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大方、内部の様子は学園のホームページから理解しているつもりだった。そう。”つもり”だったのだ。
何故、俺は今此処にいるのだろうか。様々な混乱が生まれる。
何故このようなところに自分がいるのか、何故このような場所が存在するのか、何故ここは幻想的なのだろうか、何故…何故…。
「どうかなされましたか?風間様」
「なるほど。こういうのを所謂金持ち学校または、お坊ちゃま学校というのか。金銭感覚を失いそうだ」
何を言ってるのか、といった目で見てくる要の顔はやはり笑顔で。ありえない世界が目の前に広がる俺にとって動揺は隠せなくて。
白亜の壁、石畳、純白のくすみすら無い、また純粋で透明度の高い水が流れる噴水。
左右対称にある木々は綺麗に整えられ、緑の中に何の不純物を生まれさせない一見穏やかで豊かな世界、一転してみれば整いすぎて寧ろ気持ちの悪さを感じさせる堅苦しい世界。
なんじゃこりゃ…、そう心の中で呟かずにはいられなかった。
照りつける日光によって、まさに作られた楽園は光を放っていた。これからこんな豪勢な場所で生きていくとなると気が遠くなり、早くも暗くじめっとした森の奥深くに引きこもりそうだった。
白亜の壁に囲われた此処、藤堂学園は都心部から離れた山奥に存在していた。それも、圧倒的な広さと存在感を持って。
巷では有名な学校らしく、また”美形ぞろい”の学校でもあると。それは男子校に限らず、女子校のほうもまた巷で噂の”美女・美少女ぞろい”の学校だと言われていた。それに加え、家柄も豊か。ピンからキリまでとはよく言ったもので、ほとんどが上流、一流企業のお偉いさん、政界を束ねる政治家などなどのご子息といった御曹司だった。
「頭が狂いそうだ」
第一印象からして、この学園は最悪であった。
そんな学園に呆けている合間に要は少々先をすすんでいて、後を追った。
「こちらが正面玄関となっておりますが、殆どが来客時にしか使われません。生徒は、寮から一番近い生徒玄関を使用しております。そちらに靴箱がございますので、どうぞそちらをお使いください」
もう、何が出てきても驚くまい。気にしたら負けだ。
だから、だから一つ、ツッコミを入れてもいいか。どうしてもなんだ。気にするなと言うのは自分だが、どうしてもだ。
「なあ要。何故…」
「はい」
「何故、ここの人間は異様にも金をかけたがる?何故だ?それが当たり前なのか?金持ちだからこそ金の管理に関してはうるさいのではないのか?」
どこの企業でも金を取り扱うに関しては慎重なはずである。企業には多くの人間がいる。だからこそ敏感になるものではないのだろうか。
のくせして、ここまできらびやかな理由は何なのだろうか。そこらの企業とは規模が違うのだろうか。いくらトップ企業が多くいるからと言ってもこれほどまでに金銭感覚を失わさせる建物があるだろうか。いや、実際に目の前にあるのだから有りなのか。
「ここは多くの寄付金によって正統に作られた学園にございます。多くの大企業、政界のトップのご子息が通うにあたり作られた彼らのための彼らに相応しい彼らによる学園なのです」
至極当然だ、というかのように熱く語る要。こいつの活き活きした顔を見るのは初めてかもしれない。しかし、となれば一つ疑問が出てくる。
「じゃあ、俺は通う意味…無いよな?何故俺なんだ?他にも入りたい奴は山ほどいるだろ。それこそ、たんまりと寄付してくる…やつらとか」
「理事長がお決めになられたことです。私には分かりません。これから理事長室へ向かいますので、理事長に直接聞いてみてはどうです?」
「…面倒だな」
俺は面倒ごとが最も嫌いである。既にこの事態に陥ってしまっているだけで色々と嫌な思いがこみ上げてくるというのに。
「では、参りましょうか。我が学園の学園長の下へ」
ポーンと鳴るエレベーターの扉が開く。何でもありか…と今更ながらに納得をした俺は乗り込んだ。
全ての始まり、ことの発端である理事長室へ。




