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変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
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第三話 困っていること

 ――あれから二年後。

 あたしは五つになった。

 その間に、お兄様にはめられて、公爵様を『お父様』。

 奥様を『お母様』で、若様を『お兄様』って呼ぶようになった。

 執事さんはそのままの呼び方で。

 そして実は最近。

 とても困っていることがあるんです。

 それは、親馬鹿過ぎて、ピンクばかりで室内を統一。

 さらには、壁紙まで花柄のピンクにするお父様とか。

 パステルカラーでびっらびらのドレスばかり買ってくるお母様とか。

 お父様とお母様がイチャイチャして、居づらくなった時、あたしをだしにその場を離脱するお兄様とか。

 執事さんが作るおやつが、すっごくおいしいとか。

 そんなことじゃなくて、もっと大変なの!

 毎日、夕飯の時間。

 絶対その話になるの。

 お父様とお母様の娘になって攻撃……。

 一年前まで何も言わなかったのに。

 ……って、確か会った直後に言ってた様な気が…………。

 でもね、そんな言葉だけじゃないの。

 書類を用意しているの。

 もちろんペンも。

 お父様とお母様は何がしたいの?

 この国ではあたしは人間だけど、隣の国は人間じゃなくて物なんだよ?

 殺されても文句の言えない奴隷なの。

 それなのに正式な書類を用意するって……。

 あぁ、そういえば。

 あたしがこの家の子になった翌日。

 お父様の運転で、お母様とお兄様と一緒に、屋根なしの馬車に乗った。

 それからお父様が、王様から任されている? この土地を見せてくれた。

 緑豊かな土地と、きれいな川。

 林では小鳥が歌う、楽しげな声。

 みんなキラキラ輝いてた。

 お父様は人に会うたびに馬車を止めて、あたしを『娘です』と、自慢するの。

 家では見れない、初めて会ったときの立派な公爵様の顔で……。

 あたしが唖然としていると、お父様の言葉を聞いたみんなは嬉しそうで、口々に『おめでとう』っていう。

 また馬車が走りだすと、農作業をしていたおじさんや、おばさんが気さくに話しかけてくる。

 お父様たちは、その人たちと、にこやかに笑って話してた。

 でも、あたしは知らない人だし、化け物だしで黙ってたの。

 そしたら、あたしの顔より大きなカボチャをくれたおばぁちゃん。

 『可愛いらしお耳の女の子だねぇ』って、くしゃくしゃの顔をより一層くしゃくしゃにして笑ったの。

 おばぁちゃんの笑顔は嘘じゃなかった。

 『もっと顔を良く見せてくれないのかい?』って悲しそうに言うんだもん。

 つい、『あたし化け物だよ』って言っちゃった。

 公爵家のニコラになったのに……。

 でもおばぁちゃんは、そんなあたしに、

『おやまぁ。あたしゃあんまり愛らしいもんだから、妖精さんかと思っちまったよ』って声高らかに笑ったの。

 だから『初めて化け物以外に思われた』って、ぽろっと口から出ちゃった。

 そしたらみんなして笑うの。

 隣にいたお兄様に、『どうして笑うの?』って聞いた。

 『ニコが気づいてないから』って笑いながら言ったの!

 理由を言うまで食い下がってやろうと思ったけど、お兄様にかわされちゃった……。

 お兄様は武術もだけど、あたしの言葉だって、のらりくらりと躱すんだもん。

 いつもお兄様と話してるとあたしが負けちゃう……。

 だからね。

 あたし決めたの。

 お兄様を言葉で言い負かしてやるって。

 だから土地? をみてしまって、お家に帰ってすぐ。

 執事さんに言ったの。

 『どうすればお兄様に言葉で負けないかなぁ』って。

 返事はすぐに帰ってきた。

 『お嬢様はそのままでよろしいのですよ』って。

 このままじゃダメだから相談してるのに!

 そして、あたしはお兄様に言葉で負けないように、お家にある本を読むことにしたの。

 だけどいくら呼んでもお兄様の言葉に勝てない。

 いつもお兄様が仕掛けた罠にはまっちゃう……。

 あたし、『たんじゅん』なのかな?

 それに、出会う人たちはみんな、あたし嫌いな長い耳を可愛いって言って、赤い目をきれいっていうの。

 とっても不思議。

 二つともあたしは大っ嫌いなのに……。

 でも、お父様とお母様、お兄様が『可愛い』って言ってくれるから、まぁ……いいや!

 って! 話脱線しちゃったよ!!

 実はね、さっき。夕飯だけって言ったでしょ?

 でもね。

 今日はお父様とお母様が、出会うたびに『娘になるってサインして!!』って言ってくるの。

 しかもすっごく必死に。

 本当に怖い。

 だから、あたしは庭の木に本を持って非難しているの。

 ここなら誰にも見つからないと思うからね。

 でも、お兄様が――。

「ニコ見っけ」

 ほら、下に。

 あれ居ない。

「下なんか見てどうしたの?」

 やや上。

 お兄様が人を小ばかにした笑みを浮かべている。

 すっごく腹が立つよ。

 今読んでる本を投げつけてもいいかな?

 いいよね。

 よし、投げよう。

 ケッテー!!

「それ投げたら。ニコ、おやつ抜きね」

 ……鬼ぃ様のばか…………!!

 あたしはおやつ抜きにはなりたくない!

 ということで。

 素直に投げようとしていた本を抱きしめましたとも……。

 いつかお兄様をぎゃふんと言わせてやる!!



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