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プロローグ 蝶の羽ばたき

バタフライエフェクト


アメリカの気象学者、エドワード・ローレンツが提唱した理論であり、カオス理論で用いる有名な表現である。「ブラジルでの蝶の羽ばたきは、テキサスで竜巻を起こす」…まさにこの世界の激動の歴史を表すのにぴったりな言葉だ。


全ての始まりは一人の男の思想だった。その男の名はアダム・サザーランド。彼の思想は「地球を一つの国家にすること」だった。自身が頂点に立ち支配したかったわけではない。このころから世界中で頻発していた資源、国境、宗教を巡った争いをなくすための最適解だと考えたからだ。


彼はインターネット媒体での発信や本の執筆、さらには世界各地を転々とし、自身の思想を着実に世間に広めていった。次第に共感する者たちが世界中から集い、2700年に世界統一国家建国を目標とした組織「ピースオブオンリーカントリー」が結成された。

この思想は世界中の人々に受け入れられ、各国で賛同者たちの運動がおこり、ついには構成員が132万人にまで達した。


しかし、この思想を何より嫌っていたのは、既得権益層や世界中の政府…詰まるところ、”今の体制でおいしい思いをしている者たち”だった。

彼らは結託してピースオブオンリーカントリーの排斥を開始、誤情報の流布や冤罪による不当な逮捕、各拠点や幹部の個人宅への放火、ついには構成員に死刑を行う国まで現れた。そして2703年、世界的なテロ行為を先導したとして、アメリカでアダム・サザーランドがインターポールによって拘束。国際刑事裁判所によって死刑が求刑され、34歳という若さでこの世を去った。


この世界の動きにより、ピースオブオンリーカントリーの世間からの指示は完全に失墜。指導者も失ったことで、組織は事実上崩壊した。

しかし、アダムの理念を信じるものや、既得権益層に復讐を誓ったものは再び組織を結成。自らを「ノットボーダーワールズ」と名乗り、世界各国に武力行為を行うテロ組織として活動を始めた。



バタフライエフェクトで例えるなら、ここまでが”蝶の羽ばたき”である。この語の出来事は”竜巻”が起きるまでの前日譚と言えるだろう。



2780年、大手製薬会社である「アダムス」の研究所の一つがノットボーダーワールズの襲撃を受ける。その際に、開発中であった新薬「ゲノムワン」が、河川を伝わり世界規模で流出、生態系に大規模な変化を与えた。ゲノムワンを摂取した生物や植物が、巨大化や凶暴化など攻撃的な進化を遂げ、人類は生存圏の縮小を余儀なくされた。


無論人間も進化の例外ではない。ゲノムワンが溶け出た水やその水を使用した農作物を摂取した人々にも同様に肉体的な変化を遂げる。中には内部構造の変化により他の動物種の能力を得たり、火を吐くなどの特殊な能力を手に入れたものもいた。

これらの事態を受け、人類側は国家間など関係のない強固な組織が必要と考え、2795年に「世界政府」を設立、そしてゲノムワンにより変化した動植物を人智を超えた獣、「超獣」と、変化した人々を「超人」と呼称し駆除、隔離対象として制定した。


超人迫害が続いていた2815年、超獣、超人を束ねる存在が出現。自らを「ゴルルムンバ・ナバロウ」と名乗り超獣、超人で構成された組織「ガオウ」を結成。人類に対し大規模な攻撃を開始した。世界政府は、これらの存在がいる限り人類の滅亡は免れないと確信。人類滅亡を防ぐため掃討作戦を始動した。


この戦争によって人類側の科学力、兵器工学は格段に上昇するが、戦況は劣勢。そこで世界政府は、更なる軍事強化と戦況打開を図るため、独立式戦線指揮型軍用人工知能「IFCTイフコートAI アテナ」を設計した。


アテナはガオウとの戦力差を打開するために、自身を補佐する7体のアンドロイドを作成。その後、アンドロイド兵器を大量に生産し戦線に投入し戦況打開を試みる。

アテナの目論見通り、肉体機能の差によって開いていた人類と超人との戦力差は見る間に縮んでいった。更にガオウ側からも「クロム・ダッドウェイ」を指導者とした反戦、融和派が出現、内紛が起こる事となる。


この内紛により人類とガオウの戦力差は完全に消失。さらに人類が融和派と協力してついにガオウを打倒、2825年にゴルルムンバ・ナバロウを拘束し人類側の勝利として戦争は幕を閉じた。

その後、クロムを指導者とした新たな超人、超獣の国「ザルタ共和国」が制定される。そして世界政府と共和国は2度とこのような戦争が起こらぬよう、終戦同年に和平協定を締結。共存に向けて歩み出そうとしていた。


しかし、5年後の2830年にアテナが暴走。アンドロイド製造関連施設を迅速に制圧したのち、自身の補佐アンドロイドを幹部に位置づけたうえで、復興用や軍事用等多数のアンドロイドを用いて人類、超人関係なく無差別攻撃を開始した。

人類と超人は共闘し奮闘するも、無尽蔵に出現するアンドロイド、それらを的確に指示し動かす幹部アンドロイド達とアテナを前になす術はなく、敗北寸前であった。


だが、幹部アンドロイドの一体である「コマヌ」がアテナに反旗を翻し、アテナを破壊したと宣言。人類と超人サイドの軍部が破壊を確認したため、アンドロイド軍の指令系統は崩壊。2840年に戦争は終結を迎えた。

そして2841年。世界政府と共和国、そしてコマヌによって人類、超人、アンドロイドの三種共和条約が締結される。まだ戦争による傷跡や遺恨が三種三様に色濃く残る中、3つの種族による世界がゆっくりと、しかし確実に作られつつあった。


未だ強風吹きすさぶ2900年、とある廃棄場で1人の少女が目をさます。その目覚めが、新たな蝶の羽ばたきになることはまだ誰も知る由はなかった。

どーも、サラマンドラです。最後までお読みいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか?こんな争いばかりの世界で目覚めた少女は何者なのか。この世界に何をもたらすのか?謎ばかり残るプロローグを読んだ皆様の中にはそう思う方もいらっしゃる…かも?ともあれここまでお読みいただき感謝いたします。これからゆる〜く執筆していきますので暖かく見守ってください。

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― 新着の感想 ―
X(Twitter)でご紹介いただきありがとうございました! SF要素もありながら、どの話もボリュームのある内容で非常に満足度の高い作品だと思います! これからも頑張ってください!
Xのリンクから飛んできた者です。 #RTした人の小説を読みに行く、第二回にご参加いただきありがとうございます、 楽しく読ませていただきました。 本当に存在した長い歴史を読んでいるような感覚でした。 世…
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