第24話 王都の表彰式への旅路
「へえ、我が空間に人間が……。哀れですね、そのまま飢え死ぬまでそうやっていなさい」
神剣を使い、特殊空間に入ると……そこには、そんな風に貫禄のある喋り方をする次元妖が佇んでいた。
そして……その近くには、次元妖に向かって神剣を構えているロイゼンがいた。
……どうしてまた、特殊空間でロイゼンと出会うことになったのか。
それは、少し前に遡ることとなる。
◇
流星魔獣の討伐から約一週間後。
ギルドから、俺の元に「一か月後、王都にて正式に表彰を行う」という通達が届いた。
それからの一か月、俺は何をするでもなくバヨエインの街でのんびり過ごしていたのだが……表彰の日の前日になって、俺はロイゼンに通信魔法で連絡を取ってみた。
その結果……ロイゼンは、既に王都に到着していたということが分かった。
そこで俺は一つ、面白いことを思いついた。
それは、「ロイゼンと同じ特殊空間に入り、次元妖へのとどめをロイゼンに刺させたら、俺は特殊空間を介して王都にワープできるのではないか」という仮説だ。
初めてロイゼンに会った時……次元妖討伐後、ロイゼンも俺の宿に来たことから「次元妖を二人以上で倒した場合は、トドメを刺した側がいた人間界の居場所にまとめて帰還する」ということが判明したからな。
その逆バージョンで、今度は俺が王都に転移するのも可能なんじゃないか。
そう考えたのだ。
もちろん、他人と同じ特殊空間に入ることは容易ではない。
次元妖の数だけ特殊空間が存在する以上、二人以上が同時に同一の特殊空間に入る確率は天文学的なまでに低いからだ。
だが……俺には、それを可能にする手段があった。
それは、プヨンが流星魔獣を倒した際に手にした「次元の地図」というスキルだ。
名前からして、特殊空間のナビのような役割であろうこのスキル。
これを発動すれば……特殊空間で戦闘中のロイゼンを探し出し、意図的に共闘できるのではないかと考えたのだ。
結果……スキル「次元の地図」は、確かにそんなことを可能にするものだった。
ロイゼンに特殊空間に入ってもらった後、プヨンに「次元の地図」を使うよう頼むと……「あのときのおにーさんだね。みつけたよー!」と、一瞬でその特殊空間を特定してもらえたのだ。
それで俺は、その空間に入り、ロイゼンとともに次元妖を倒すことにしたのである。
◇
特殊空間の中では……ロイゼンは、なぜか苦しそうな表情をしていた。
「どうした? なんか変な呪いでもかけられたか?」
俺はロイゼンに歩み寄りつつ、そう聞いてみた。
「いえ……。この特殊空間……入った瞬間から、全然身動きが取れないんですよ……!」
ロイゼンは硬直した姿勢のまま、そう返した。
……そう、なのか?
俺、別にこの空間で動きにくいとか感じないんだけどな。
「プヨンも、なんか動きにくさとか感じるか?」
「ぜーんぜん」
プヨンも同様に、別にこの空間の力とやらの影響は受けてないらしく、俺の肩の上でポンポンと跳ねてみせた。
一体、どういうことだろうか。
ロイゼンにとどめを刺してもらう予定な以上、動けないで入られたら困るんだよな。
とりあえず……身体強化でもかけてやるとするか。
そうすれば、無理矢理にでも体を動かせるようになるかもしれないからな。
などと考えつつ……俺は連鎖を積み上げ始めた。
そうしていると……次元妖が、俺に話しかけてきた。
「な……貴様、人間だろう! それにスライムまで! なぜ我が空間で、そうも容易く身体を動かせるのだ!」
振り向くと……その次元妖は、どこか焦ったような表情をしていた。
そういえば、俺がこの空間に来た時は、ロイゼンには敬語だったよな。
俺が動けるのって、敬語を忘れるほど動揺することなのだろうか。
「高等妖兵っすか?」
とりあえず……相手が喋る次元妖であることから、俺はそう予想して聞いてみた。
「こ、高等妖兵……? ふざけるな、この妖大将様があんな有象無象と同じに見えると申すか!」
だが……この次元妖、何故か俺の質問で怒りを沸騰させてしまった。
妖大将……高等妖兵より格上の次元妖かなんかなのだろうか。
確かによく見ると、爪を纏う靄は黒ではなく金になっているし、着ている服も宝石だらけで段違いに煌びやかだ。
更にその宝石一つ一つからは、ドクドクと魔力が溢れていて……特殊空間全体に圧をかけているような感じがする。
ロイゼンを硬直させてるあたり、コイツが高騰妖兵より格上な可能性は高そうだな。
にしても、だからって間違われたくらいでキレなくてもいいじゃんか。
などと考えていると……11連鎖を発火し終えたので、俺はその魔力でロイゼンに身体強化をかけてやった。
「動けるか?」
「……はい! さっきまでの身体の重さが嘘のようです!」
ロイゼンは、嬉しそうに手足を動かしてみせた。
「でさ……妖大将って、何者なん? ロイゼン知ってる?」
「妖大将は、全ての次元妖の頂点に立つと言われている存在ですよ。その空間に入った人間は、空間の力に捕らわれて身動きもできないまま野垂れ死ぬ……と言われています。流石にユカタさんは別格でしたが、その噂は本当でしたね」
「へえー」
結構、大した奴だったのか。
そう思い、改めて妖大将の方を振り返ると……妖大将は、全身をワナワナと震わせながら、こちらを睨みつけていた。
「貴様ら……決して生かしては返さんぞ!」
そう言って、妖大将は右手に魔力を集めだした。
どうするかな。
とどめをロイゼンに刺させないといけない以上、いつものように一刀両断するわけにはいかないし……とりあえず、四肢切断でもして様子を見るか。
俺は神剣を軽く降って、手足の付け根を狙って斬撃を飛ばしてみた。





