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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第二章 機械仕掛けの夢
32/47

交差する二人

ゼノンがアナを弾き飛ばした直後、アロンから数え切れぬほどの光弾が出現し、アナに向かう。


「数で押しつぶす!」


「効かない!!」


その光弾の波からアナを守るように、ラプターが五機、前に出ると同時に青色のエネルギー膜を展開する。


【ラプターズ プロテクトシールド!!】


ラプターから展開された青い膜はアナを囲み、光弾の弾幕を受ける。


すさまじい爆発音とともに、周囲に煙が立ち込める。

その煙を切り裂くように、数本の青い光線がゼノンめがけて照射された。


だが、ゼノンが杖を前に突き出すと同時に、紫色に光る六角形の膜が出現し、アナの光線を防いだ。



攻防一体。二人の絶え間ない攻撃は、互いの防御によって防がれる。


だが、手数による拮抗は、徐々にゼノン優勢になりつつある。


〔アレス プラズマレイン〕


声に反応したアレスの触手が光線銃のように変化し、名の通り雨のごとく光線を掃射する。アナは再びラプターで攻撃を防ぐが、絶え間ない光線の波に、身動きをとれずにいた。


アレスという援護。実力が拮抗状態にある二人の戦いにおいて、数のアドバンテージは勝敗に直結する大きな要因であった。


(光線が波のように…!動けない…!)


絶え間ない光線を防ぐことで生じる光で、アナの視界が白く染まる。


それをゼノンは見逃さない。


「隙だらけだ」


アナの背後から、ゼノンの声が聞こえる。

アナが振り返ると、ゼノンが自身の腕にエネルギーを溜め、拳を引き絞っていた。アレキサンダーにしたように。


〔ヴォイドフィスト!〕


「同じ手はくらわない!!」【ラプター ユーズトリプル ロケットパイル!!】


エネルギー膜をまとった三機のラプターが、ゼノンの拳とぶつかり合い、青紫の衝撃波が辺りを覆う。

衝撃によって、二人に期せずして間合いが生まれる。と同時に、ゼノンは思わず感嘆の声を上げた。



「これを防ぐか!」


「一度見た攻撃は、私には効かない!!」


「そうか…ならば手法を変えねばならんな…!」


突然、ゼノンはアロンの石突を鳴らす。すると、アレスが流動状に変形、ゼノンの杖と腕にまとわりつき始めた。

次第にアレスは形を変え、腕と杖に張り付いた。


「本来…アレスはアンドロイドや生物を強化するためのもの。一粒のナノマシンで、身体能力を極限まで高める」


アレスに張り付かれたアロンとヤールングレイプルが、次第に変形し始める。純白に輝いていたヤールングレイプルの色は白銀に変わり、伸長した溝から漏れ出る紫色の光はより濃く、そしてより邪悪に光る。

アロンも、全体を銀色のコーティングで身を包み、先端が三又に別れると、まるで王冠のような形状に変化した。


「そんな代物を…これほどの量、武具の強化に使ったのだ。しかもロストウェポンに…」


次第に変形は止まり、ゆっくりとなじんでいく。


「楽しみだ。どれほどの力を得られるのか!」


完全に融合したロストウェポンたち。その見てくれに、もはや神聖さはみじんもなかった。


「さぁアナ。これを受け止められるかな?」


変形が完了すると同時に、ゼノンから漂う不気味な覇気が、より一層濃度を増す。


しかし、アナはひるむことなく、一歩前に出た。


「どんなものでも受け止めるわ。あなたを止めるためなら!!」


「そうか…ならば心行くまでぶつかり合おうか!!」


ゼノンはこぶしを握る。と、指の関節部にあるビーム砲から紫色の縄が四本、だらりと垂れる。その縄もまた、稲光をまとっていた。


「貴様のラプターの使い方を見て、エネルギーの解釈が広がった。本来エネルギーの放出と吸収、変形のみが可能だったヤールングレイプルだが…アレスによって強化された今ならば、貴様のラプターと同じことができよう!!」


〔ヴォイドウィップ〕


ゼノンが腕を振るい、しなるエネルギーの鞭が、アナめがけて振り下ろされる。受けようとアナはラプターで再びシールドを展開する。


だが



バリン!!



