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情報屋”朧月”。
裏社会において、その名を知らぬ者は少ないと言える、凄腕の情報屋。
知らない物は何もないと言える程の情報の持ち主で、ハッキング、クラッキングなど、コンピュータの情報処理において、右に出る物は誰も居ないとされていた。
事実、今までに朧月自身の情報や、持っている情報が漏洩したことは一度も無い。
喧嘩を売る、ある程度腕に自身があるやつでも、眼中にない程コテンパンにする。
しかも、おまけ付きで。
しかし、そんな朧月が、ある時を境に忽然と姿を消したという。
それが、3年前。
何故、消えたのか誰にも分からない。
ただ、何も残さずに、誰にも告げずに、依頼を遂行のち、消えたと言う。
”何も残さなかった”はずだった。
「残ってた…か。はぁ…まぁいいか」
「いいのかよ。仮にも朧月だろ。何か処理とかしねぇのか?」
「そんなことしたって、もう知ってるやつが最低3人いるし、他には突破されないだろうし…いいでしょ。面倒だし」
朧月の正体。俺は、自分の趣味で始めたものがここまで大きくなるとは思わなかった。
正直、自分自身、どこまで広まってくのか興味半分恐怖を抱いていた。いつか正体がばれ、警察でも裏社会の組織でも、俺のことを知り何かしてくるのではと。
でもそのスリルが楽しかった事もあった。
「帰ったら、今度こそ消しときますよ。で、俺の正体を知って、もう消えた存在を今更…」
「息子が欲しいからだ。面白い子をな。そんで、興味もったんだ。いいだろう?どうする?」
「どうするも何も、拒否権無いって要が言ってたし。どうせ、マンションの方ももう解約してるでしょう?」
やることは徹底的にやりそうだ。
不敵な笑みを浮かべる理事長。こんな人なら、要も色々苦労してそうだ。
「分かってるねーパソコンとかは、全てこの理事長室の横の暁乃専用部屋に入れておいたから」
「は?」
「やりたいときは自由に来ると良いよ。因みに、部屋にはこの理事長室通らないといけないけどね」
「何をしてくれてんだ!マジかよ…」
ふふんとしてやった感満載でニタニタと笑う。
そんなこんなで、強制的に、親ができました。実際、親とも思いたくない人だけど…。
(学校には…多少…興味あったけど…)
強制とはいえ、学校に通わせてもらえる事は少なからず嬉し事だった。