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第81話 始末完了

 特殊空間から出てみると……予想に反し、そこには誰もいなかった。

 もう今となっては逆探知とかを警戒する理由も特に無いので、広域探知魔法(後のことを考えて、効果が数分持続するものにした)で神5の反応を探ってみる。

 すると……彼らは、俺たちの惑星に向かって既に移動を開始していることが判明した。


 必死になって俺たちを探しているかと思ったが……そうではなく、惑星の破壊を優先することにしたってところだろうか。

 あるいは、惑星を人質に取って、「隠れてるんなら破壊するぞ」と脅す方針に切り替えたか。


 何にせよ……俺のやるべきことは、当初と何も変わらないな。


 まず俺は助走をつけるために、超光速混沌剣飛行である程度の距離、正反対の方向に移動した。


「プヨン、今から適当にどこかの特殊空間で待機しておいてくれ。そして三十秒毎に、次元の地図で俺がどこかの特殊空間にいるか探してくれ。見つかったら……その段階で、俺がいる特殊空間に合流して欲しい」


 そして、この作戦によって万が一プヨンにダメージが及ぶとマズいので、俺はプヨンには特殊空間に避難しておいてもらうことにした。

 この方法だとどうしても全方位攻撃になってしまうので、「プヨンにだけ余波が及ばないように」とか調節するのは不可能だからな。

 それよりは、どこかの特殊空間で次元妖と戯れていてもらった方が、安全といえよう。


「はーい! まってるねー!」


 プヨンはそう言って、その場から姿を消した。



 ……さて。

 じゃあいよいよ、攻撃本番だな。


 俺は来た道を帰る方向に、光速の千倍まで加速して移動し始めた。

 さきほど持続型の広域探知魔法を発動したお陰で、神5の位置は手に取るように分かる。

 この様子だと……最接近は、ちょうど五秒後だな。


「5……4……3……2……1……相対論棄却機能、オフ! ……オン!」


 俺は秒読みをして、的確な位置で相対論棄却機能をオフにし……そして、すぐさまオンに戻した。


「……ぐっ……」


 重力波の発生地点から猛スピードで遠ざかっている分、神5ほどダメージは受けていないはずだが……それでも、自分の身体にも多少の負担がかかる。

 俺はすぐさま、混沌剣を捻る動作をし……特殊空間に逃げ込んだ。


 次元妖に攻撃されるのが、マッサージのように感じる中……腸内エリクサーの効果で、身体が癒えるのを待つ。

 そうしてしばらく待っていると、プヨンが姿を現した。


「みーつけた! うまくいったー?」


「ああ……多分な」


 などと会話していると、全身に痛みがスッと引いたので……俺は次元妖を倒し、特殊空間の外に出た。

 外に出てみると、もう重力波は遠くに消えたようで、俺は何も感じることはなかった。


「プヨン、幻影色合わせゲーム、頼む」


「はーい!」


 流石の効果持続型の広域探知魔法も、特殊空間で身体を癒しているうちに効果時間が終わってしまったので……俺は再び幻影の連鎖で魔力を生成し、広域探知魔法を発動した。


 すると、神5がいたはずの位置に……以前とは比べ物にならないほど弱弱しい反応が、四人分見つかった。


 おそらく、作戦は成功したのだろう。

 今の状態の四人が相手なら、十分勝てそうだな。


 身体強化はまだ持続しているが、肝心なところで効果が切れるとまずいので、15連鎖消ししてかけ直す。

 それから俺はトドメを刺すべく、神5のいる場所に混沌剣飛行で移動した。


 ◇


 目当ての場所にたどり着いてみると……そこでは見知った顔ぶれの四人が、苦しそうな様子を見せていた。


 腕がもげた者、盛大に吐血している者、そして四肢があらぬ方向を向いている者がそれぞれ一人ずつ。

 一人だけ見た目には無傷の者がいるものの……そいつにしても、息づかいはかなり荒くなっていた。

 もちろん全員、神5のメンバーだ。


「な……ゲボッ……何しやがった!」


 まずは吐血した者が俺を見つけると……若干むせながらも、そう叫んできた。


「……答えてやる義理はない」


 それに対し……俺はただ一言そう言いながら、そいつに向かって斬撃を飛ばした。

 斬撃は、追尾機能が働くまでもなく命中。

<ハバ ユカタはレベルアップしました>

 レベルアップの脳内音声が響いたことで、俺はそいつが確実に絶命したことを知ることとなった。