ゼノンの鞭が接触した直後、ラプターのバリアが音を立て砕けた。


(破られた!?)


それでもなお勢いが止まることなく鞭は迫る。とっさにアナは回避し難を逃れるが、バリアを展開していたラプターは鞭に直撃。地面に叩きつけられてしまった。


「さすがアレスだ…素晴らしい」


(威力が増してる…これ以上は受けられない…!)


アナが考えている間に、ゼノンは再び腕を振るう。鞭の速度はさらに勢いを増し、すさまじい速度でアナに迫る。


「受けれないのならよける!」


アナが走り跳ぶと同時に、ラプターが変形し足に装着。軽やかなスピードと身のこなしで鞭をよけ、ゼノンに迫る。


しかし


直後にゼノンが腕を引いたかと思うと、アナの背中に強い衝撃が走る。


「っ!!」


「鞭は戻す時が最も速度が出るものだ」


アナはとっさにラプターを間に挟み、ある程度衝撃を緩和させた。しかし、それでもなお力は殺しきれない。激しい痛みがアナの体を駆け巡り、一瞬思考を鈍らせた。

そこにすかさず、ゼノンが拳を叩きこむ。


〔ヴォイドフィスト!!〕


拳の接着と同時に、紫の衝撃波がアナを吹き飛ばす。何とかラプターを使ってブレーキをかけるが、相当のダメージを食らってしまった。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


「どうしたアナ?息が上がっているぞ?もう限界か?」


「ふうぅ……まだまだ!!」


再びアナの目が青く光る。と同時に、アナは三度、ゼノンに向かって突進する。


「直進の一辺倒か!」


「正面からぶつかるなら!これが一番いいってレオンに教わったもん!!」


「くどい!!」


ゼノンは再び腕を向ける。同時にアナも、五機のラプターの照準をゼノンに向けた。


【ラプター パイルフラッシュ!】


ラプターから高速の光線弾が放たれる。だが、それもゼノンは予期していたかのように、焦ることなく杖を向けた。


〔アロン エネルギードレイン〕


一発はゼノンの肩に命中し、彼の肩を貫いた。が、四発が紫の電流につかまり、アロンに取り込まれる。すると、トライアングル上のアロンの先端に、青色のエネルギーが球状に凝縮され、ふわふわと浮き始めた。

ゼノンは、貫通した自身の肩をちらりと見ると、再び目線をアナに据える。


「貫通力の強い速度特化の技か…吸収して正解だった」


すると、アロンの先端が縮小し始め、中の青い光弾が目に見える速度で回転を始めた。そして、回るごとに光弾は先鋭化されていく。


「お返しだ」


〔リリース スピニング〕


アロンの先端が、まるで縛りを解かれたかのように広がると同時に、先鋭化された光弾が発射される。その速度は、アナが発射したときよりも早い。弾が数化する空間が、速度を持った光物質の影響で、ねじれてゆがむほどに。


光弾が、高速でアナの眼前に迫る。


しかし、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。


「それを待ってたの!」


直後、アナと光弾の間を青い膜が遮る。青い膜はまるでトランポリンのように伸びながら、光弾を受け止めた。


「なに!?」


「やっぱり!あなたの杖は、物体を中に入れて初めて機能するもの!さっきみたいに物を持ち続ける構造じゃないから、”中の物体を活用した攻撃”じゃなく、”中の物体そのもの”で攻撃してくるんじゃないかって思ったけど、あってた!」


「確証はなかったはずだ…」


「あなたの腕が機能を変えたからね!その杖も何か変わったと思ったの!!」


(たったそれだけで…何という冷静さと考察力…!)


