第16話 なんか招集がかかってたみたいだった
ギルドに戻ると、俺は早速支部長の部屋へと呼ばれることとなった。
「ユカタ、殲滅は諦めてきたのか? 随分と帰りが早かったが」
支部長は心配そうに聞いてくる。
「いいえ、きっちり殲滅してきたっす」
「ちゃんとぜんぶやっつけてきたよー!」
俺が答えると、プヨンも続いて意気揚々とそう言った。
「全部とな……。ほぼ往復しかしてないような時間じゃった気がするが……」
「まあ、そんなもんっしょう。殲滅には、約二十秒しかかからなかったみたいですし」
「……に、二十秒? 魔物の群れを相手に、か?」
「ええ。ちゃんと集中すれば、二十秒でほとんどの魔物を斬り裂くことができました」
「斬り……大魔法で一網打尽にしたにしても信じられないペースじゃというのに、まさか剣で処理しておったのか……」
支部長がため息をついたタイミングで、ヤメミアさんがこう口を挟んできた。
「しかし何故、魔法を使わなかった? 剣で二十秒というのも訳の分からない話だが、それでも剣より魔法の方が遅いとも思えないんだが……」
「広範囲に魔物がいるところで魔法を使ったら、とんでもない環境破壊になるじゃないっすか」
「スタンピード発生時に、気にするのがそこか。やはり、Sランクというのは規格外なのだな……」
「そういう問題ではない気がするんじゃがのう、ヤメミア……」
……なぜだろう。
朗報を伝えたというのに、二人から言葉が出なくなってしまった。
沈黙が流れる。
それを破ったのは、またしてもヤメミアさんだった。
「そういえば、ロイゼンはどうしたんだ? 見当たらないんだが」
「ロイゼンなら、『群れの規模が異常で心配だから、一旦自分の街に帰る』とか言ってたぞ。……そうだ。今回報酬なんだが、ロイゼンの分をギルドで預かっといてもらえないか?」
俺はそうギルドに提案した。
ロイゼンからは、「一旦俺が受け取って、後で山分けすればいい」と言われたが……正直、この方式の方が後腐れないと思うからな。
だが、俺の提案は二人にスルーされてしまった。
「群れの規模を警戒して、自分の街に帰ったじゃと……? あのロイゼンが、そう判断したというのか」
「確かに私も、全体を探知しきれない大規模な群れだとは思ったが……まさか、スタンピード同時多発クラスの群れだったというのか?」
二人の意識は、完全に群れの規模の推定へと傾いてしまっていたのだ。
知らんがな。
そもそも「スタンピード同時多発」なんて、俺今初めて聞いたぞ。
「『スタンピード同時多発』って何すか?」
「全ての街が廃村の危機に陥る、全方位における魔物大発生のことじゃ。約百年に一度しか起きない、壊滅級の天災なんじゃよ……」
……それはエゲツないな。
ってか、天災の滴から一か月でこれって、泣きっ面に蜂もいいとこすぎないか?
そんなことを考えていると、支部長から新たな頼みをされた。
「ユカタ。他の街からの状況報告次第では、救援に向かって欲しいと思うのじゃが……構わぬか?」
「……救援っすか?」
「そうじゃ。幸いにもここバヨエインは、ユカタの際限なき力のおかげで何とか難を逃れられた。じゃが、もしこれが本当にスタンピード同時多発じゃったとしたら、他の街は重大な損害を被るはずなんじゃ……。各地のギルドで協力して、お主への報酬はかき集める。じゃから……」
「大丈夫っすよ。今日と同じような働きでいいなら、軽いもんっす」
支部長の声があまりにも必死なことになっていたので、思わずそうフォローした。
まあ本当に大したことなかったからな。
返事しちゃったけど、不都合はないだろう。
今日の話はここまでって事で、俺はギルドから報酬だけ受け取り、宿へと戻った。
◇
状況は、思ったよりも早く動いた。
「あのときのおにーさん、もどってきたよー」
次の日の朝、プヨンにそう起こされたので窓を開けて外を見てみると……ロイゼンが宿まで来ていたのだ。
「……あれ? もう帰ってきたのか。アチャアの街は、無事だったってことか?」
ロイゼンが報酬の山分けに戻ってきたとばかり思い込んだ俺は、そんな質問をした。
だが……状況は、俺の予測とは正反対のようだった。
「いいえ。寧ろ、事態はかなり深刻です。……なんせ、連絡可能なSランク全員に『神剣ハウス』への招集がかかりましたから」
「『神剣ハウス』? 何だ、それは?」
「やはり、ご存知ありませんでしたか……。神剣ハウスは、大陸全土の一大事に対応するため、Sランク冒険者を集めて行われる対策会議です。既に、数人のSランク冒険者が集まろうとしていると聞いています。急ぎましょう」
「ちょっと待ってそれ支部長に一言──」
「もう伝えてきました。そこは安心してください」
そう言って、ロイゼンは神剣での飛行を始めた。
……仕事が早いな、おい。
そう思いつつも、俺はどこにあるのかも分からない場所に向かうため、ロイゼンについていくことにした。





