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「ごちそうさまでした」
残った割下にご飯追加の雑炊も堪能して満腹感でいっぱいだわ。隣の鈴ちゃんもたくさん食べたせいかうとうとしている。
片付けをする炎青さんを手伝おうと私もお皿を集めていると、同じく手伝おうとしたクロード様と指が触れた。
「あ……!」
思わずビクッとしてしまい、お皿を落としそうになったところを鈴ちゃんが素早くキャッチする。
「あ、ありがとう、鈴ちゃん」
「にゃっ」
うとうとしてたのに、見事な反応。さすが小さくても獣人ね。
それにしても、指先が触れただけなのにあんなあからさまな反応してしまう私はダメね……。今だってクロード様を見れないし、見ない振りをしてしまっている。
こ、これはもしかしなくても……。
「片付けはこっちでやるから、手伝うならお前は皿洗いやってくれ」
「は、はい」
「じゃ、ボクも~」
「てめえはうるさいだけだから大人しくジュースでも飲んでろ」
厨房に向かう私についていこうとしたディーネをサラムさんが掴み、椅子へ放り投げる。頬を膨らませるディーネに心の中で苦笑しながら、私はエプロンを借りて皿洗いをしている炎青さんの隣に立った。
……エプロンが可愛い猫モチーフなのは確実に鈴ちゃんを意識してるわよね。炎青さんらしいといえばらしいけど。
「お客さんに手伝ってもらって悪いねえ~」
「量が多いですからね、これくらいは手伝います」
今回も無料でご馳走になってしまったし。お詫びとはいえ、私はいつ炎青さんにお金を払って食べる日がくるのかしら?
もこもこの泡で洗っていると、声を抑えて炎青さんが切り出した。
「ね、ウンディーネとはいつ契約したの?」
「ディーネですか? 私が追放されてから結構早くに……半年ほど前でしょうか」
「……ってことは、僕らが初めて会った時には契約してたんだね」
あれ、炎青さんは私が水の精霊と契約していたことを知らなかったの? だとすると、これは原作にない展開になっているということ?
疑問符を浮かべていると、洗い物のお皿と鍋を全て片手に詰んだサラムさんも加わった。
「今まで俺達に姿を見せなかったってことは、意図的に避けてたんだな」
「すみません……私もその辺りの理由は聞いてなくて……」
「別に、お前を責めてるわけじゃねえし謝る必要もねえ」
舌打ち混じりに呟くと、サラムさんは改めて私に向いた。
「お前、どうやってウンディーネと会った?」
「ええと……赤華の花弁が湖に散っていて、それを除去してほしいと頼まれたことがきっかけでしょうか」
あ、川で声を掛けられたのが先だっけ。あの時は幽霊だと思って逃げてしまったのだけど……。
懐かしいなーと思いながら洗い物を続けていると、サラムさんは眉を寄せて思案するように視線を落とした。
「赤華……?」
「毒のある華みたいです」
「知ってる。別名偽椿だろ」
「偽、椿……?」
「ほら、椿の花があるでしょ。赤華って椿に似てるんだよね、だからうちの国では偽椿って呼ばれてるんだ」
へえ、私は花びらが散った状態でしか見たことないけど椿に似ているのね。椿はとても綺麗なのに、そんな偽物があったら悪いイメージがついてしまうじゃない。
「ディーネがどうかしたんですか?」
「原作では契約はおろか登場もしなかったからね。祈祷祭で名前が出るくらいのキャラが君と契約したっていうからビックリしたよ」
「あ……やっぱり原作にはない展開だったんですね」
「ほら、そもそも精霊契約は限られた人しかできないでしょ。本来のレイラ・ルーリエでは出来ないはずだし」
そういえば、ディーネもそんなこと言ってたっけ。自分で心が綺麗とは思わないけど、復讐とか悪巧みや人を陥れようとかは考えていないもの。
……というか、そういう人の方が多いんだから基本的には誰でも精霊使いになれるんじゃないかしら。ディーネは女の子なら誰とでも契約しそうな気もする……。
「お前が目をつけられたのは、魔力量が多いからだろうな」
「なるほど……って、だから私の思考読まないで下さい……」
「読まなくても顔に出てんだよ。あと、読んでるんじゃなくて伝わるんだ、そこ勘違いすんな」
「顔にって……私、魔法掛かってるんですけど」
陛下の魔法で感情が制限されてるんだから、表情にはほぼ出てないはず。顔に出るわけないのだけど……精霊って敏感だからそう見えるのかしら。
「何言ってやがる。お前に掛けられた魔法、解け掛かってんぞ」
事も無げに言われ、私は言葉の意味がわからず目を瞬かせた。




