7−2. 和解
数人の打身や深めの切り傷を治療し終えて、リリーちゃんにお願いして全員分の紅茶を用意してもらった。
いつも何処からともなく取り出す地球の製品、リリーちゃんはどうやって取り寄せているのだろうか…
薪を囲むように座り、皆で暖かい紅茶をすする。
昼間とはいえ森の中は薄暗く今日は少々肌寒いので、火があると幾分か暖かい。
薪は癒されるなーと呑気に思いながら、私が熱々の紅茶をふーふーしてるその横で、グレンは熱々紅茶をー…グビグビ飲んでいる。
さすがは炎を噴き出すだけあって口内の高温対策バッチリなようだ…そんな事に感心していると
「すごくいい香りぃー、初めて飲むお茶だわぁ〜」
なんとも間延びした話し方をするエルフだなと思って視線をやれば、露出狂並みの際どい服を着た…痴女!?
私の視線に気づいたのか痴女…いやエルフは
「あっ、私はロメーヌって言いますぅー
危ない所を助けて下さってぇー本当にぃー有難うございましたぁー」
この方は踊り子さんか何かなのかな?
そう思っているとロメーヌの隣に座っていた双子の兄弟のお姉さんも
「私はアレイナと申します。
先ほどは本当にありがとうございました。
命ばかりでなく弟の治療までして頂き、本当に感謝しております。」
次々と他のエルフからも感謝の言葉を述べられる。
いやー良かった。
リリーちゃんの布恐活動で一時はどうなる事かと思ったけれど、皆さんの信頼を少しばかり回復できたようだ。
「タキナ様に感謝を述べるのは当然の事!
ですが、私は忘れていませんよ!タキナ様を奴隷商人呼ばわりした事を!
タキナ様、この無礼者達には不敬罪で処罰が必要だと思います!」
キリッとした顔で、上げたばかりの信頼を落とすなー!!!
思わず米神を抑える。
どうしたものか、リリーちゃんの教育が最優先かも知れない。
私の頼れるリリーちゃんだが、この一点だけはどうにも…
「リリーちゃん、皆さんが疑うのも無理はりませんよ
聞けば盗賊に捕まり奴隷商人に売られそうになっていたのですから、その上私達の見た目は異端そのもの、不安がられるのも仕方ありません。
今はこうしてリリーちゃんのおかげで皆さんから色々とお話を聞かせて頂けているのですから、良いではありませんか」
ねっ?と言ってリリーちゃんに微笑みかけると、口を尖らせて不満げな顔になる。
「タキナ様がそう仰るならば…」
不満だが聞き入れてくれるようだ。
ヨシヨシとリリーちゃんの頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
表情がコロコロ変わって歳の離れた妹か、はたまた娘でもできた様な気分になる。
「けっ、間抜け面」
グレンの一言でリリーちゃんの顔が一瞬で真顔になり、殺さん勢いで睨みつける。
私を挟んで喧嘩するな2人とも…まったく
「やめなさい2人とも」
2人に威圧をかけると直ぐに大人しくなってくれたが、隙あらば喧嘩するんだからこの2人は…。
そう言えば私が死ぬ直前に助けようとした小学生とサラリーマンは無事だったんだろうか、事故当時の記憶が曖昧だったため2人を見ていてふと思い出した。
自称召使に会う機会があったら聞いてみよう。
ため息をついて皆に向き直る。
するとアレイナが、ほっとした表情を見せた後に遠慮がちにグレンに視線をやる。
「治療の最中にもチラッとお聞きしましたけれど、本当に…その…その少年が私達を追っていたドラゴンなんですよね?」
まぁ、無理もないアレがコレですもんね。
「ふん、気配で分からないのかよドラゴノイド
ドラゴノイドなら僕達ドラゴンが人型になれることくらい知ってるだろ」
そう言いながら、これまたリリーちゃんに出してもらったお茶請けのクッキーをムシャムシャ食べているもんだから、威厳もへったくれもない。
グレンがムシャムシャ食べているのを見て、ドラゴノイドやエルフの子供達も安全な物と思ったのか、クッキーを食べ始めて目を輝かせている。
よほど美味しかったらしい。
「いっ…いえ、ドラゴンが人の姿になれるなど聞いた事はございませんでした。」
なんだ人型になれるの知ってたのかーと思うのも束の間、知らなかったのか…
グレンの話ぶりからすると、ドラゴンが人型になれることは周知の事実と思っていたようだ。
うーん、この世界の種族はコミュニケーション不足が過ぎるのでは?
ドラゴンだけかもしれないけれど、争いを話し合いで全て解決するなんて出来るわけがないがないと、元の世界で重々承知の上だが、しないよりはした方が良いに決まっている。
種族長会議とか引きずって来てでもさせた方が良いんだろうか?
でもなー、地球でも主要国家首脳会議とかあるけど、たかが一介の市民ではアレがどれほどの意味を成していたのかは正直測りかねる。
やはり、モブの私にはこんなの荷が重すぎると内心で深い溜息をついた。




