第82話 幻影に願いを
……長かった。
そして……キツかった。
でも……そんな戦いも、もう無事終わったんだ。
「……とりあえず、ステータスでも見るかー」
俺は大きくため息を吐きつつ、達成感を噛み締めながらそう呟いた。
戦いは終わったので、特に見る意味は無いのだが……勝利の余韻に浸るには、変化したステータスを見るのが一番だからな。
「すてーたすだね! へんけいするねー」
プヨンは俺の意思を汲み取り、見慣れたステータスウィンドウへと形を変える。
だが……そこにいつものレベルやスキルの羅列ではなく、ポップアップウィンドウが代わりに表示されていた。
【レベルが750に到達したことにより、混沌剣の未覚醒効果解放の第一条件がクリアされました <確認>】
未覚醒効果……ああ、あの「切り札になるんじゃないか」とちょっと期待した奴か。
まさに必要な状況なのに解放されないから、心底「なんでや」と思ったものだが……そもそも解放条件すら満たしていなかったとは。
しかし……第一条件ってことは、実際覚醒するにはまだ他の条件も満たさなきゃいけないのか。
まあそれは、後でじっくり考察すればいいことだが。
とりあえず俺は<確認>と書かれたボタンを押してみた。
するとポップアップウィンドウは閉じられ……いつもの見慣れたステータス表示が、目に飛び込んできた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:ハバ ユカタ
Lv.848
スキル:鑑定(―検索) 神剣飛行 幻影に願いを
状態:能力上昇(身体能力・魔法能力共に2割増加)
身体強化
時間経過マージン(【スライム召喚】の戦闘中副次効果により、身体能力が3割増加。この状態はあと6秒で切れる)
適性:混沌剣所有
ユニークスキル:スライム召喚
(相方となるスライムを召喚できる。召喚したスライムは、特殊な能力を持つ)
プヨンのスキル:
?ステータス表示
?幻影色合わせゲーム
(同色のスライムの幻影を4つ繋げて消すことで、大魔法を放てる。連鎖消しすると、魔法も火力も爆発的に増加する)
※ハードドロップを実装
?次元の地図 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回は、300もレベルが上がったか。
まあ過去一番厳しい戦いだったし、それくらい上がるのが妥当な気もするな。
そして今回も……やはり、時間経過マージンに突入したんだな。
ザネット戦の時は1割増しだったが、今回は3割増し。
時間経過は、経過時間が長ければ長いほど割合が高くなっていくはずだし……今回の戦いは、それだけ長くかかったということなのだろう。
プヨンのスキルは、特に何も増えたりしてはいないな。
となると、目ぼしいものはこれで全部見終わったか。
そう思い、俺はプヨンにステータスを閉じるよう頼もうとした。
が……すんでのところで。
俺は自身のスキル欄に、見覚えのないものが追加されているのを発見してしまった。
「幻影に……願いを!?」
しれっと追加されていたそのスキルを、思わず俺は二度見した。
普通こういう時って、何か脳内音声が流れるもんなんじゃないのか?
例えば、鑑定のサブスキル「検索」を手に入れた時のように。
……原因が考えられるとしたら、「脳内音声は実際流れたが、戦闘に集中し過ぎていて気づかなかった」とかだろうか。
2、3、4人目を倒した後に手に入ったとかだったら……次の相手に気を取られ過ぎて、聞き逃したとしてもおかしくはなかったしな。
「何だこれ……」
それにしても……このスキル、一体どういうものなのか皆目見当がつかないな。
幻影ってあるくらいだから、幻影色合わせゲームに関係がありそうだ、くらいの予想は立てれるが。
このスキルについても、未覚醒効果の第二条件同様、後で調べる必要があるか。
そう思ったが……俺の問いには、プヨンが答えてくれた。
「さんびょうかんだけ、すきないろのげんえいをふらせるすきるだよー! ねんにいっかいしかつかえないから、ちゅういしてねー」
プヨンが言うには……このスキルはやはり、幻影色合わせゲームに関係のあるものだった。
三秒間だけとはいえ、好きな色の幻影を降らせられるのか。
それは……地味に結構強いな。
例えば18連鎖を組むのとかは、プロとはいえ初戦敗退レベルの俺にはなかなか難しいものがあるが……それでも日本でパズルゲームをしていた頃には、ごく稀に運よくできたことくらいはある。
つまり俺のプレイヤースキルでも、最後の詰めで願った通りの配色が来れば、18連鎖を組めないわけではないのだ。
そして「幻影に願いを」でできることは……まさにその、「最後の詰めで願った通りの配色の幻影を降らせる」こと。
つまり俺は年に一度だけ、ほぼ確実に18以上の連鎖を組めるようになったわけだ。
「ありがとう、プヨン。元に戻ってくれ」
使う機会、来なけりゃいいけどな。
俺はそんなことを思いつつ、プヨンに指示を出した。
どうしても18以上の連鎖が必要になる機会なんて、今回以上の窮地以外にはあり得ないだろうしな。
……神5を倒した以上は、いつかはユーエフ王本人も来てしまいそうな気もするが。
せめてその時までは、温存しておきたいものだ。
……そうだ。
ユーエフ王降臨を遅らせるためにも、神5の死体回収をやらないとな。
俺は木っ端微塵になった奴以外の三人の死体を、自分用特殊空間に納めた。
……あ、しまった。
最初に倒した一人の死体、ここじゃ回収できないぞ。
「……あっちだよー!」
しかし、俺がそう焦っていると……プヨンが身体の一部を指の形に変形させ、方角を教えてくれた。
「……何で分かるんだ?」
「じげんのちず、ぱわーあっぷしたんだ! いまなら、とくしゅくーかんにでいりしたばしょまできおくできるよー」
「……へえ、凄いじゃん」
ステータスの文面上は変わらなくても……プヨンの能力も、上がっている部分があったか。
そう感心しつつ、俺は最後の死体も回収した。
そして……宇宙空間でやり残したことがなくなった俺は、地上で待つダイさんの元へ移動することにした。





