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泰助の思い



「もうすぐよ… あの角を曲がったら私の家」


マリアは泰助の手を引いて自宅に向かい歩いている。

泰助はマリアに言われた通りマリアを自宅まで送っている。

そうしてマリアの家へと到着したが、その家を見てさすがの泰助もその大きさに驚いた。


「流石に凄いな… あんな大きな家で住んでるのか…」

「ウフフ… 別にそこまで大きくないわよ」


驚いている泰助の顔を見てマリアは愉快と言った感じで笑っている。


「それじゃ… 俺は帰るわ」

マリアを送り届けたので泰助が帰ろうとしたとき、


「待って… 部屋に招待するわ。 お茶でも飲んでいって…」

そう言ってマリアは泰助の手を引いて門をくぐり玄関の方へと歩き始めた。


「俺なんかがいきなりお邪魔していいのか?」

「大丈夫、泰助は私の彼氏なんだし… それに…」


マリアは何か言いかけたところで話を止めたが、とにかく大丈夫だと言い泰助を家に招き入れた。



「お帰りなさいませ」

家に入るといつものようにお手伝いさんが出迎える。


「あら、今日はお連れ様もいらっしゃるのですか…」

「そうなの… 後でコーヒーと紅茶を持ってきてくれるかしら」


「かしこまりました」


「泰助、行くわよ」マリアはそう言ってスタスタと歩いて行く。泰助はお手伝いさんに一礼してからマリアの後をついていった。大きな玄関ロビーから繋がる階段を上って行き二階に到着すると沢山の部屋が並んでいる。


「こっちよ」マリアは部屋の扉を開けて泰助を部屋に招いた。


流石に金持ちのお嬢様の部屋だな…

泰助は部屋を見回し感心する。部屋には可愛いぬいぐるみやカラフルな小物もなく、大人っぽい雰囲気がする高そうな家具が並び、机やベッドも凄く高級感が漂っている。西洋人の血を引くマリアらしく机や棚にはフォトスタンドが置かれ、その写真を見ているとマリアの成長がよく分かった。

部屋はかなり広く壁際にテレビが置かれ、その前にテーブルとソファーが配置されていた。


「そこのソファーにでも座って…」


マリアは扉付近で突っ立っている泰助にそう言ってソファーに座らせた。

二人でソファーに座り少し落ち着いた頃にお手伝いさんが二人の飲み物を持ってきてテーブルに置くと、「それでは…」と言って静かに部屋の外へと出ていった。



「どう、泰助… 私の部屋は?」

「凄く落ち着いた雰囲気の部屋だな…」


「あなたが最初よ… この部屋に入った男の子は…」


泰助はそうなのかと言った表情をしたが、あまりそのことに興味は無いと言った感じでいた。

取り敢えず出されたコーヒーでも飲もうかと、泰助がコーヒーカップに手を伸ばそうとするとマリアはその手を掴んで指を絡ませてぎゅっと握る。

そして泰助の目を見詰めながらマリアは言った。



「泰助… 私は満足出来たら態度で示すと言ったわよね…」

「そうだな…」


そう言うとマリアは泰助の手を離し妖艶な眼差しを泰助に向ける。

そしてその手をゆっくりと自分のブラウスに持っていき、ゆっくりとボタンをはずし始めた。


「これが私の答えよ…」


ゆっくりと… ゆっくりと… 一つはずしてはもう一つ…

ウットリとした艶めかしい表情で顔を紅潮させながらマリアは自分のブラウスを脱いでいった。


「ちょっと確認したいんだが…」


マリアが脱ぎ始めると急に泰助がマリアに話しかける。


「どうしたの?… 泰助の望みを叶えてあげるのよ…」

「ということは… マリアはもう満足できたんだな?」


「だからこれが答えよ…」

「だったらこれで契約成立だな」


「ウフフ… そうね、契約は成立したわね…」

「わかった… 悪いがマリア… お前との関係は今日で終わりだ」


「……………どういうこと?」



マリアは泰助が何を言ってるのか意味が全く分からなかった。この3週間泰助はマリアの希望をことごとく叶えた。マリアはそれを見て泰助がどれほど自分を欲しがっているのかがわかり、そんな泰助の態度に絆されてマリアは泰助ともっと深い関係になることを決心した。



