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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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45/66

事実


 オリオン王とカストルが談笑している頃、菜穂は悪夢の真っ最中であった。


 気付いたら何故か、狼の耳と尻尾のあるオリオン王に押し倒されていて、襲われている状況であったのだ。もちろん、既に服はひん剥かれて裸である。


 菜穂はくらっと眩暈を覚えた。




(何これー、この前の夢の続きー!? 嘘でしょう!)




 サーッと血の気を引かせた菜穂は、ジタバタと暴れ出した。


 夢なのだから菜穂の自由に出来る筈なのに、どんなに念じても不思議と狼オリオンは目の前から消えてくれない。菜穂は大いに焦った。




「いーやー、この変態狼王! 何すんのよー!」


「何を今更……。イイ事に決まってるだろう? お前を喰らうと何度も言ってるのに……この赤ずきんはやはり鳥頭か?」


「うぐぐぐ……もう、夢の中の王様のくせに悔しい!」


「ほう、その睨んでくる表情もうまそうだな」




 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた狼オリオンに、ベロッと顔を舐められた。




「ぎゃあっ!」


 ビクッと過剰に反応してしまい、悲鳴があがる。




(これは、夢なのよー! 夢なんだから、私のバカー、いちいち反応するなー!)




 赤ずきん菜穂は何とか逃げようとして、じたばたと手足を動かすが、狼オリオンにはどうしても敵わない。




 じーっと赤ずきん菜穂を見つめていた狼オリオンは、ゆっくりと顔を近づけていく。



「んっ!」



「赤ずきんは、どこもかしこも甘いな……」



 べろんべろんと長い舌で、顔中を舐められる。




(ひぇーっ!)



 声にならない悲鳴があがる。



 狼オリオンは、ニヤリと鋭い牙を見せて楽しげに笑いながら、赤ずきん菜穂を眺めた。




「ククッ……最高に美味そうだ……」


「頂きます」




 ニヤリと狼オリオンが意地の悪い表情で笑い、ガルルルと牙を出す。





「ちょっ……待っ……」


「待ったはなしだ……いくぜ」


「ぎゃあぁぁ……!」






***************






「きゃぁああぁぁーーーっ!」




 自分の大きな悲鳴で、菜穂は目を覚ました。


 一瞬、訳が分からず、キョロキョロと周囲を見渡す。




「あれ? 狼の王様は!?」




 菜穂は、パチパチと不思議そうに瞬きをしながら首を傾げた。


 目に映る周囲の景色は、先程と同じで木、花、草ばかりだが、静かで誰もいない。聞こえてくるのは、小鳥の鳴き声と小川の流れる音のみである。


 ちょうど花畑の真ん中で寝転がっていた菜穂は、ゆっくりと上半身を起こしながら、自分の姿を確かめた。




「あれれ? 裸じゃなくて、ちゃんと服着ているし……。今のは、夢? でも、これも夢の中だよね……?」




 菜穂は眉間に皺を寄せると、腕を組んで悩み始めた。




(うーわー、何だかどこまでが夢でどこまでが現実なのか分からなくなってきた……。とりあえず、さっきの狼の王様に襲われたのは夢だよね。それで、この花畑にいるのも夢。つまり、夢の中で寝ていて夢を見たってこと? 何だかややこしい……)




 うーんと唸りつつ菜穂は、ガシガシと頭を掻いて立ち上がろうとした。


 その瞬間、腰に痛みを感じて思わず座り込んでしまった。おまけに、何だか下半身にも違和感がある。




(何これー!? 何で夢の中なのに、痛みを感じるのよー! あの変態俺様サドエロ王めー)




 菜穂は心の中で悪態を思いっきりつきながら、手で腰をゆっくりと撫で回した。




「あぁ……湿布薬が欲しいよー」




 菜穂は、思わずポツリと呟いた。すると突然、腰に何かが貼られたらしく、スゥーッと腰の痛みが緩和され楽になる。


 服を捲って確かめると、いつの間にか湿布薬が貼られていた。




「これも、夢だから? でも、だったら初めから痛みを感じない方のがいいのに……。便利なのか不便なのか……」




 何だか釈然としないまま、菜穂は微妙な表情で首を捻った。




(それにしても……今、こうして夢の中にいるってことは、現実の私は眠っているということで……。せっかく目覚めたのに、王様にキスしまくられて気絶したってことかな……? うーん、そこら辺、記憶が曖昧だから分からないけど……こうなったのも、女神様のせいでもあるんだよね……)




