尾賀さんと一緒にアルバイト
夏休みに入って5日目、尾賀さんから電話が来た。
「柳瀬君、久しぶり」
「ああ、久しぶりだね」
「前に言ってたバイトのことなんだけど………」
尾賀さんからの電話は、以前言っていた尾賀さんの親がやっている本屋でのアルバイトの件について。
2日後からバイトに入って欲しいということと、最初の日は朝8時に本屋まで来てほしいということだった。
「ごめんね、柳瀬君に無理いっちゃって…」
「それは全然いいんだけど、ホントに俺でいいの?」
「柳瀬君は元気あるから大丈夫だよ」
「そんじゃ頑張るわ」
「ちゃんとアルバイト料も出すからね」
泰助は思った… 「金はいいから乳を出せ」 …出す訳ねーか。
そんな感じで泰助は人生初のアルバイトをやることになる。しかもおっぱいクイーンの横で…
そしてアルバイトの当日、泰助はジーパンに白地のシャツという軽い格好で尾賀さんのいる本屋へ向かった。まだ開いていない本屋の前に行くと尾賀さんが立っていて泰助を出迎える。
「柳瀬君、今日から頑張ってね」
「任せといて」
それから尾賀さんは泰助を連れて裏口から本屋の中に入ると、尾賀さんの両親とアルバイトの人がいそいそと仕事をしていた。
「お父さん、この人がクラスメイトの柳瀬君」
「君が柳瀬君か… なかなかのイケメンだな。 奈瑠美、彼が初体験の相手か?」
「お、お父さん! そんなわけないでしょ!」
「違うのか? 柳瀬君は彼氏だろ?」
「だから違うって!」
「柳瀬君… ちょっと…」
そう言って尾賀さんのお父さんは泰助を近くに来させた。
「君、奈瑠美のおっぱいの触りごこちはどーだった?」
「…い、いや~ まだ触ってないっす…」
「なに? あのおっぱいを見て何とも思わんのか?」
「そ、それはもう、ぜひ触りたいとは思って…」
「お父さん、いいかげんにしないとお母さんにバラすよ?」
「柳瀬君、しっかり働いてね…」
それから尾賀さんのお母さんやアルバイトの人たちに紹介されて今日からいよいよアルバイトが始まる。尾賀さんの家はビルになっていて、1Fと2Fが店舗、3Fより上が尾賀さん宅となっている。
結構大きな本屋だが、普段だいたい4人でやっている。尾賀さんの両親が旅行中は泰助と尾賀さん、それにアルバイトの大学生の人2名で切盛りする予定となっている。
泰助は今日1日、お父さんに連れられて仕事の内容を説明してもらうこととなった。
「細かな仕事は順に教えていくからぼちぼち覚えていってくれればいいからね。それに大学生のバイトの人たちは皆結構長いから、わからないことがあればあの人たちに聞いてくれ」
「はい、わかりました」
「うむ、やっぱり柳瀬君は元気があって良いイケメンだな」
「いやー、そんなことは…」
「で、奈瑠美のおっぱいどー思う?」
「あれは最高っす」
「柳瀬君… 君若いのになかなか見る目があるね…」
俺、このお父さん大好き…
「それじゃあ仕事の概要だがね………」
仕事の内容は書籍の入荷、出荷、倉庫整理、展示台の設置、後は店内業務だ。
特に週刊誌は回転が速いし、ほぼ毎日何らかの雑誌が発売日となるので仕事が煩雑となる。
入荷や出荷、伝票の整理などは大学生バイトと尾賀さんに任せればいいみたいで、俺は運搬などの力仕事をすればいい。開店前や閉店後の作業が結構あるのは意外だった。
俺になじみの深い漫画本コーナーだけでもこれだけ多くの種類があるのかとびっくりするが、趣味の雑誌や旅行、グルメなど本の種類の多さに驚いた。
取り敢えず俺は倉庫の本整理や運搬、店内での陳列、あとは客が散らかした本の整理がメインの仕事だ。尾賀さんの両親が旅行に出かけるまでの1週間で大まかな仕事の内容を掴まなくてはならない。
