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行きつく先は邪神か神か  作者: 弥生菊美


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7−1.和解

 私は特別な存在になりたかったのだろうか


多分…そうだと思う…


人より秀でた存在になりたいと憧れていたのかもしれない

けれど私は舞台の主人公を演じられる様な人間ではない

その辺の木や岩の役が精々だ

物語を作る役にすら入れない

特別な存在になりたい

けれど、そんな存在になれる様な人間ではない

そんな矛盾にぶち当たる

現実の私は誰かに認めてもらわなければ己の存在価値すら

無いに等しい人間だったのだから


何もかもがどうだっていい


私以外の人間なんて居なくなれば楽なのに


だと言うのに…


そんな人間にある日突然

誰よりも、何よりも秀でた存在になってしまう

そんな大役を与えられた時、果たしてその人間はその大役に押し潰されることなくシナリオのない舞台を演じ切れるのだろうか…






 リリーちゃんの案内で5分ほど森の奥へと進むと、池のほとりに馬車が停めてあるのが目に入った。

 火を起こして体を休めているようだが、私達に気づいたエルフの男が周りの者達に知らせると、バタバタと慌ただしくなり全員が突然こちらに向かって土下座をしている。


何故!?

助けたことへの感謝の気持ち??


 意味もわからず彼らの前までやってくると、何やらリリーちゃんが満足げな顔をしているのが気になり


「リリーちゃん…皆さんに何か言いましたか?」


すると、よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりの嬉しそうな表情で


「タキナ様はこの世界の唯一神であり、世界を救う偉大な女神である事を懇切丁寧に話して聞かせました!

布教活動と言うやつですね」


えっへん!

と、言わんばかりのリリーちゃん


 なるほど…これは土下座ではなくて殿様とかに家来がする系の平伏ってわけですね…

それにしても皆さんに心なしか怯えの色が見える

どんな説明をしたんだか…


「皆さん顔を上げて下さい

もっと楽な姿勢で構いません」


 そう伝えるとリリーちゃんを伺い見る様にしながらも、おずおずと頭を上げる。

マジでどんな布教活動したんですか!?あとで詳しく聞き出さねばなるまい。


「怪我をしてる方や身体を痛めている方などはいらっしゃいませんか?

先に治療をしますので話はそれからにしましょう」


 そう言って皆を見回すと、手を挙げようとしたドラゴノイドの少年の手を、隣にいた同じドラゴノイドの女性が慌てて掴み下げさせた。


「心配しないで…と言っても難しいでしょうが、大丈夫です。

遠慮は入りませんよ」


 そう言って少年と女性の前まで歩み寄ると、目線に合わせるよう屈んで微笑みかける。

 一瞬ビクリとした2人だが女性の方は困ったような悩んだ表情を浮かべる。


「姉様、僕ぶつけた腕が痛いままなの嫌だよ」


 拗ねる様に姉の袖を掴んで引っ張っている。

 似ているなと思ったが姉弟か、よく見れば姉様と呼ばれた後ろに隠れるようにもう1人、少年と同じ顔をした男の子が姉の背に隠れるようにこちらの様子を伺っている。

 双子ちゃんだ可愛い!!


「でっでも…女神様にそのような事をお願いするなど恐れ多い…」


 女神様とは何やら気恥ずかしい!!にしても、リリーさぁーん!!気づいていましたが、さては布教活動ならぬ布恐活動しましたね。

 笑顔が引き攣りそうになるが、これ以上彼女達に恐怖心を与えたくはないので耐える


「皆さんを助けるのが私の役目でもありますから、さぁ、痛い方の腕を出して」


 そう言って少年に手を差し出すと、躊躇いもなく腕を差し出す少年、さすが子供は怖いものしらず。

 お姉さんの動揺ぶりが哀れに思えてくる

 普段から弟達に振り回されてそうだなーこのお姉さん…差し出された腕をそっと片手で支えて、もう片方の手をかざし治癒魔法を使用する。


 翡翠色の光が痛めた少年の腕を包み込み、みるみる赤みが引いていく


「なっ!!?」


 お姉さんや周りからも驚きの声が上がる

 グレンも言っていたが本当に治癒魔法はこの世界に存在しないようだ。

 腕は打ち身のようで赤く腫れ上がっていた。

これはさぞ痛かっただろうに…幸にも骨は折れていなかったようで、すぐに治療は終了した。


「さぁ、腕の痛みはどうですか?」


手を離してみると、少年は腕を曲げ伸ばしして見せる


「痛くない!全然痛くない!!すごーい!!治ってるー!!

 ありがとうございます女神様!」


 ふむふむ、良い反応するね少年

ニコニコと微笑んで少年の仕草を見ていると、他の者達もそれを見て恐る恐る手を上げて私も…と1、人また1人と手を挙げる。


 そんな中、1人の男エルフが周りを見渡しながら


「あの…失礼ですが…ドラゴンはどうなったのでしょうか?

女神様が落としたところまでは見たのですが、そのドラゴンが仕返しに来る事はないのでしょうか?」


そうでした、それを先に説明すべきでした。


「そのドラゴンはこの子ですよ」


 私の横に仏頂面で立っていたグレンを見ると、全員が言葉を発さず処理落ちよろしく固まっていた。


無理もないよねー、私も驚きましたもん。


 

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