22話
光力を吸収するにあたって急な負荷をかければ光力の流れがたちまち乱れ形が崩壊する。ならばその逆をすれば……パンッと思考をかき消す手の叩く音に顔を上げれば榛色の瞳と視線がかち合う。
「それじゃあ別の方面からやってみようか。ちょうど君のおかげで辺り一面に光力が浮遊している。今度はそれを掴む所からやってみよう。いつまで座ってるのほらやるよ!」
ボロボロだろうが関係ないとばかりに立ち止まることを知らない相手に釣られるようにはい!と返事をし立ち上がったのだった。
「まずは濃い場所の中央に立ってやってみよう。初歩の君でもそこなら掴みやすいからね」
先程からチクチクと嫌味を付けることを忘れない相手だけれど、不思議とそれに対して怒りが湧くわけでもなくそれが相手の性格なのだとあっさり受け入れたセルシアは両手を差し出し掌に僅かに光力を含ませ辺りに浮遊する赤色の光力の光度を感知すれば自身の光力と混合させるべく調和していく。
「いいかーい、色を掴めたら今度は一点に集めるんだ。いつまでも周囲に巻き散らかしたままは良くない。それは君の光力なんだ自分で収拾つけなよ」
今回は見守るのではなく指示をしてくれるみたい。そして痛い所を付く相手に内心苦笑いしながら頷き手元に集中する。
先程目の前で見守る相手の解説論に基づき、自身の解釈を入れるならば、球体の中には色の流れがあり私の|光力が渦に飲み込まれる形となったのよね。ならば今は逆の状況となっているのかしら。
浮遊する光力の流れを感知し調和した自身の光力が浮遊する光力の色と同じ光度にしたそれは浮遊する光力を掴んだ。掴んだ感覚を手元に感じれば数回指を動かしてみる。すると手元付近にある浮遊する光力が指と連動するように揺らめいた。胸がはずむのも束の間次に、付近だけでなくその周りに浮遊する光力に目を向ける。
球体が動ならばこの浮遊する光力は静ということ。ならば静に流れを付けてあげればいいということね。
そしてセルシアは導くように、添い、回転し、渦へと形態を変化させていった。すると周囲だけでなく光力の少ない場所も渦へと引き寄せられていき辺りは霧が晴れていくように鮮明に広がる。
引き寄せた手元の光力の渦が次第に大きくなりそれに反して集めたそれが溢れないようにするには制御が難しくなってきている。
最早自身の判断だけでは収拾がつかないそれに支える腕が振るえてきた。
このままじゃ制御できない、駄目、壊れてしまう。
僅かに震えるセルシアの手首にそっと手が添えられた。
「初めてにしてはまあまあだね。及第点をあげよう」
「……その口振りですと、まだまだ合格は遠いですね……」
「分かってるじゃん」
セルシアの皮肉に相手の口元がニッと上がる。そして添えられた手元から薄紅色の光力が溢れ瞬く間に見た事のない術式を編み込んでいく。
「それじゃ、セルシア」
術の発動と共に告げられたそれは手元の渦を術式が覆ったと思えばすぐ様球体に変わり引き上げられるように建物の遥か上へ、上空へと伸び上がったと思ったら上空に張り巡らしている薄紅色の術式へ吸収された。
球体が吸収された途端術式が眩く輝いた。
何箇所か発光するそれとは別に上空から色がハラハラと舞い降りてくる。
私はそれを手に触れる前には膝から崩れ落ちた。
「疲れたわ……」
ガラスの間にいるときと同様の疲れに、行儀悪いが仰向けの状態でぼんやりと上から振り続けるそれを眺めた。
太陽に反射し角度を変えてキラキラと光るそれにこの色はこんなにも美しく魅せられるのだと気付く。その光景を捉える蒼翠色の瞳もまた光の当たり具合により、蒼色から翠色に変化しながら澄み切った美しい天然の輝きを放っていた。
相手はいつの間にか姿を消していた。
また降り注ぐそれも止み、またいつもと変わらない光景が視界に広がる。
「結局、誰だか分からなかったわ。けれど、調べたいことがあるわ」
唇から漏れた声は静かに、だか確信をもって紡がれた。身を起こし緩やかに立ち上がれば建物へと足を向けるのだった。
この二人のやりとり癖になりそう、




