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第25話 凱旋

「あががっ!」

 飛ぶ斬撃を受けた妖大将は、そう叫んで数歩よろめいた。

「に……人間の分際でこの我に傷を負わせおって!」

 妖大将は息を荒らげ、拳を握りしめた。

 斬った箇所を見ると……妖大将の四肢には、大きなミミズ腫れができていた。

 ……マジか。

 今の斬撃で、切断できなかったのか。

 確かに、コイツは今までの高等妖兵とは話が違うようだな。

 そう考えつつ……俺は2ダブ消しによる強化をかけつつ、妖大将を鑑定してみた。

 

 【妖大将 残り体力99.7%】

 全ての次元妖の頂点に立つ存在。

 ごく稀に、自身の特殊空間を出て人間界に降り立つことがある。

 その戦闘能力は、通常の流星魔獣にも匹敵する。

 ※攻撃履歴 神剣DHMOによる斬撃(1回当たり0.1%のダメージ) ◼️

 

 通常の流星魔獣に匹敵、か。

 二千年モノかつ装甲進化型をレベルアップ前に倒した身としては、大したことのない奴にも思えるが……まあ確かに、それならさっきの斬撃があまり効かなかったのも頷けるな。

 というか……攻撃履歴、便利だな。

 今の調子だと、一撃で0.1%のダメージを与えられるのか。

 これが分かってれば、ロイゼンにとどめを刺させるための敵の体力調整もやりやすいな。

 というわけで、俺はとりあえず、妖大将に先ほどと同じ斬撃を九百九十六回浴びせることにした。

「あばばばばばばばばばば」

 連続で斬撃を受け、体勢を立て直すことも叶わなくなった妖大将。

 その様子からは、あとは楽勝なように思えたが……目に見える状況とは裏腹に、鑑定は俺たちに警告を促すかのように、その表示内容を変えていた。

 

 【妖大将 残り体力49.4%】

 全ての次元妖の頂点に立つ存在。

 ごく稀に、自身の特殊空間を出て人間界に降り立つことがある。

 その戦闘能力は、通常の流星魔獣にも匹敵する。

 ※必殺奥義「真・破壊撃」構築中(発動まで推定三十秒)

 ※攻撃履歴 神剣DHMOによる斬撃(1回あたり0.1%のダメージ) ◼️

 

 ……マジか。

 これ、絶対防がないとマズいやつだよな。

「プヨン、鑑定はもう大丈夫だ。『幻影色合わせゲーム』を」

「おっけーい!」

 俺は斬撃の手は緩めないまま……妖大将の攻撃を封印するために、連鎖を組み始めた。

 最近習得したハードドロップも駆使し、速やかに連鎖を組み上げていく。

「そろそろ撃つか」

 11連鎖分ほど積み上げたところで……俺は連鎖を発火することにした。

 妖大将の強さが俺が対峙した流星魔獣の四分の一であること、俺自身流星魔獣戦でレベルアップしていることを加味すれば、これでも十分な効力の封印魔法になるだろうしな。

 どちらかといえば、敵の技発動までに連鎖消しが完了しない方が問題だ。

 推定残り五秒の時点で、連鎖が完了したので……俺は封印魔法を放った。

 五秒後。

「……な、なぜだ! なぜ技が発動しない!」

 とっておきの技を放てなかったことで、妖大将は目に見えて焦りだした。

 ……今度こそ、これで安泰っぽいな。

 そう思い、俺は今度はロイゼンにバフをかけるためのスライムを積み上げ始めた。

 それと並行して、延べ九百九十九回目の斬撃を浴びせ終わると。

「……」

 妖大将は倒れ伏し、グッタリとしたまま動かなくなった。

「ロイゼン、あとは頼む」

「はい」

 今度は、俺のバフがかかったロイゼンが妖大将に迫り……その首を、炎を纏う斬撃で切り落とした。

 妖大将は息絶え、高等妖兵を討伐した時よりも一回り大きい水晶玉に変化した。

 と同時に……特殊空間は崩れ去り、バヨエインの街よりちょっと文明化が進んだような街並みが、目に入った。

 

「ユカタさん!」

 直後……ロイゼンは、信じられないものを見たかのような表情で俺に駆け寄って来た。

「一体、何なんですかこれは! 俺のレベル、一気に120くらい上がったんですけど!」

 ……なるほど、とどめを刺したロイゼンにも、経験値が入ってたのか。

 それは良いことだな。

 思わぬ収穫に満足しつつ、俺は表彰の場へと向かうことにした。

 

 ◇

 

 それから数時間後のこと。

「それでは……流星魔獣討伐および魔物の大量発生の処理の功績を称え、ハバ=ユカタ殿に男爵の地位と金貨一万枚、及び国の宝物庫から好きな宝物を一つ持ち帰る権限を呈する」

 王宮の目の前の広場にて。

 大衆の前で、国王がそう宣言した。

 そしてそれに呼応し、民衆はドッと沸き上がった。

 対して、俺はといえば。

 あまりの事態に、緊張で頭が回らなくなっていた。

 頭では、こうなる事は分かっていたんだがな。

 いきなり貴族の地位だの国の宝物をもらえるだの言われ、全然心が追いつかないのだ。

「それではユカタ殿。国を救った英雄として、一言お願いできますかな?」

 国王はといえば、そんな俺に構わず無茶な要求をしてくる。

 ……こうなったら、破れかぶれだ。

 俺は、とりあえず何でもいいから、声を発してみようと決意した。

「えー、そのー……流星魔獣の討伐は、偶然から必然への昇華となる感じっしたね。あと、その後の魔物の討伐は……なんか焼却的だったなあ……はい」

 自分でも、何を言っているのかよく分からない。

 だが、俺の発言で民衆の歓声が今まで以上に大きくなったのを聞き……俺は、どうにか事なきを得たんじゃないかって気分になった。

 不意に……民衆の中に、俺が知っている男が立っているのが目についた。

 その男──青髪のモトは、俺に向かって親指を突き立て、ウィンクをした。


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