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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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誤解?


「えっ、何!?」


 菜穂は耳がキーンとなるほどの甲高い悲鳴の二重奏に、一瞬くらっとした頭を振ってから視線を動かす。すると、菜穂のいるベッドの横に3人の女性がいるのが目に映った。


「あ、ヘレさんとクリュさん……それと……?」


 気を失っている間に世話になったため、菜穂にはエウリュアレーが誰なのか分からず、初めて見る年配の女性に首を傾げる。


「神子様、初めまして。エウリュアレーと申します。陛下に神子様のお世話を頼まれた者です」


 エウリュアレーはピシッと姿勢を正すと礼儀正しくお辞儀をした。


 肩より少し長めの白髪の混じった藍色の髪を一つに束ねた小柄な老婦人の優しげな容貌に、菜穂はどこか親しみを覚える。


「初めまして。私は……」


 慌てて菜穂も挨拶をしようとしたが、その声はヘレネとクリュタイメストラによって遮られた。




『いやぁーん、お姉様、さすがナーオ様ですわ。わたくしの想像の上をいっています』


『クリュ、わたくしもさすがに驚かされましたわ』


『そうですよね、お姉様! まさか、ナーオ様から陛下を襲うなんて……。ナーオ様ったら、ワイルドで素敵ですわ』


『やはり、ナーオ様は素晴らしい神子様なのですね』


 手を取り合ってきゃあきゃあ騒いでいる二人を見て、菜穂は何を言われているのか分からないのでキョトンと首を傾げる。






『あっ、お姉様! いけませんわ』


『そうですわね、わたくしたち、お邪魔になりますわ』


 不思議そうに見つめてくる菜穂の視線に気付いたらしく、興奮しまくっている二人はハッと姿勢を正し深々とお辞儀をした。


「えっ、二人ともどうしたの?」


「ナーオ様、ごめんなちゃい……」


「わたくしたち、とんだ粗相を……」


 菜穂は突然謝られて訳が分からず、なおさら目を丸めてキョトンとする。


「ナーオ様、お邪魔虫、出ていくね。遠慮なく、ヤっちゃって下さいませ」


「わたくしたち、ナーオ様を尊敬、致します」


「「どうぞ、ごゆっくり」」


 ちらっちらっと意味有り気な視線を流しながらにっこりと微笑んだ二人がその場を立ち去っていくのを、菜穂はポカンと眺めていた。








「今の、何だったんだろう……?」


 ヘレネとクリュタイメストラが嵐のように去っていった扉の方向を見つめながら菜穂はポツリと呟いた。


「それは、あの二人が誤解したのだろう」


「え、誤解?」


 菜穂は、下から聞こえてきた声の主であるオリオン王を見下ろす。


「ヘレさんとクリュさんがきゃーきゃー何だか楽しそうに騒いでいるのは分かったけど、何を話しているのかは分からなかった……。王様は分かったんですよね? あの二人、何と言っていたんですか?」


「お前が私を襲っていると言っていたな」


「…………へ?」


 自分の問いにさらっと返答してきたオリオン王の顔を見つめた菜穂は、目を点にして大きく首を傾げた。


「えぇっと、私……今、妙な事を聞いたような気がしたんですけど……。王様、何か言い間違えませんでした?」


「だから、先程の二人は、ナホが私を襲っていると思い込んでいたぞ」


 何も気付いていない菜穂の態度に、オリオン王は少々呆れたように肩を竦めながら菜穂を見上げる。


 菜穂はポカンとしたまま脳裏にクエスチョンマークを浮かべていたが、ようやくオリオン王の言葉を理解したらしく、驚いた様子で目を真ん丸にした。


「えぇーっ!? 誰が誰を襲っているってー!? 何で私が王様を襲うっていうのよ! 襲ったのは王様の方じゃない。あんな騙し討ちみたいなエロエロキスをしたくせにー!!」


 興奮した様子でぎゃあぎゃあ叫んだ菜穂は、自分の下にいるオリオン王の胸を思わずぺしぺしと叩く。


「ほう、ナホはこういうプレイが好みなのか。だが、私はヤられるよりもヤる方のがいいのだがな……」


 叩いてくる菜穂の手を軽く握ったオリオン王は、楽しそうにニヤリと口角を上げた。


 菜穂は、オリオン王を真っ赤になって睨み付ける。


「この、変態!」


「そんなに褒められると期待に応えたくなるな……」


「うぐっ……」


 何を言っても勝てそうにない感じがして、菜穂は口を閉ざす。




(この俺様サド王め! いつかギャフンと言わせてやるから!)




 菜穂が密かに心の中で誓いをたてていると、オリオン王は退屈そうに欠伸を噛み殺した。


「ナホ……お前、本当に気付いていないのだな。私たちが今どんな体勢でいるのか、客観的に考えてみろ」


「えっ、体勢? 私、王様の上に乗ってマッサージをしていただけだけど……ん? あれ?」


 王様をぼんやりと見下ろして首を傾げた菜穂は、ハッとしたように目を大きく見開いた。


「あっ……あぁーっ!?」


 ここにきてようやく菜穂は気付いた。自分が上半身裸のオリオン王の上に跨いで乗っかっている事を……。しかも座っている位置がちょうどオリオン王の下腹部であり、見ようによっては二人がエッチなことをしていると勘違いされたであろうことを……。




(いやぁーっ、もしかしてエッチ中なんて思われちゃった? しかも私、王様の上にいるじゃないのー!)




「誤解よー! 私は痴女じゃないー」


 菜穂はヘレネとクリュタイメストラに誤解された事実を知り、ショックのあまり両手で頭をわしゃわしゃ掻きながら叫んだ。


「私は、ナホが痴女でも平気だぞ。むしろ、好みだな……」


 興奮して叫んでいる菜穂の下で、オリオン王はさらっと告げる。


 だが、オリオン王の言葉がまったく耳に入っていない菜穂は、叫び続けていた。


「私、ただマッサージしてただけなのー! だって、王様すんごく肩とか首とかぱきぱきに凝り捲っているんだもの! 職業病が思わず出ちゃっただけよ。だから、誤解なんだってばー」


「おいっ、少しは落ち着け」


「煩い! 誰のせいだと思ってるのよ。全部、王様が悪いんじゃないの!」


 じろっとオリオン王を睨みつけながら、菜穂は再び王の胸をポカポカと何度も叩く。


 そんな菜穂の手を取ったオリオン王は、ぐいっと菜穂を自分に引き寄せた。


「きゃっ!」


 途端に菜穂はオリオン王の胸の中に倒れ込む。


 難なく菜穂を優しく抱き止めたオリオン王は、菜穂の背をポンポンと落ち着かせるように撫でた。


「心配するな。誤解はすぐに解けるから大丈夫だ……」


「本当?」


 菜穂が不安そうな表情を浮かべると、オリオン王は安心させように極上の笑みを菜穂に向けるのであった。



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