「ちょっ……アンタ何よそれ! 質問に答えないなんて、ホント礼儀知らずね」


「お前にだけは言われたくないな」


「はぁ〜!? それ誰に向かって言ってると思ってるの!」


 すると今度は、四肢があらぬ方向を向いた者がそう言ったかと思うと……魔法で自身を回転させて遠心力で無理矢理関節の方向を戻し、俺に襲い掛かってきた。

 だが……やはり本調子とはほど遠いからか。

 その剣筋は、今の俺には止まっているが如く見えた。


 今度は剣の直接攻撃で、その首を刎ねる。

<ハバ ユカタはレベルアップしました>

 またもやレベルアップ音が鳴り響き、俺は敵が残り二人になったのを確信した。


「さっきの二人の犠牲は無駄にしねぇ! たっぷり気合いは溜めさせてもらった……カアッ!」


 そして……腕がもげた者はそう言って、口からエネルギー弾を飛ばしてくる。


「――ピッチャー返しだ」


 本人は渾身の一撃を放ったつもりだろうが、今の俺には80?/hのバッティングセンターの球くらいにしか見えないそのエネルギー弾は……剣を野球のバットのように振り抜いて、弾き返すことにした。


「そ、そんなああぁぁぁぁぁ!」


 エネルギー弾は宣言通り、放った奴に直撃し……そのまま本人の身体を木っ端微塵にした。

 流石に同じ強さの奴が三人連続ともなると、今回はレベルアップしなかったが……レベルアップ音という証拠が無くとも、あれじゃあ流石にもう生きていないだろう。


 これであとは残り一人、見た目が無傷だった奴だけだ。

 探知魔法で探った限りでも、一人だけ明らかに弱体化度合いが小さい奴がいたし……間違いなく、コイツがそれだろう。


「……こんな辺鄙な星の調査依頼でこの失態、一体どうユーエフ王様に報告しろと言うのですかー! あんたなんか原子一つ一つまでバラバラにしてやるですー!」


 最後の一人は、そう宣言したかと思うと……虹色に輝く剣をどこからともなく取り出し、斬りかかってきた。

 レベルが上がった今の俺の実力が、コイツに敵うか。

 程なくして、それを試す剣戟が、幕を開けた。



「……な、なぜです!? さっきより剣の腕が上がってるですー……」


 攻防が始まると……相手は驚いたように、そう口にした。

 確かに……今の俺には、相手に防戦一方を強いるくらいの動きができている。

 相手が弱体化した影響と思っていたが……そう言われるからには、レベルアップで戦闘前とは顕著な差が出ているんだろうな。


「レベルが……上がったからな……!」


 俺は一撃一撃の重さを重視して剣を振りつつ、そう言い返した。


「……へぁ!?」


 すると……相手は変な声を上げたかと思うと、全力で俺から距離を取った。


「なんで私たちのうち四人を斬ったくらいで、強さが目に見えて変わるほどレベルアップするんです!? 元がそんな低レベルじゃ、私たちに敵うはずがないのに……」


 そして?然とした様子で、そう叫んできた。


「いったい、今レベルいくつなんです!?」


 ……ははーん、何がしたいか読めたぞ。


「ステータスを確認する隙を突こうったって、そうはさせるか!」


 恐らくこいつ、ガチンコじゃあ勝ち目がないと見て、ステータスウィンドウを開く間に不意打ちする作戦に切り替えたな。

 そう読んだ俺は、質問に馬鹿正直には答えず、斬撃を浴びせにいくことにした。

 ……銀河を統べる軍の精鋭部隊ともあろう者が、そんな小学生みたいな手使うなよな。

 そう思いながら、全力で斬りかかると……相手の対応が一瞬遅れたこともあり、左肩から胸にかけて深い傷を負わせられた。


「あ゛っ……」


 傷が心臓に到達していたのか、相手はとめどなく吐血しだした。

 そして、しばらくして……。


<ハバ ユカタはレベルアップしました>


 ようやく、この戦いに終止符が打たれた。


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書影公開されました!
『スライム召喚無双』第一巻は8/10に、カドカワBOOKSより発売です!
イラストはともぞ様にご担当頂きました!
(↓の書影をタップすると活動報告の口絵紹介にとべます!)

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― 新着の感想 ―
[一言] 残心忘れると痛いんだがなあ、特に殺し合いだと
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