プロローグ
痛い。しんどい。苦しい。だるい。眠い。つらい。つまらない。
そんな数多の苦しみから唯一私を解き放ってくれたのが、このゲーム『光の聖剣物語』だった。
ただの村の子どもだったルークが伝説の聖剣を岩から引き抜いた事で、勇者となる。勇者ルークとその仲間たちが、魔王に脅かされた世界を救うというもの。
プレイヤーはルークとして、このゲームをプレイしていく。
名前は自分の名前に変えられるけど、私はルークのままプレイをした。
私の名前は光。光という意味を持つルークという名前の少年は、ゲームの世界の私の分身であり、憧れであり、友だちのような存在だった。
ゲームの中では、私はモンスターも倒せるし、仲間と談笑だって出来る。船や飛行船、魔法の絨毯でどんな場所にだっていける。
ゲームは、狭いこの病院の個室から広い世界を見せてくれた。
ルークの優しくて勇気のある前向きな姿勢も、どんどん強くなって沢山の村を救っていく姿も本当にわくわくした。
でも、最終章。ルークと仲間たちと一緒に魔王を倒そうというところまで来た時、私の体調が急激に悪化していった。目を開けているのもしんどくて、自分でももうすぐ最期が訪れるということが嫌でもわかる。
そうして、今日この日がやってきた。
「光、頑張ったね。偉かったね。大好きだよ。」
母は何度も何度も私の体を摩る。
母の温もりを感じながら、私はすっと意識を手放していく。
また、お母さんの子どもに生まれてくるから。
泣かないで。そっと母の手を出来る限りの力で握り返す。
あぁ、これで終わりか。案外長かったな。
やり残したことは沢山あるけど。あ、そうそう。最後に魔王……倒してみたかったな……。
お母さんとのくだりは辛過ぎて書くのを何度もやめそうになりましたが、光が幸せな家庭に居て病院という小さな個室の中でも心豊かな優しい人間だという事を書く背景として必要で書きあげました。
光のお話をこれから見守っていただけますと幸いです。