「……あの、極楽鳥女神め!」


『呼んだー?』




 突然、パッと目の前に派手な虹色女神が現れ、菜穂はびっくりしてひっくり返った。




『あら、大丈夫?』


「だから、突然出てきて驚かさないで下さい!」


『えぇー? 私、菜穂が呼んだから来たのに………。私に何か用件があったのと違うの?』




 少々不満げにぷぅっと頬を膨らませながら軽く首を傾げる女神を菜穂はボケッと眺めていたが、ハッと思い出したように痛む腰を庇いつつ立ち上がると、女神に詰め寄った。




「王様に何て事を言ってくれたんですか! 酷いじゃないですか! キスされまくりですよー」


『?』




 じろっと女神を睨み付けてぎゃんぎゃん文句を言い出した菜穂は、ふと遠い目をすると力なく肩を落とした。


 女神は、何が何だか理解できない様子でキョトンと目を丸くしつつ菜穂を見つめる。




『えーっと、菜穂、一体どうしたのかしら……?』


「だから、王様に私を目覚めさせる方法を夢の中で伝えましたよね?」


『えぇ、もちろん伝えてきたわ。想いを籠めて熱いキスをしてあげてねって……それがどうしたと言うの?』


「だから、目覚めたらもうキスしなくていいじゃないですかー!」




 まるで何も分かっていないという女神の態度に、菜穂はカチンときて、ヒクヒク頬を引き攣らせ、途中少し頬を赤らめつつ恥ずかしそうに告げていった。


 一方、菜穂の話を聞いた女神は、不思議そうに首を傾げるのであった。




『まぁ、でも結果オーライだったでしょ? 菜穂、ちゃんと目覚めたんだもの』




 のほほんとした口調で述べた女神は、片手を宙に向けてゆっくりと円を描くように動かした。


 すると、女神が手を伸ばしている宙がパァッと虹色に光り輝き、何もなかった空中に突然映像らしきものが現れた。映画館並みに大きなスクリーンの登場である。




「何!?」




 菜穂が驚いて見つめていると、その映像が鮮明になっていき、女神とオリオン王の姿がはっきりと見えた。


 菜穂の耳に、二人の会話が聞こえてくる。




『これはね、オリオンの夢の中での私たちの会話よ。ちょっと時間を戻して流してみれば、私が何を言ったのか分かるでしょう?』


「こんな事もできるんですね、凄い……」




(ハデハデ極楽鳥でも女神様だけのことはあるんだ……。今更なんだけど、やっぱり本物の女神様なんだよね……)




 菜穂は、心の中で感心しながら、流れる映像をじっと見つめる。


 やがて、その映像は女神とオリオン王の最後の頃の会話に差し掛かっていき、女神の姿にやたらとノイズが走るようになってきた。


 それを見ていた女神が、思い出したようにポンと手を打つ。




『そういえば、最後の頃って、うまく言葉が伝わらなかった可能性もあるわ。オリオンにどのように聞こえたのか見てみましょう』




 女神がパチンと指を鳴らすと、オリオン王と女神の二人が映っていた映像が女神だけに変化した。しかも、先程まではっきり女神の姿が菜穂の目には見えていたのに、虹色の光だけになる。


 菜穂が、キョトンと首を傾げると女神が説明をしてきた。




『これは、オリオンからみた私の姿よ。だから、オリオンに私の言葉がどのように聞こえたか分かるわ』


「へぇー、いろいろと便利なのですね……」






 やがて、映像が問題の最後の場面になる。


 途切れ途切れに聞こえてくる女神の言葉を、菜穂は唖然とした表情で見つめた。




『……菜穂と貴方は、不思議な運命で……繋がっているわ。貴方が、菜穂を守り、菜穂が、貴方を守る……。忘れ……ない、で……。絶対に……離れ、ないで……。菜穂……を、捕まえ……なさ……い。さぁ、菜穂を、目覚め……させて……。熱いキスを何度も何度も……』




 菜穂は力なく、ガックリと項垂れた。




『あら、この何度も何度も……が、原因だったのかしら?』




 ゆるりと首を傾げ、微笑みながら語る女神の台詞に、菜穂は口をパクパクさせながら真っ赤になった。




『でも、キス気持ちよかったでしょう?』


「あー、それは……」


『気持ちよかったの? 気持ちよくなかったの?』


「いえ、気持ちよかったです……」


『だったら、いいじゃないの』




 しどろもどろ口を開く菜穂に、笑みを浮かべたまま女神は畳みかける。


 結局、素直に答えてしまった菜穂は、女神の満面の笑顔を見て、思わず肯定するように頷いてしまった。




「は、はぁ……」


『それじゃあ、何も問題なしって事で、私、そろそろ行くわねー? 菜穂もそろそろ起きたいみたいだから……』


「えっ?」


『また、何か聞きたい事があったら、呼んでねー』


「へ? あの……」


『菜穂、貴女とオリオンの相性は最高なのよ。何度もキスしなさいねー』


「へっ? な……っ、ちょっと、待って……」





 慌てて菜穂が女神を引き留めようとすると、ぐにゃりと視界が歪んだ。




(あれ? これって、目が覚めるの?)




 周囲の景色がどんどん歪んできて白くなっていく。


 菜穂は、女神が消えた空間をボーっと見つめながら首を傾げ、何だか明るい光を感じるのであった。



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