【プロローグ】:四畳半の朝と、新しい第一歩
ご覧いただきありがとうございます!
本作は『引きこもりニートのコンビニ籠城生活』の続編となります。
前作をお読みでない方でも本作単体で十分楽しめる内容になっておりますが、前作をお読みいただくと主人公の成長や小ネタをより一層お楽しみいただけます!
▼主人公・マモルの異世界での活躍(前作)はこちらから!
『引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜』
(※https://ncode.syosetu.com/n6261mf/※)
それでは、マモルの新しい社会復帰生活をどうぞお楽しみください!
窓から差し込む、やわらかな朝の陽の光で俺は目を覚ました。
「ん……っふぁ〜〜〜……」
身体を大きく伸ばしてベッド……ではなく畳から起き上がる。
敷いていた布団を丁寧にたたみ、押し入れの中へと押し込んだ。
部屋の隅に寄せて置いてあった小さな木製のちゃぶ台を部屋の中央へ運び、狭い台所に立ってやかんにお湯を沸かす。
やかんが温まるまでの間に、昨日近所のスーパーで買っておいた食パンをトースターにセットし、マグカップにはインスタントコーヒーの粉をスプーン二杯分入れる。
ピーーーッ!
勢いよくやかんが鳴り、沸騰した熱々のお湯をマグカップへ注ぐ。
香ばしいコーヒーのいい香りが、狭い四畳半の部屋いっぱいに広がっていく。
チンッ♪
タイミングよくトースターが軽やかな音を立て、こんがり焼けた食パンが顔を出した。
焼き立てのトーストにマーガリンをたっぷり塗りたくり、小さなお皿に乗せる。
皿とマグカップを両手に持ってちゃぶ台へ置き、正座で座る。
ピンと自然に背筋が伸びた。
異世界でのあの壮絶な生存劇が終わり、俺の現実世界での『自立生活』第一日目だ。
「……いただきます」
俺は誰もいない部屋で静かにそう言うと、焼き立てのトーストにガブリとかじりついた。
続けて熱々のコーヒーを口の中へ流し込み、ものの数分であっという間に平らげる。
「ごちそうさまでした」
皿とマグカップを狭い流し台へ運び、そのまま洗剤でキレイに洗う。
備え付けの水切りラックに皿とマグカップを戻すと、俺はもう一度大きく伸びをした後、両手で自分の頬をパンッ!と強く叩いた。
「よしッ!」
急いで着替えを済ませ、アパートの部屋を出る。
外へ出ると、朝の爽やかな光と心地よい風が全身を包み込んだ。
のんびりと街並みを眺めながら、近所を散策してみる。
これから自分が暮らしていくこの街を、しっかりと知るためだ。
「へー、こんなところに喫茶店があるのか……。なんかレトロで雰囲気があるな。よし、今度行ってみよう」
新しく住むことになったこの街は、雰囲気の良い喫茶店や小さな本屋、スーパーや日用品店などが揃っていて、なかなか使い勝手が良さそうな街だった。
(まずは……早急に仕事を探さないとな……)
そんな独り言を漏らしながらテクテクと歩いていると、目の前に見覚えのある青い看板のコンビニが飛び込んできた。
「ロー〇ソンか……」
なんだか、すごく不思議な気持ちだった。
少し前まで、自分は異世界のロー〇ソンで『店長』として死闘を繰り広げていたのだ。あれは間違いなく現実の出来事だったはずなのに、こうして普通の街中に立つロー〇ソンを見上げていると、まるで夢だったかのような錯覚に陥る。
店先のガラス窓には『アルバイト募集』の求人紙が貼られていた。
俺の情報は、公安がロー〇ソンのシステムネットワークに裏から介入し、過去の職歴やデータの類をすべて綺麗に削除してくれたらしい。だから俺が普通にバイトに応募したところで、異世界の一号店での出来事が店側にバレる心配はないはずだ。
(……仕事をするにしても、一度経験して慣れている事の方が入っていきやすいよな。……ちょっと話だけでも聞いてみるか)
俺はそのまま自動ドアの前へと足を進めた。
ピロリロリ〜ン♪
耳慣れた軽快な入店音が鳴り響き、ガラス扉がスッと開く。
「いらっしゃいませー!」
店内から元気な声が響いてきた。
レジカウンターの中には、若い女の子の店員と、初老の男性スタッフが二人並んでニコニコと立っていた。
(……うん、店内の雰囲気も良さそうだし……聞いてみるか)
俺はレジへと近づき、声をかけた。
「あのー……外の張り紙を見たんですけど、アルバイトの募集ってまだしてますか?」
俺の問いかけに、初老の男性が優しく目を細めて答えてくれた。
「もちろん! 君、コンビニでの仕事の経験はあるかい?」
「はい、あります」
「働ける時間帯は? 君はフリーターさんかな?」
「はい、フリーターです。時間帯はいつでも大丈夫ですよ。朝も昼も夜も一通り経験がありますので」
そこまで答えた瞬間──おじさんの目がギラリッと異様な輝きを放ち始めた。
「ほんとかい!!? そりゃあ願ったり叶ったりだ! いつから来れる!?」
「えっ!? ……え、あの……面接……とかはいらないんですか……?」
「いらないいらない! だって君、経験者なんだろ!? いや〜実はうち、スタッフが全然足りなくて本当に困ってたんだよ! 彼女も今月で辞めちゃうしさ!」
そう言って、おじさんは隣に立つ若い女の子を指差した。
女の子は「すみません……」というように申し訳なさそうに頭を下げた。
「まあ、彼女も大学生で今年卒業だからね。寂しいけど仕方ないよ」
おじさんはそう言って豪快に笑う。
女の子はまたペコリと可愛らしく頭を下げた。
(……かわいい子だな。だけど今月で辞めちゃうのか……)
少し残念に思いつつも、この超ウェルカム状態なおじさん店長に半ば強引に話を進められ、なんと俺は明日からこのコンビニでバイトとして働くことがあっさりと決まってしまった。
──コンビニからの帰り道。
俺はロー〇ソンで買ったお弁当の袋をフリフリと揺らしながら、最高にすがすがしい気持ちで家路についた。
「さあ……明日から、俺の『コンビニリハビリ生活』の始まりだ!」




