様につきっきりって……。
…………そうだった。
ここ、王宮だった……。
忘れてた。
ううん。
忘れてたかったなぁ…………。




