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変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
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第二話 公爵一家

 次に、目を覚ました時。

 公爵様に抱えられて、大きなお家の前にいたの。

 訳が分からなくて、きょろきょろしたあたしに、公爵様は言った。

『起きたかい? 窮屈だろうけど、もうすぐ家に入るからこのままでいてね』

 公爵様のその言葉にあたしは頷く。

 そして、公爵様が扉を開けてお家の中に入る。

 少しして、髪が長くて、茶色のような不思議な目をした女の人。奥様と、公爵様に似た綺麗な青い瞳の男の子。若様。

 その後ろに女の人と違う茶色の瞳をした男の人。執事さんが現れた。

 執事さんは、あたしを一瞥し、どこかにいく。

 すこし悲しかった。

 でも、あたしを見た奥様は驚いた顔をしてたかと思うと、急に泣いて抱き着いて来た。

 訳が分からず驚いていると、しばらくしてどこかに行った執事さんが、泣いてる奥様に『用意が出来ました』っていう。

 奥様はその言葉で、『お風呂に行きましょう』っていったの。

 それで気づいた。

 執事さんはお風呂の準備をしに行ったんだって。

 まじまじと見ていたせいか、執事さんがこちらを向いて、ふわりとほほ笑んだ。

 捨てられてからこっち、こんなにやさしい笑顔を向けられたのは初めてだった。

 ぼんやりそんなことを考えていると、公爵様から若様に抱えられていた。

 軽く驚いていると、若様が笑う。

 心が温かくなる、陽だまりのような優しい笑顔で。

 そして、若様にお風呂場まで抱えて行かれ、奥様と共にお風呂に入った。

 お風呂から上がり、身なりを整えられ、奥様に優しく手を引かれ、共に広いリビングに行く。

 奥様は私をやわらかいソファーに座らせて、前のテーブルに執事さんが温かいスープと、お肉と野菜の挟まれたパンの載った皿を置いた。

 小首をかしげたあたしに、奥様が『お腹、すいているでしょう?』といって、それを食べるように勧める。

 渋るあたしに、若様が笑って、『大丈夫だよ。毒なんてはいってない』っていって、そのスープを一口飲んだ。

 この人は何の心配をしているんだろう。と思ったが、若様が笑ってスプーンにスープを掬って、こちらに向けてくる。

 その様子を公爵様たちはじっと見ていた。

 よけい食べにくいな。と思いつつ口をあけ、スープを飲む。

 おいしい。と素直な感想が口から洩れ、じっと見つめていた公爵様たちは嬉しそうな顔をしていた。

 若様が微笑んで、再びスープを掬って口元に持ってきたので、自分で食べれるよ? っていったら、若様はしばらくぽかんとして、笑いだす。

 つられるように公爵様が笑い、奥様が小さく笑って、執事さんは顔をそらし、笑いをこらえているのか肩が震えていた。

 なんで皆が笑っているのか解らず、小首をかしげる。

 しばらくして、若様があたしに『名前は?』って聞いた。

 ニコラ。と伝えると、若様は笑って『よろしくニコラ。君のお兄さんになるロジャードだよ』っていったの。

 あたしはどういうことか解らずにいると、若様はあたしの頭を撫でて、『これから僕たちの家族だよ』と優しい声で言った。

 その言葉が嬉しかった。

 なのに涙があふれて、視界がかすむ。

 ぬぐってもぬぐっても、それは止まらなかった。

 こうして、化け物だったあたしは、公爵家の娘・ニコラになった。

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