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変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
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第十三話 朝食

 あたしだって、毎食出てくるこのジャムに、厭きてた。

 でもね。

 あたしは言えなかった。

 だって、言ったらお母様が落ち込むって解ってたもん。

 だから言えなかった。

 それにお兄様ったら、顔色一つ変えずに黙々と食べてたから、解らなかったんだよ?

 まったく。 

 ここ数年で、悪戯大好き鬼ぃ様は、次期セメロ公爵らしくなった。

 それなのに、なんでかな……。

 すっごく良いことなのに、ちょっぴり寂しい。

 まるで、あたしだけ置いてけぼりみたいで……。

 このまま、お兄様が知らない人になっちゃいそう。

 それが、すっごく怖いよ……。

 時々、お兄様の髪が、収穫時期の小麦の色。

 金色に見えることがあるの。

 お兄様と話してるはずなのに、お兄様の顔が一瞬だけ、違う時があるの。

 それと同時に、背中に片方だけの黒い翼。

 本来それは、人間には絶対ないモノ。

 お兄様は本当に人間なのかな……。

 って、お兄様はどこをどう見ても人間よ。

 きっと、あたしの見間違いよ。

 うん。

 絶対、そうに決まってる!

 ――ぐぅうぅぅ…………。

 あ、お腹が鳴いた。

 そうだった。

 あたしお腹すいてたんだった……。

 椅子に座らずにそのまま、手に持っていたパンをかじる。

 誰かに見られたら注意されちゃう。

 でも、こんな朝早くだから誰も来てないし、お父様たちは寝てる時間だから大丈夫!

 うん。

 ちょっとだけ固いけど、おいしい。

 さすが、お母様と執事さんだね!

 あっという間に食べちゃった。

 もう一個食べたいなぁ……。

 けど、食べちゃうと、お腹がいっぱいになっちゃう。

 どうしよう。

 食べたい。でも、食べたら、お腹が……。

 うぅ。どうしよう。

 あたしは閉めた戸棚の前に立ち尽くす。

「どうしたの、ニコ?」

 突然後ろから声がかけられた。

 あたしは振り返る。

「おはよう。お母様」

 お母様は優しく微笑んでた。

「えぇ、おはよう。朝ご飯は食べたの?」

「うん。書いてあったからパンを一つ食べたよ?」

 あたしは、置き手紙が置いてある、テーブルを指さす。

 お母様はそちらに少しだけ目をやって、またあたしに視線を戻した。

「それだけでお腹いっぱいになった?」

「んと、もう少し食べたい。でも、もう一つ食べちゃうと、お腹が苦しくなっちゃうもん」

「ふふ。そうなの?」

「うん……」

「じゃぁ、母さんと半分しよっか」

 やわらかい微笑みで、お母様は楽しげに言う。

 そんな魅力的な提案を、受けないあたしじゃない。

 念のため、聞く。

「いいの?」

「もちろんよ」

 おかしそうに小さく笑いながらお母様が返事をした。

 やったね。

 もう少しだけあのパンを食べれる!

「ありがとうお母様!」

「そんなにおいしかった?」

「うん。とっても!」

 素直な感想をお母様に言う。

 お母様、すっごく嬉しそう。

 あたしも嬉しいよ?

 だって。

 おいしいパンを、無理してお腹に押し込まなくていいし、お母様がすっごく嬉しそうだもん!

 あたし、家族の嬉しそうな顔が、大好き!

 すっごく幸せだって、思えるもん!

「そういえば、ニコ」

 唐突に口を開いたお母様。

 あたしは喜びに浸ってて、ちょこっとだけ反応が遅れた……。

「なぁに、お母様?」

「今日は王子様と、お姫様が来るって知ってる?」

「え…………?」

「それといつものことだけど、エルーはお仕事。母さんはお城に行くって、知ってる?」

 えっと、なんでお母様もお城に行くの?

 あたしはまじまじと、お母様を見つめる。

「お父様は分かるけれど、お母様も?」

「えぇ。王妃様とお茶のお約束をしていたの」

 笑みを絶やさないお母様。

 そうだよね。

 たまには違う人とお話しするのもいいよね!

 お父様とお母様がお出かけ。

 やった!

 外に行く時に絶対聞く文句が、一人だけで済む!!

 今日は街に行こっと!

「……ってことは。このお屋敷にいるのは、あたしと、お兄様だけなんだ」

「そう。でも、執事さんたちがいるから大丈夫、よね?」

 もう、なんでお母様はそこで心配そうな顔して、疑問形で言うの?

「大丈夫に決まってるじゃん! あたし、もう九歳なんだからね!!」

「ふふ。そうだったわね」

「そうだよ! だから、お母様は楽しんできてね!」

「ありがとう。ニコ」

 お母様が、また優しく笑った。

 よし。

 じゃぁ、今日はお洗濯をじゃんじゃん終わらせて、街に遊びに行っくぞぉ!

 って。ことで、お母様のお部屋にいる。

 あたしは、カーテンと窓を開けて、シーツを変える。

 それから、洗濯するシーツとネグリジェを、持ってきたカートの中に入れる。

 よし、次はここから近い、お兄様のお部屋にレッツゴー!

AM2:00に投稿してます。

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