そんな泰助がいよいよその望みが叶うとなった今、自分との関係を終わらせると言う。

だったら今までのあの態度は何だったの?… マリアはどう考えても理解できない。


「私の胸を好きに触れるのよ… それがあなたの目的だったんじゃないの?」


「マリア… 俺は対価を払っただけだよ。お前が満足できるほどに俺は十分な対価を払った。だからもう俺はお前の言うことを聞かない。」


「…言ってることの意味が分からないんだけど…」


「マリアは俺に会いに来たときにオッパイを揉ませてくれた。先払いと言って…。それに対して俺はその分の対価を払わねばならない。お前の本当の恋人になるなら払わなくてもいいかもしれないが、俺にそのつもりはない」


マリアはその言葉を聞いても唖然となったままでいる。


「人に与えたならその分の対価を貰う、与えられたのならその分の対価を払わねばならない… 当たり前だろ?」


泰助は真剣な顔をしてマリアに話している。



泰助は以前、佳蓮が秀雄と付き合うために佳蓮に頼まれて色々と努力した。だが結果として佳蓮はオッパイを触らせるという対価を払ってくれなかった。それで泰助は佳蓮に恨みを持ったが、泰助の考え方からすればそれが普通である。



泰助は自分に対しても人に対しても同じように思っている。

与えれば貰う、与えらえれば払う…


教室にいきなりやってきたマリアは自分のオッパイを思いっきり揉ませた。泰助にとってそれは非常に価値の高いことだった。何せ最高のSSランクのオッパイをしかも思いっきり揉む…

その対価としてはそうとうのものを払わねばならない… そして泰助は考えた。


「マリアを十分に満足させることができればそれで釣り合う対価となる」


だから今日まで泰助はマリアの言うことを全て聞き入れてそれに従ってきた。

そして今日遂にマリアから満足したという言葉を聞くことができた。

泰助の理論から言うとこれで先払いされた契約料に対して十分な対価を支払ったことになる。



マリアは放心状態となっていたが、ふと意識を取り戻し泰助に詰め寄った。


「泰助は… 私の事が好きじゃないの…」


マリアは相当焦っている… あの気位の高いマリアの瞳に涙が滲んでいる。


「マリアのことは嫌いじゃないし好きだよ…」

「ならどうして………」


「マリアには悪いんだけど、俺が求めるものを持っているのはマリアじゃなくて他の人なんだ」

「泰助は最高のオッパイを求めてたんじゃないの? 私が最高なのよ?」


「…最高なものと欲しいものは違う… なんとなくそれが分かった…」

「でも泰助… それはあんまりにも無責任じゃないの?」


「どうして? だったら聞くがどうしてマリアは俺に近付いた?」



泰助にそう聞かれたマリアははっとした。

泰助に近付いた理由… それは自分にふさわしいイケメンの彼氏が欲しかっただけ…


決して泰助の人柄を気に入って泰助を求めたわけではない。

そんな理由で近付いてきたマリアを泰助が本気で好きになる必要もない。

泰助はそれを言いたかった。


「でも…今は違う… 今は本当に泰助のことが好きなの」


マリアは泣きそうな表情で泰助にそう訴える… そこには気丈なマリアの姿は全く見られない。


「俺も半年前だったらこのままマリアと付き合ってたよ。別にマリアのことが好きじゃない訳じゃない」


「だったら…」


「だけど今は欲しいと思う女の子が別にいるんだよ… だからマリアとは付き合えない」


マリアは悲しみの表情を浮かべていたが、泰助の話を聞いているうちにその表情をだんだん冷たく険しいものに変えていった。


「私がそんなのを許すと思ってるの?」


マリアは刺さるような鋭い目つきで泰助を睨む。


「許すも何も俺は思ったことをする。マリアに許可をもらう必要もない」


泰助ははっきりとそう言い切った。その表情はマリアを馬鹿にするものでもなく自分の思っていることをはっきりと言っただけといった感じでとても明るい。


「私は泰助を諦めない… 絶対に奪う」

「だったらやればいい。俺は俺の思った通りにする」


そう言って泰助はソファーから立ち上がり鞄を手にして部屋を出て行こうとした。


「ま、待って…泰助。本当にもう私の傍にはいないの?………」

「ああ、でもマリアのことは嫌いにならないよ」


泰助はそう言ってそのまま部屋から出ていった。



一人部屋に取り残されたマリアは呆然とする。

最初は泰助に対して激しい怒りを感じたが、時間がたつごとにそれは寂しさに変っていった。


マリアは泰助を失って感じた。

自分が得ていたものはかけがえのないものだったと…



泰助は夕闇の中を歩いて家路に向かう。そしてその途中ずっと考えている。


これでマリアとはけじめがついた。このままもう一つのけじめもつけるか…



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