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第九話「そうだ鑑定にいこう」

 

「……もー! なんなのよ、あの人!」



 合同依頼が終わり、久々に俺たちブラッドウルフ隊だけでテーブルを囲んでいた。ロッタが珍しく、思い切り頬を膨らませて愚痴をこぼしている。


 ちなみに今回の依頼は、拍子抜けするほどあっさり楽勝だった。

 これも副リーダー――いや、最近はすっかり“師匠”と呼ぶのがパーティの流行になっている――のおかげだ。


 最初はギルド本部の無茶ぶりに「絶対ろくなことにならない」とみんなで文句を言っていたけど、今となっては「本当にありがとう、本部!」と心から言いたいくらいだ。

 ……正直、すまんかったギルド本部。


 しかも、今回は腹痛もなければ、危機察知の警報も一切なし。

 最初から最後まで快適サクサク、最高に平和な依頼だった。



「いや、わかるわかる!」

 シルビアが激しく同調して身を乗り出す。「あれは誰だって勘違いするって。こっちも横で見ててイライラしたよ!」


「でしょー!? いくらなんでも初対面で“君が欲しい”はないでしょ!? あれで何もないとか、逆に詐欺だよ、詐欺!」


「完全に誤解させにきてたもんね。ああいうタイプ、世間に放っておくと絶対被害者出るって」

 シルビアが呆れ気味に続ける。



「でも……私も、なんだか勝手に舞い上がってただけだったみたい。ちゃんと冷静になれたし、今はもう大丈夫」


 ロッタがしょんぼりうつむいた。その肩を、シルビアが笑って軽く叩く。


「それだけ自分のこと見られてるなら十分偉いよ。落ち込む必要なんてないって」


「うんうん、ロッタが元気ならそれでいいさ」とブロックもにこやかに言う。


「ガイルも見習ってほしいくらいだわ」と、シルビアが俺にサラッと振る。


「なんで俺に飛び火するんだよ……」



「でもさ、冷静に考えて――」


 俺はちょっと真顔になる。



「ロッタのスキル、あのクラスのパーティがそこまで興味持つって、やっぱり相当ヤバい何かが……」



「……う、それはちょっと不安……。私のスキルって、実はすごい秘密が隠されてたりするのかな……」

 ロッタがぽつりとつぶやく。



「お詫びってことで、師匠が報酬多めに分配してくれたし……」

 シルビアが報酬の袋を持ち上げてにやりと笑う。



「気分転換に、いっちゃう? スキル鑑定」



 ロッタがぱっと顔を上げて目を輝かせる。「それ、いい!やってみたい!」


「いや、お前ら、気分転換で呼べるようなサービスじゃねーからな!?」俺はあわててツッコミを入れる。


「“鑑定してスッキリしよ~”とか軽く言ってるけど、

 スキル鑑定って、専用の鑑定士を呼ぶためにギルドが瞬間移動使いまで手配して、特別手数料が……」

 俺が必死で説明している間にも、パーティの面々は誰も聞いちゃいない様子で盛り上がっている。


「Aランク依頼の特別報酬、下手したら全部ふっとぶからな!? 俺らの分も合わせて丸ごと消えるぞ!?」


「でも一生モヤモヤするよりはいいって! それに師匠のお詫び分、こういう時に使わないと!」

 シルビアがにこやかに強引に話をまとめる。


「使い切る前提かよ!」

 思わず頭を抱える俺。



「……やっぱり、なんかすごい隠しスキルが眠ってる気がする」

 ロッタがぽつりと言い、シルビアが「そろそろ“ロッタ伝説”が始まるかもね」と面白がっている。


 ブロックが鍋をかき混ぜながら、やや真剣に言った。

「できれば“腹痛防止”とかだったら……いいなあ」


「いや待て、むしろクラウスが欲しがるって、どんな腹痛防止スキルなんだよ!」俺が即座に突っ込む。


 シルビアも苦笑しつつ首をひねる。

「クラウスのお腹が弱すぎる説、あるわね……。でも、一目ぼれするレベルの腹痛防止って、もし本当にそうだったらロッタがいなくなった瞬間、うちのパーティ壊滅じゃない?」


 ロッタが「それは困るなあ」と苦笑いし、ブロックが「ほんと頼むよロッタ」と頭を下げるのを見て、俺はため息をつきつつ、みんなの顔を見回した。



「……よし、明日ギルドに手配頼みに行くぞ。スキル鑑定士、呼ぶからな!」


「やったー!」

 ロッタが元気よくガッツポーズを決める。


(ああもう……また金が消える……)


 ため息をつきながらも、やっぱり俺も“ロッタの本当のスキル”が気になって仕方がなかった。



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