それから毎日、朝から本屋でアルバイトを行う生活が始まった。本屋の閉店は午後8時、途中休憩を数時間とるが、ほぼ一日中本屋でいることとなる。
最初は分からないことだらけだったが、日を重ねる毎にだんだん仕事の内容も理解できて来た。
そして1週間がたって、尾賀さんの両親はヨーロッパ旅行へ旅立った。
この1週間でバイトの大学生とも仲良くなれたので、今は結構バイトが楽しく思える。
それに尾賀さんとの関係も今までよりもだいぶ近付いたと思う。
泰助はすっかり本屋に馴染んでベテランのような振る舞いで仕事をしている。
ただ、元から明るい性格なのでバイト仲間の先輩やお客さんからも泰助の受けは良かった。
そんなある日のこと、尾賀さんは店内で仕事に励む泰助を見かけた。
あ、柳瀬君本の整理してくれてるんだ。初めは大丈夫かなって思っちゃたけど、凄く真面目にやってくれてる。何か学校で見てるときよりしっかりしてて頼りがいがあるな。
あれ? なんだろ… 高校生ぐらいの男の子に注意してる。
高校生の男の子… あ、エッチな本持ってる。あれは18禁の本だ。
え、凄い… 柳瀬君、自分のことは棚に上げて注意してる。
それもどうかと思うけど、でもしっかりしてるんだ。
男の子を連れて本を戻しに行った… 柳瀬君えらい。
あれ?… 何か別なエッチな本を柳瀬君が男の子に渡してる。
どうしたんだろ? ちょっと話が聞こえる場所に行こう…
………なになに、
「お前が選んだ本はクズだ。これにしろ、こっちの方がもっとエロイ…」
柳瀬君… 君の方がクズだよ…
なにエッチな本の商品説明してるのよ~
それに意気投合して楽しそうにお客さんと一緒に笑っててどーすんのよ! 遊んでるんじゃないんだよ。
それから暫くして…
はぁ~、やっと仕事に戻ってくれた。
ん、… 今度はお客さんに話しかけられた。心配だから聞きに行こう。
………なになに…
「旅行雑誌はどの辺に置いてんの?」
「あっちです」
違うって… あっちは幼児向けの絵本コーナーだよ…
「あれ、お兄さん凄いイケメンね」
「そうですか?」
そう言えば柳瀬君に話しかけてるの… 女子大生かな。
すっごく派手な格好… だけど可愛いしスタイルも抜群。
それに… タンクトップに見せブラ… かなり柳瀬君好みだ。
「ねえ… 仕事いつまでなの?」
凄―い、さすが柳瀬君… 逆ナンされてる。
「あと6日間ぐらいです」
………意味わかってないし
いつまでって今日のバイト終わりの時間のことだよ…
「フフフ… 面白い人ね。 今度一緒に遊びに行かない?」
女の人積極的~!
あれ? 柳瀬君どこ真剣に見てるの?
わわわぁ~… 柳瀬君、そんなにガッツりお客さんのおっぱい見ちゃダメ~。
「…誘ってくれて嬉しいけど、やめとくよ」
「え~、残念。 フフッ… でも面白い子ね」
あ、女の人向こうへ行った。
柳瀬君断ったんだ… どうしてだろ? あんなにおっぱい見えそうな可愛い人だったのに…
「ごめんな… 俺はBランクとは付き合わないんだ」
………おっぱいだけで女の子選んでるんだ… ある意味凄いね…
遠ざかっていく女の人を見ながら泰助はため息交じりにぼそっと呟く。
「尾賀さんの誘いだったら絶対断らないんだけどな…」
………そうなんだ… 私の誘いだったらOKしてくれるんだ…
こっそりそれを聞いた尾賀さんは、嬉しいような… ちょっと辛いような表情になる。
「でも… 柳瀬君にそう思ってもらえるだけで何だか幸せだな…」
複雑な心境だがその表情は少し微笑んでいた。
泰助のアルバイト生活はまだ続く。
次は何が起こるのか? それは次週のお楽しみということで…




