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月を仰げば。  作者: 水城
第一章
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2


「お目覚めになられましたか?」

「ん……あの…」

「何でしょうか?」

「こ、れからずっと朝に起きないと」

「いけませんよ?」


 にこやかに何の意図もなく、はっきりと。この人、遠慮も躊躇も容赦も何もない。

朝、俺が起きようもなければ布団を順に剥ぎ取り、終いには寝間着のまま風呂に突っ込まれ、水または熱いシャワーをかけられ、強制的に起こされる。


 ああ、その笑顔しか張り付けない顔が憎たらしい。というか今すぐ殴りたい。


「あと…二日」


 要が来て既に五日が経とうとしていた。となると必然的に”一週間”という期限も日に日に迫ってくるというもので、自分の日付感覚に呆れた。

今まで、日付や時間をほとんど気にせず生きてきた俺にとってカレンダーを時計を毎日見るというのはとても新鮮で慣れない。


「本日中に寮へ運ぶ荷物をおまとめ致しますので、必要なものを用意しておいてください。明日、入寮し、明後日に入学といたしますのでそのようにお願いします」


 ここ数日、朝から晩まで全ての時間と行動はこの要によって制限されている。

つまり、朝起きなければいけないということは、深夜の徘徊も無し。深夜になる前に就寝。仕事は、新規に依頼されたものは断り、今までにもらっていた依頼だけをこなし、それで終了。

食事は全て要が作り、何故かおやつというティータイムが毎日あり、きっちりきっかり3時に持ってくる。部屋の掃除も全て要だ。

何故そこまでするのだろう?と聞いてみたことがあった。

その時要は「理事長に仰せつかったのは貴方様の”世話”。つまりは身の周りも含め貴方様のこと全ての世話にございます」と当たり前のように言った。

そこまでする必要があるのか。問うてみたかったが、止めておいた。おそらく同じ言葉が繰り返し返ってくるだろうから。


 微睡み。うつらうつらとしかける自分に起きなければ死ぬぞ!とやりすぎなようで、要なのだから死にかけるだろうと自己暗示をかけてもそりもそりと体をゆっくりながら動かしていく。

 朝に起きるのは苦手だった。それは今までの習慣と、何故か朝が嫌いだからだ。

朝の日差しが好きではない。そのため、この部屋には日差し避けに優れた、灰色のカーテンをつかっている。黒では夏が熱いため、灰色である。

明るさも程々に調整してくれるため結構気に入っていた。


「おはようございます」

「おは…ようございます」


 五日も経っているのに未だに慣れぬ会話。

朝の挨拶というのも明らかに違和感を感じてならない。

どもりながら、語尾が小さくなりながらも挨拶を返していた。


 いつもいつも、要は丁寧語だったか、そんな感じの敬語であったためな居心地が悪かった。とはいえ、タメ口にするにはそこまで親しくないため遠慮がある。

ただ、少しこの固い口調が好きになれないだけだ。



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