第十二話 ジャム
無言の戦い(?)のあと、ギルデさんが重い口を開いた。
「…………早く寝なさい」
うん。
わけわかんない。
ていうか、マーティさんとリディさんがいない。
くそ……。
逃げられた。
だったら。
ギルデさんだけは逃がさないんだから!
「……意味わかんないです」
「うん。解らなくていいよ。だから、早く部屋に帰って寝なさい」
「でも――」
「とにかく、早く寝なさい」
引きつった笑みを浮かべてたギルデさん。
それだけ言ったら、素早く踵を返して、近くにあった使用人用の扉を出て行く。
取りつく島すらない。
なんなのさ、まったく!!
でも、なんか嫌な予感がするし、ギルデさんの忠告に従おっと!
あたしは来た時と同じように、足音を消して、部屋に戻って寝た。
だって、それが最善に思えたから。
でもね。
さっき起きたばっかりなのに、また寝るなんて無理かな……。
なんて、思ってた。
だけど、ベットに入ったらすぐに眠っちゃった。
あっという間だったよ。
朝が来るのは。
そして、いつもと同じ時間にあたしは目が覚めた。
ただいつもと違うのは、お腹が鳴っているということだけ。
「お腹すいた……ご飯…………」
のそのそとパジャマから、使用人用の服に着替えて、部屋を出る。
向かう先なんて決まってる。
キッチン。
あたしのお腹を満たさなくっちゃ。
ということで。
小走りで廊下を進んで、キッチンについた。
「当たり前だけど、誰もいないや」
キッチンに、あたしの声がむなしく響く。
どうしよう。
『誰かいないときは、火を使っちゃダメ』って言われてるからなぁ。
料理できないよ……。
お腹すいたよぉ!
何か無いの?
あたしは、周りを見回した。
火を使わずに、食べれそうなものは無い、
そんなぁ……。
あたしはうなだれて、なんとなくテーブルを見た。
「ん? 紙?」
机の端近く。
小さな紙が、ガラス製のコップを重石代わりにして置かれてた、
あたしは、紙だけを取る。
『可愛いニコへ。
お昼も晩御飯も食べてないでしょ?
ニコは寝起きはぼんやりしているものね。
パンはいつもの場所よ。
思い出してね』
お母様の字。
あ、そうだった。
昨日。
執事さんとお母様が、二人で作ったっていってたけ。
あたしは、パンが入っている戸棚を開けて、中から、丸い形のパンを一個とる。
それから、その隣に置いてあるビンを手に取る。
蓋に書いてあった文字を読んだ。
「……『苺ジャム☆』…………」
あたしはそっとそれを元の位置に戻して、戸棚を閉めた。
いらない。
あれはもう、いらない……。
食べたくない……。
だってここ最近ずっと、このジャム食事に出てくるんだもん。
お母様とお父様は、とても気に入ってるみたいだけど……。
あたしはもう嫌。
甘いもの大好きだけど、ジャムは別!
だって、甘すぎるもん!!
でもね。
あれを使ったお菓子は大好き!
でもね。
ちょっと前に、お兄様が言ったんだって。
『またジャムか』って。
お母様、すっごぉく落ち込んでた。
でも、あたしね。
『お兄様、ありがとう!』
って、心から感謝したの。
口には出さなかったけどね。