「せっかく返してもらったけど、遠慮するわ!」


アナの声に反応するように、青い膜が今までの衝撃を跳ね返し、光弾をゼノンへ飛ばす。


「ならばもう一度!!〔エネルギードレイン!!〕」


ゼノンは再び光弾を取り込もうと、アロンを向ける。再び紫の電流が光弾に伸びていく。しかし、四発分の威力が凝縮され、回転と更なる速度が付与された光弾は、アロンが伸ばす電流を引きちぎり、そのまま先端とぶつかった。



バガァアン!!



光弾が接触するや、アロンの先端をねじり壊し、まるでドリルのように突き進んでいく。そしてゼノンの手のひらと接触した直後、大爆発を引き起こした。


けたたましい轟音と爆風、立ち上る土煙に、思わずアナは顔を覆う。しかし、その目は確かにゼノンがいた場所を見つめていた。


爆風によって、すぐに土煙は晴れ、ゼノンの姿をさらけ出す。


だが、ゼノンに目に見えるダメージは入っていなかった。


「そんな…あの威力の光弾を受けて無傷…!?」


「そうでもない。今ので手の装甲が38パーセント損傷した。もっとも、戦闘継続に支障はないがな」


そう話しながら、ゼノンは自身の手の動きを確かめるように、握って開く。アナから見ても、その動きに違和感は感じられなかった。


(工場の時は腕ごと無くなってたのに…)


アナが苦い顔をしていると、ゼノンが肩を回しながら話し出した。


「さて…アロンが破壊された。貴様と同様、受けることは難しそうだな」


ゼノンの腕に、再び紫色の電流が走る。


「もはや遠距離は貴様の土俵…ならば、こちらは肉弾戦で行くとしようか」


〔ヤールングレイプル ボディコネクト オーバードライブ〕


突然、ゼノンの体から白い蒸気が放出され始めると同時に、体中から紫色の電流が流れ始めた。


「さて。行こうか」


つぶやいた瞬間、20メートルほど距離があったアナとの間を、ゼノンは衝撃波が発生するほどの速度で埋める。


〔ヴォイドフィスト アクセラレート〕


目にもとまらぬ速さで、アナの体にゼノンの拳が直撃する。その痛みにアナが顔をゆがめる暇もなく、文字通り目にも止まらない連撃がアナに叩き込まれる。


「が!!ああっ!!」


アナの苦しむ声が、部屋全体にこだまする。



その声を聴いてか、だんだんと他のメンバーたちの意識が戻り始めた。


「ぐ……颯…大丈夫かい…?」


「動けない……体が…しびれて……」


「なら、そこで休んでてくれ。僕はアナの援護に……ぐ…」


「無理しないほうがいい…僕を受け止めたときに…肩を痛めてる……感触でわかるよ…」


「それでも、行かないと…!彼女一人に……重圧を背負わせるわけにはいかない……!!」


「……いや…彼女だけじゃない…」


そういって、颯は入口に目をやる。その先を見たサムは、驚愕と同時に思わず笑みがこぼれた。


「!彼らは…!」




二人が話している間にも、ゼノンの連撃は絶えることなくアナを襲う。アナはラプターを使って抜け出そうと試みるが、絶えず体全体を駆け巡る激痛がラプターへの命令を阻害する。


「まだ耐えるかアナぁ!!」


なおもゼノンは連撃を止めない。それどころか、体がヤールングレイプルのエネルギーに順応し始めたのか、次第に速度と威力が上がり始めていた。


ボルテージが上がるゼノンとは裏腹に、この数分全身が激痛にさらされているせいで、アナの意識は限界に近づいていた。


(痛い…痛い…痛い…意識が…もう…)


しかし、彼女の目に灯る覚悟は、それを許さない。


(ダメ…私が折れたら…大勢の人が悲しむことになる…!)


