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第83話 心地いい振動に揺られながら

 地上が見えてくると……俺はそこそこの高度を保ったまま停止し、ざっと四方を見渡した。

 家屋の倒壊とかもなければ、人々が慌てている様子もなく……そこには、いつもと変わらない日常があるようだ。


 今回の戦闘で飛んだ余波の内、最も大きかったのは紛れもなく相対論棄却機能オフ時の重力波だろうが……信じたとおり、ダイさんが結界で完全に防ぎぎってくれたようだな。


 改めて自分の目で見て安心しつつ、例の小屋に降り立ち呼び鈴を押す。

 すると……10秒と経たず、ダイさんが勢い良く扉を開けた。


「おかえりー! UFO48の精鋭部隊、無事討伐だね! いぇーい!」


 ダイさんがそう言って、右手を上げたので……俺もそれに合わせ、ハイタッチをした。


「ユカタが勝ってくれて、本当に良かった! じゃなきゃウチら、この星ごと滅ぼされてたところだったもんね……」


「俺の方こそ、ダイさんがこの惑星を戦闘の余波から守ってくれて本当に良かったっす。……地上への影響は一ミリも心配しなくていいって言葉が無ければ、決め手となる大技を使う決心がつかなかったでしょうし」


「そういえば……確かに一瞬、何て言うか、空間の歪みが全方位に広がるえげつない技使ってたよね。あれ……何だったの?」


「混沌剣の機能に、光速を超えて飛ぶ際、相対論の影響を無くすってものがあったじゃないすか。俺……あれを敢えて一瞬オフにして、神5の至近距離で思いっきり空間を歪めてやったんですよね」


 などと戦況を振り返りつつ、地下に降りる。


「普段便利な機能を、オフにして敢えて有害なものを出す逆転の発想かー。そんなのよく思いついたね……」


「思いつかなかったら、勝てなかったかもしれないくらいでしたよ」


「ほんと、思いついてくれて良かった。そして……ウチの覚悟を信じて、その技を使ってくれてありがとう」


 そう言いながら、ダイさんは俺に受信魔道具と記録用紙を見せた。


「……ね? あれ以来、何の記録も残ってないでしょ?」


 そして……ダイさんは、件の宇宙船衝突以来何も記録されていない記録用紙を見せつつ、そう言って微笑んだ。


 全く……思いつきで作ったばかりの物が、いきなり世界を救うレベルで活躍することになろうとはな。

 確かに、招かれざる者をブロックするために作ったものではあるのだが……のっけから、やってくる「招かれざる者」がハイレベル過ぎだろ。

 まあザネットを倒した時から、いつかはせねばならない戦いだったのは確定してたことだし……対策が間に合う中で最大限早いタイミングで終わったのは、ある意味喜ばしいのかもしれないが。


 そんなことを考えながら、俺は側にあったソファーにドサッと腰かけた。

 腸内エリクサーのお陰で、肉体的には既に疲れていないのだが……なんかこう、ボーっとしたい気分なんだよな。


「ユカター、ちょっとくびもちあげてー」


 ソファーに座ると……プヨンは何か考えがあるのか、そんな風に頼んできた。

 とりあえず言われた通り、首を持ち上げてみると……プヨンは、俺の首に巻きついた。


 一体、何をするつもりなんだ……?

 そう思っていると……プヨンは自身の身体を震わせ、俺の首から肩にかけてマッサージチェアのような振動を与えだした。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……気持ちいぃー……」


「アハハ……プヨン君、ユカタの気持ちホント良く分かるんだね……!」


 しばらく俺はプヨンに身を委ね、至福の時間を味わった。

 それが十分くらい続くと……次第に、動く気力が回復してくる。


「今日は本当に良い連携がとれました。今日の経緯は……また後日、然るべき方々に報告しておきますね」


 十分に気力が回復した俺は、そう言って研究施設を後にしようとした。

 しかし――。


「……待って。最後に一つ聞きたいんだけど……彗星竜の骨って、もう全部使い切ったっけ?」


 ダイさんはまた何か作るつもりなのか、そんなことを聞いてきた。


「彗星竜の骨なら……まだちょろっと残ってますけど」


 俺はそう言って、衛星魔道具一機分にも見たないくらいの彗星竜の小骨を、自分用特殊空間から取り出した。


「ちょっとそれ、借りるね」


 するとダイさんは、小骨に一つ魔法陣を書き込んでから、俺にそれを返した。


「さっき咄嗟に思いついたんだけどさ、そっちにも、結界破壊の記録だけ共有できるような子機があると便利かな……と思って。同期記録機能だけつけたから、一応たまにはチェックしてね!」


 そしてそんな風に、小骨をどんな魔道具にしたかを説明した。


「ありがとうございます」


「いやいや、こういう記録は、対策に動ける人が持った方が良いのは当然だもん。……ま、何も記録されないのが一番だけどね!」


「ですよね」


 まあ遅かれ早かれ、あと一回だけは破壊記録が残ることになりそうだが。

 ……遅ければいいな。


 などと考えつつ、俺は混沌剣飛行でアイスストウムの屋敷に戻った。


書籍版スライム召喚無双2巻は、今週末発売です!

(地域によっては早売りとかあるかも……?)

いよいよこの時期がやって参りました。お楽しみに!

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