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月を仰げば。  作者: 水城
第一章
5/18

3

「よく眠れましたか?」


 当然の如く、要は毎日そう聞いてくる。

だからといって何もない。健康、体調管理の一環として聞くのだろう。しかしながら、寝る寝れない以前にまともな生活をしてこなかった俺にとってまず”寝れるのか”である。

夜に寝て朝に起きる。そんな生活、今までに考えもしなかった。

どことなく、重く、怠く、そんな感じしかしない。眩しい光を浴びせられ、毎度のこと目が眩む。


「疲れる」


 日に日に遠慮が無くなっていく俺は次第に、ポツリポツリとながら普通に会話をするようになった。面倒くなっていく丁寧語は初日にすっぱり取っ払った。


「それはそれは。しかしながら、学園での生活は朝に起きなければ始まりませんので、ご精進ください。これも全て貴方様の為ですので」


 ならばこのまま放っておいてほしいと思うのであった。何もしなくていいから元の生活に…と、以前募った興味などさっぱり消えていた。

このところ、本当に体が疲れきっている。休息の為の睡眠がどうも疲労の原因になっている気がしてならない。


 頭がぼうっとして頭が何を考えることもしない。要が言う言葉を理解してただそのままに動いているだけで。


「……思ったけど、学校って人がいて当たり前…」

「そうですね」

「…登校拒否って奴」

「ありませんよ。もしそうなった場合、私がお迎えに上がります」


 だから、どうしてそう…憎たらしい笑顔。

 そして何故俺は学校に行くのだろうか。一つ思ったのは、藤堂学園のことについて。

調べたところ、藤堂学園は全寮制の男子校。初等部は共学だが、その後中等部に上がると同時に二つに分裂。男子は男子、女子は女子と分かれるそうだ。

外部からの入学も普通にできるが、偏差値が異様に高いらしい。

異様に高いにもかかわらず俺はそんな学校に編入する。ぶっちゃけやっていけないと思う。すぐに登校拒否または勉学が追っつかず退学に、留年になるのではとしか考えられない。それにプラスして俺は人と対面するということが苦手である。

 どうしたらそれらを回避できるのか散々考えたが答えが見つからない。


 あれよあれよとしているうちに、日は俺の願いを裏切る。





「支度は整いましたか?」


 この堅苦しい言葉を聞くのは今日で最後と思いたい。

しかし、これからのことを考えればそれは不可能なのかもしれない。


 本日より、俺は”藤堂学園高等部”に入学する。



 それは何より俺の人生を変えることだろう。


 ああ、その憎たらしい笑顔を貼り付けた顔面を今すぐに殴りたい。




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