「そんなこと…そんなことぉ……!!」


「!」


「そんなこと絶対させはしない!!!」


殴打を受け続けてなおなくなることのない気迫に、ゼノンの攻勢の手が一瞬緩む。


その瞬間、誰かがすさまじい速度でアナを抱き上げていった。


その者の姿を見たゼノンに、憎悪にも似た怒りがこみ上げる。


「あ…あなたは…」


「……何のつもりだ…ギガス!」


「ゼノン……いや、ガーディアン。もうやめましょう」


「やめるだと!?今更何を言っている!気でも狂ったか!!」


「…違う。この子を信じるだけだ」


「なに?」


「…俺はさっき、そこで転がっている大男に言われたんです。『失敗を生かして、一歩踏み出せ』と。俺は一度失敗した。そのせいで俺の部下を何人も死なせた。たくさんの人を殺した。小さな女の子さえも…もうそんなことは起こってほしくない……そんな失敗をした俺を救ってくれたあなたに、俺と同じ失敗をしてほしくない…!!」


「虐げられている同胞たちはどうなる!!今ここで我々が手を引けば、もっと多くの”失敗”が生まれるぞ!!」


「だからこそ…彼女を信じてみようじゃありませんか…」


続いて、入口から声が響く。声の主はカナロアだった。


「カナロア…!お前まで…」


「ゼノン様。あなたは一度、彼女に可能性を見出した。もちろん、我々に加わるかもしれないという考えの元、見出したのかもしれません。しかし…彼女にある可能性はそれだけではなかった。でしょう?」


「…何が言いたい」


「彼女を信じてみましょう!屈託のない清き心で、すべての者たちが手を取り合って平和へと歩んでいける…彼女はそう信じている!今もなお!!」


「人間嫌いの貴様がいきなり何を言い出すかと思えば…血迷ったか…!今まで何度人間どもに裏切られた!!何度話を聞いてもらえなかった!!そんな小娘の話を信じたところで、結果は同じだ!!」


「彼女は工場であの光景を見て、そして貴方の主張を聞いてなお、手を取り合うことをあきらめていなかった!ここに来た時も!信念の固さは、あなたに通ずるものがある!それほどまでに強く何かを思う人間は、今までただの一人もいなかった……だからこそ、信じてみませんか!あの子の思い描く平和の道を!!」


ゼノンは二人の顔を見つめる。何かが違う。今まで共に過ごしてきた二人とは、何かが。ただそれが何なのかは、まだわからなかった。


「ゼノン……まだ止められるわ…」


と、ゼノンの腕の中で、息も絶え絶えにアナが話し始める。


「みんなが信じてる…みんなが望んでる…!平和への道を!」


その言葉に、ゼノンの動きが止まる。


「お願い…私を信じて……私たちをもう一度信じて!」


だが、帰ってきたゼノンの返答は、ため息だった。


「…どこまで行っても平行線だな…君とは」


「平和的な解決はできる。私も、ギガスもカナロアも、みんな信じてる。まだ私たちの線は交われる!まだ変われるの!」


「二人とは違う……私はもう……信じることなどできない」


「それでも信じて一歩進むことが大事なの!たとえどれだけいばらの道だとしても!」


「今更信じたところで何になる!決起を始めた以上、もはや平和的解決など露と消えた!この先待つのは破壊と破滅だけだ!」


「そうでもないみたいだよ…」


突然、アナの背後から声が響く。皆が目をやると、頭を押さえつつ腕の端末を見る、サムの姿があった。


「サム!無事だったのね!」


「ほかの皆よりはね…」


「そうでもないだと?どういう意味だ」


「それは…見ればわかるさ」


サムは腕の端末の設定を変え、プロジェクションモードに切り替える。その画面に映っていたのは、WDOの会見風景だった。







数分前 WDO本部 会見室


「世界中の皆さま、こんにちは。私は京極源一郎。WDOの長官の一人です。現在、世界各地で激しい混乱が続いていることとは思いますが、どうか今一度、足を止めてこの映像をご覧いただきたい。では……」


そういって源一郎は会見席から降りる。


続いて上がってきたのは、アンドロイド。しかし、アナには見覚えがあった。


登壇したのは、以前アナに心動かされ、アイアンエデンの情報をもたらしてくれたアンドロイド……元アイアンエデン信者、レックスだった。


to be continued

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