第14話 頭悪い方法を思いついた
神剣で飛行しつつ、俺はロイゼンに聞いてみた。
「あんな返事しちゃったけどさ……殲滅って、できるもんなのか?」
「そうですね……。殆どの場合、スタンピードは弱い魔物たちが強い魔物の突然発生から逃げるために起こる現象です。数が多ければ時間はかかるでしょうが……少なくとも、戦闘力で遅れを取る事はないかと」
「なるほどな……でも、もう結構時間が無いみたいな言い方だったぞ? 間に合うのか?」
「規模によっては、厳しいでしょうね。でも、ユカタさんはこう言って励ましてくれたじゃないですか。『合理性だけを考えて、解決不可能な問題からは簡単に手を引く奴はたくさんいる。そんな中だからこそ、一人くらい、たとえ愚かな判断に思えることでもやってみて、奇跡に賭ける人がいていいんじゃないか』って」
「……言ったな」
……ロイゼンの行動原理には、それも含まれてるのか。
まあそれはいい。初めから諦めるのではなく、とりあえず手を尽くすって部分には俺も賛成だからな。
いざとなったら、特殊空間に逃げ込んで、次元妖には破れない結界を張って休憩すればいい。
まあ次元妖より強い敵が出てくる事は、想定しなくてもいい気がするが。
だが、問題は別のところにある。
もし、ロイゼンが俺のユニークスキルをあてにして作戦を立てていたとしたら……それはちょっとまずい。
「ロイゼン、一つだけ聞いておきたいことがある」
「何でしょうか?」
「お前、俺の魔法を頼りにして、この問題を解決しようとしてるわけじゃあないよな?」
そう尋ねると、ロイゼンは少しの間を空けてからこう返してきた。
「確かに、俺は決して他力本願な考えの元で依頼を承諾したわけではありません。ですが……ユカタさんの魔法が、この問題の解決の大きな力となる事は変わりないはずだと思います」
「そこなんだがな……。確かに、俺が一発魔法をブチ込めば、よほどの事がない限り魔物を一網打尽にできるとは思う。けどな……もしもその余波で、魔物による蹂躙を大幅に越える被害が周囲に出てしまうとしたら、それは本末転倒だと思わないか?」
「言われてみれば……!」
ロイゼン、やっぱりそこは考慮してなかったみたいだな。
議論の焦点が定まったところで、俺たちは被害を抑えつつユニークスキルを活かす方法について考え始めた。
「ユカタさんって、天災の滴を追い返した奴以外にはどんな魔法を使えるんですか?」
「そうだな……海をある程度蒸発させる炎魔法とか、リヴァイアサンを一撃で仕留める闇雷撃魔法とか……あとは、お前と手合わせした際の衝撃波の魔法とかだな」
「なるほ……」
そう言って考え込もうとしたロイゼンは、一瞬ののち目を丸くした。
「……リヴァイアサンって言いましたか今? ってことは、まさか……その剣、神剣DHMOですか?」
「……おいロイゼン、落ちてってるぞ」
驚きのあまり高度が落ちてることに気づいてないロイゼンに、俺は注意を促した。
「……はっ、すいません。剣技補助付きですから、それなりに高位の神剣だってことは知っていましたが……それ、これまでこの世界に存在してきたいかなる神剣よりも格上ですよ?」
「ロイゼン、もしかしてお前神剣に詳しいタイプの人間か?」
「いえ。神剣DHMOは、いろんな伝承があって有名だってだけですね。例えば……一振りするだけで山が吹き飛ぶだとか、触れただけで神剣飛行が身につくとか。あと、使用者の基礎身体能力に合わせて際限なく剣技補助が高度になるとも聞いたことがありますね」
「……それだあっ!」
ロイゼンの話を聞き、俺は思わず大声を出してしまった。
最初の二つの情報は、鑑定で知っていたことだ。
だが、最後の一つは聞いたことがない。
「使用者の基礎身体能力に合わせて際限なく剣技補助が高度になる」だと?
それが本当なら……「13連鎖の魔力で身体能力を強化し、それに合わせた剣技補助で高速で一体一体魔物を斬っていく」とかいう頭の悪そうな作戦が実行できるじゃないか。
「ロイゼン、一つ確認したいんだが……その『剣技補助が際限なく高度になる』ってのは、魔法で身体能力を強化した分も含まれるのか?」
「……それはユカタさんが一番良く知っているのでは? いつも使っているのですから」
「いや、今まで身体能力の上昇のために魔法を使ったことはない。ってか、そんな事ができるって発想に今まで至らなかった」
「……え? じゃあ……あの模擬戦、素の身体能力であの強さだったんですか?」
再び落ちていくロイゼン。
今度はどっちかって言うと、神剣が手から滑り落ちてしまったせいで、「神剣飛行」の発動が切れてしまっているな。
俺は急降下してロイゼンの神剣を拾い、渡した。
……うん。
スタンピード相手にわざわざ一体一体魔物を斬るってのは何回考えても頭悪いやり方だが、「被害を減らす」って観点からいけば一番理に適っている。
それで戦ってみるとしよう。





