プロローグ
むかしむかしアズマーノ王国にとても強い魔力を持った王子様が産まれました。
王子様が赤ん坊だった頃お城に穴を開けたり、滝のような雨を降らせたり、竜巻を起こしたり、大きなドラゴンを呼んでしまったりと色々なことがありました。
王子様が1歳になる前のこと、城に1匹の黒い猫が現れました。王子様は猫をたいそう気に入って、いつも一緒にいるようになりました。
黒い猫が現れてから王子様がお城に穴を開けることも、滝のような雨を降らせることもなくなりました。
そして黒猫は奇跡を起こした猫として、猫の妖精という名前を授けられました。
ケットシーとともに王子様は大きな怪我も病気もなく成長していきました。
ケットシーはいつも王子様の側で魔法の練習を見守っていました。
王子様が成人した頃、王国に魔族が攻めてきました。王子様は騎士を引き連れて魔族と戦いました。
王子様は得意な魔法で魔族を追い返すことができました。
王子様はいつしか王となり、国を繁栄させました。その傍らにはいつもケットシーがいましたとさ。
村に住む子供達相手に御伽噺をするおばあさんの横で、丸くなって寝ていた茶色の猫は顔をあげて欠伸をした。
(あぁー。あったなぁ。そんなこと。)
御伽噺を聞いていた子供達は王子様はカッコいいのかとか、ケットシー見てみたいとか騒ぎながらおばあさんの話を聞いていた。
茶色の猫は騒がしいのを気にしないまま、ゴロンと転がり丸くなって尻尾をぱたぱた振って手で顔を隠した。
(確かずっと昔、グリーンドラゴンのグリリが慌てて私の寝床に来て…)
『おい!ネコ!!起きろって!』
『ん?グリリ、どうしたの?』
『どうしたの?じゃねーって!最近東の国がうるさいから様子を見に行ったら、ヤベーガキが産まれてやがってよぅ。』
『あー。最近魔力の流れおかしかったもんねぇ。』
『おかしかったもんねぇ。…じゃねーって!あの赤ん坊ヤバいぞ。大人になる前に人間の街が滅びるぞ!ネコ、なんとかしてやれよ。』
『なんとかって言ってもねぇ。グリリがやればいいじゃん』
『あのなー。人間は俺のこと怖がるの。大きいからな。人間の街に行ったらアイツら石とか矢とか打ってくるから嫌なんだよ。痛くないけど汚れたくはないだろー?』
『うん。汚れるのは嫌だね。仕方ない。昼寝が終わったら行くよ。』
『お前の昼寝が終わったらは信じられねーんだよ!』
(って言って私のこと咥えてお城に放り投げたんだったなー。懐かしいなー。)
…グリリ。元気かな。会いに行こうかな。
そう、昼寝が終わったら。
茶色の猫はポカポカ陽気の中、御伽噺をするおばあさんの横で昼寝を再開するのでした。




