第七話 副音声
「すみませーん! 誰かいませんかぁ~?」
はい。
あたしは今、高い鉄格子の前に居ます。
この鉄格子の向こうが、お城です。
「…………はいよ。って、なんだよ馬じゃねぇか……」
「いえ、あの…………下です……」
「んぁ? おぉすまん。で、なんの様だ」
顔を出したのは、低い声とちょっとだけ怖い顔のお兄さん(で、通じるのかな?)は、ディティナの手綱を持っているあたしに目を向けた。
あぁ、ごめん。
やっぱり修正。
ちょっとじゃない、超怖い……!!。
だって目つき鋭すぎるし!
顔に傷と焼印があるし、首に般若の入れ墨入れてるよ?!
ホントここお城の門だよね?!
あたしは勢いよく顔をそらして門の向こうに向けた。
うん。
間違いなくお城の門だ…………。
ルファネスさん。
さすがにこの人は門番にしちゃダメだよ……。
でも、とにかくこの超おバカ――じゃなかった。
超りっぱな王様を始末――……しちゃえ!
もうめんどくさい!
「えっと、バカぉ――……荷物のお届け物です」
「? バカオニモツ?」
怖い門番さんがなんかいってる。
もちろん怖いから聞かなかったことにするよ?
ルファネスさんなんて、笑顔のウィルロットさんにじっくりこってり絞られちゃえ。
そして二十四時間見張られて仕事してろ!
あら、ちょっと口調が荒くなってしまいましたわ。
おほほほほ…………って、違う!
なんで貴族のご令嬢みたいな感じになってんの?!
もう、キャラじゃないったら!
こうなったのも門番さんが怖すぎるせいだ!!
そうだ。
きっとそうに違いない!!
さっさと荷物押し付けて図書館行こっ――。
「ん、ここは………?」
ッチ。
起きちゃった。
「あ、そういえば! いきなり殴って気絶させるなんて卑怯だぞ!! 大体無抵抗の人間に――」
なんか言い出した。
しかも大声で……。
はっきり言っていい?
ダメって言っても言うよ?
「気絶したいの?」
「殺させたいか?」
はい。
ドスのきいた「殺されたいか?」はあたしじゃないよ。
もちろん門番さんでもない。
聞こえたのは鉄格子の向こう。
目の下もだけど、顔と、雰囲気。
全部が黒いウィルロットさん。
うわぁ…………。
ウィルロットさん、ノエルさん超激怒バージョンを降臨させてる……?!
どうしよう。
鳥肌と全身の震えが止まらない……。
こうなったらさっさと原因を引き渡すに限る!
あたしは手綱を離して、ルファネスさんをぐるぐる巻きのままウィルロットさんの前につき出した。
「ニコラは良い子だね。わざわざ捕まえて来てくれるなんて……ふふふ」
降臨中のウィルロットさんは、あたしの頭を軽くなでて、ルファネスさんを肩に担いだ。
「さぁ、陛下。十分息抜きできたでしょうから六日――いえ、八日徹夜などもちろんできますよねぇ」
(訳:さんざん探し回らせやがって。いい加減にしろよ? こっちっとらテメェのせいでろくに寝てねぇんだよ。仕事しやがれ)
「え、いや、六日とか無理だし。八日はなおさら無理だからね?」
ウィルロットさんの怒りに気づいているのか気づいていないのか。
場違いな明るさで返答するルファネスさん。
おそらく気づいてないんだろうなぁ……。
「ふふふふふ…………」
(訳:テメェが仕事さぼりまくって手におえねぇから俺らが呼び出されたんだからな。ふざけるのもいいかげんにしろよ?)
なんでだろう。
訳が怖い!
副音声が怖いよ?!
……こうなったら――さっさとここから離れる!
それにが限る。
あたしはディティナの手綱を握って踵を返した。
「どこに行くんだい、ニコラ?」
………………泣いていい……?
あたしはディティナにを見上げた。
何故か視界が歪んでるのは気のせいだよ?
『あぁ泣かないで。ニコラ』
とっても優しいディディナに胸がいっぱいになりました。
このままあたしを乗せて逃げてくれればいいのになぁ……。




